●大人気液プロとの相性は?

ソニー「VPL-VW11HT」(発売・7月1日、オープン価格)。ソニー製高解像度ワイドLCDパネル(1366×768ドット)や独自の高画質化技術“DRC-MF”(デジタル・リアリティー・クリエーション‐マルチファンクション)などの高画質化回路を搭載した、ホームシアターファン期待の新製品だ(詳細はこちら

「シアターグレイ」が液晶方式を想定して開発されたのは確かであり、そのダイナミックな表現力はすでに知られている。私もVPL-VW10HTで何度か視聴したことがあるが、その度に感心することしきりであった。「並の三管プロジェクターをマット系で見るよりも切れのいい映像になる」、というのは知る人ぞ知るだ。名脇役なのである。ところで今回は、VPL-VW10HTの画質を向上させたVPL-VW11HTを試す機会があった。

「11HT」は「10HT」とそっくりの外観であり、その機能もほぼ同一だ。主な変更点は黒浮き対策のための光学系の見直しだ。液晶パネルは画素構成が1366×768のワイドXGAの三板式。これが偏光板ともども最新のものになって、液晶シャッターの遮光性能がより正確になるように調整されているという。

それと光源のランプも変更されている。同じく200Wの高圧水銀ランプの系統だが、より光出力が強化されたものだという。そのゆとりは、自然な白バランスの確保のために使っているのが特徴だ。分光特性を色再現性優先として、「緑のベール」がかぶる傾向を防いでいるわけだ。

●黒がより黒らしくなった

VPL-VW11HTを使って、真剣に画質をチェックする筆者。シアターグレイとの組み合わせでは、「三管に匹敵する画を堪能できる」という最大級の賛辞が飛び出した VPL-VW11HTの端子接続部。S端子とRCA色差端子で11HTと接続し、画質を評価した

実際にマット系のスクリーンに投映してみると、「11HT」はたしかに黒が引き締まっていて、白バランスはより自然だ。ならば「シアターグレイ」のような黒を引き締めるスクリーンは不要なのだろうか? 実際に試してみることにした。

「11HT」はまだ試作段階のものだったが、すでに液晶の歴史を塗り替えるほどの画質を見せている。ゲイン1.4の「マリブ」で調整した状態で「シアターグレイ」にしてみると、はたして黒が沈み過ぎに見えることがある。「グラディエーター」など、C-27の少年の黒っぽいシャツがなかなか濃紺だということが分かりにくいのだ。

しかし微調整していくと、ハイライトの鋭さを維持したまま最暗部の情報がどんどん見えてきて、本格的なフィルム映像の世界になるのである。「マリブ」だと、まだ黒が浮いて見えるし、調整で黒を絞ると黒つぶれになりやすいのだ。「シアターグレイ」では、そういう微妙な情報の再現性が高まり、黒の引き締めにより人物が彫像のように立体的に見えてくるのだし、画面全体の奥行き感がぐっと明快になるのが快感だ。というわけで、「11HT」でも「シアターグレイ」の威力は明らかだ。