そして2000年にラックス(株)は長く使用してきたブランド名と同じ「ラックスマン(株)」に社名を変更した。
21世紀入に入ったラックスマン500シリーズの幕開けは、2001年の「L-505f」「L-507f」「L-509f」であった。これらの製品では、負帰還方式に大きな変化が起こった。「ODNF(オンリー・ディストーション・ネガティブ・フィードバック)」がそれだ。
ODNFは、入力と出力の波形の差を検出して“歪成分”だけをフィードバックするオリジナルの負帰還技術。ラックスマンの現在の基幹技術のひとつで年を追う度に進化し続け、最新型のL-507uではVer.3.0になっている。
このODNFの採用と共に、電源トランス+整流回路の余裕度をさらに高めたのがこれら「fシリーズ」である。翌年にはL-509fの特別仕様モデル「L509fSE」を発売したが、これには驚かされた。コストを度外視して内部構造はプリアンプ部とパワーアンプ部を分離。電源トランスは500シリーズ最大の700VA。その上で音量調整器に超高精度なアルティメート可変抵抗器を採用。結果的に重量もシリーズ最高の28.5kgとなった。
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L-509fSE |
筐体の仕上げは現在と同じ“ブラスターホワイト”。出力メーターの照明も従来はオレンジ色だったが初めての“ブルー”を採用。以降、AB級動作方式はブルー、純A級動作方式はオレンジ色の照明に住み分けていることは周知の通りである。
なお、リモコンも敢えて付属させなかった。アルティメート音量調整器のノブの極めてスムーズな回転感触を味わおうという意図があり、購入者もそれを理解。“リモコンが付属しない”という不満は皆無であったそうだ。このL-509fSEは現在の「L-509u」に受け継がれているが、同様のアルティメート可変抵抗器を使用しているためにリモコンの付属はない。
この3年後にラックスマンは創業80周年を迎え、L-580以来11年ぶりの復活となる純A級動作方式2機種を栄光の500シリーズに再投入した。「L-550A」と「L-590A」がそれらだ。
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L-550A |
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L-590A |
当然、出力量は8Ω=20W/chと30W/chと小粒。これまで蓄積されてきたノウハウを注入しつつ、L-550Aでは内部配線材にOFCを、L-590AではOFC内部配線材は勿論のこと「ピールコート金メッキパターン基板」を採用。
放熱器も微振動対策を考慮し強固で重量級型を採用。トータルで従来以上の細部に渡る微細な高音質化が実行され、改めて完成領域に達していた純A級動作方式に対する注目を集めることになった。これらは2007年に「L-550AII」とパネル下部にシーリングドアをフィーチャーした「L-590AII」にマイナーチェンジ。さらに2010年に「L-590AII」が「L-590AX」に、そして2011年2月には「L-550AII」が「L-550AX」へとさらに進化した。
製品名の末尾に“X”が付された両機種は、同社の最上級プリアンプにも採用されている高純度電子制御アッテネーター「LEUCA」を搭載。また、前述の高音質帰還回路「ODFN」の最新バージョンをA級化した「ODNF3.0A」の採用やスピーカーの負荷インピーダンス変動への対応力を強化。
さらに筐体の横幅を従来の467mmから同社の新標準サイズの440mmに変更。パーツのレイアウトや配線の一層の短縮化も実現している。
機能面でも、従来は分離されていたプリアンプ部とパワーアンプ部を内部結合。リモコンに配置された「SEPARATEスイッチ」で電気的に切り離せるようにすることで、プリアンプ部とパワーアンプ部を独立させて使えるようにされており、様々な使い方への配慮も忘れていない。
500シリーズは現在、AB級が3機種。純A級動作方式が2機種、合計5機種に整理。いずれも高級型で精鋭の製品ばかりだが、動作方式や価格面で選択肢が広くなっている。なお、AB級アンプは「L-509u」と「L-507u」があり、3W/ch(8Ω)までは純A級動作。小音量再生時ではほとんどこの領域で作動する。
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L-507u |
こうしてラックスマンの500シリーズのプリメインアンプの流れを見ると、真空管方式のSQ38シリーズも同様だが、DNAは脈々と受け継がれ、40数年にわたってAB級/純A級動作方式を取り混ぜて40機種を超える製品を送り出している。とてつもない歴史に驚愕するばかりである。
そして今回、このシリーズに新たな製品が登場した。AB級の最新鋭機「L-505uX」だ。1996年に登場した「L-505s」をベースにしたモデルで、505シリーズはその後15年の間に3度のモデルチェンジを経てきたが、今回初めてフルモデルチェンジされた。
ラックスマンにとってエントリーモデルとしての位置付けにあるが、同社のセパレートアンプに搭載されてきた電子制御アッテネーターLEUCAを搭載。ODNFもバージョン2.3に進化している。さらに、筐体サイズと構造も変更。その他製品の詳細な内容については次ページ以降に詳しいと思うが、先に新世代化された純A級動作方式の製品の内容がふんだんに盛り込まれている。
回路やデザインは時代ごとにオリジナリティーを常に訴求。共有するコンセプトは、AB級ではハイパワー。純A級動作方式に於いては理論通りのクオリティーの飽くなき追求がなされている。また、電源トランスも一貫してEIコア型に徹していることも見逃せない事実である。そして多機能。同じシリーズでこれだけの長期間に亘って多品種を展開しているのは勿論、世界広といえどもラックスマンだけである。そして音は常に曖昧さを排除した方向性にある。今後、500シリーズはどのような展開を見せるのだろうか? |