試聴はラックスマンの試聴室で行った。ディスクプレイヤーは同社の「D-05」を、スピーカーはB&Wの「802D」を用いた。一聴、ラックスマンのプリメインアンプとしては最も解像度の高い音ではないか、と思った。これはセパレートアンプのトップモデル、C-1000/B-1000の系譜に属するものだ。
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試聴には「D-05」(左)とB&Wの「802D」(右)を使用した |
スピーカーのドライブ能力は、このクラスとしては抜群で、「802D」をほぼパーフェクトにグリップしているといっても過言ではない。
ジャズはピアノトリオからビッグバンドまで精密かつダイナミックにキリッと描く。とくにバスドラムやベースの解像度が高く、まるで本物の楽器がそこにあるかのような表現をしてくれる。
ジャズボーカルはキュッと引き締まった理知的な音像が印象的だ。酒にたとえれば辛口の白ワインかシャンパンのよう。ロック系の音楽への対応力もすばらしく、現代最高クラスのスピード感を発揮する。
クラシックは弦楽四重奏からオーケストラまで、個々の楽器の音像をきっちりと分解して聴かせる。現実のコンサートではありえない現象だが、これは現代のハイエンドオーディオならではの表現といえるだろう。また空気感もスーパーリアリズム的で、演奏が始まる一瞬前に、ホールの暗騒音がフワリと試聴室を満たしたのには驚いた。
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メーカーのスタッフに説明を受けながら試聴を進める石原氏 |
ラックスマンのプリメインアンプは、純A級動作のモデルも人気が高いが、そちらの系列は、伝統的な高能率スピーカーで音楽を雰囲気良く楽しみたいトラディショナルな愛好家のためのものではないだろうか。それに対して「L-507u」は音楽とオーディオに鋭く切り込んでゆく新しいタイプの愛好家に向いていると筆者は考える。
実をいうと、ここだけの話、同社の純A級動作のアンプは演奏に寛容な部分があって、些細な演奏ミスや、古色蒼然とした解釈を上手に聴かせてしまうことがままある。しかし、「L-507u」にはそういう曖昧さはない。つまり、いわゆる巨匠の演奏でもヘタはヘタに、デビューしたての新人でも巧い演奏は巧く表現されるのだ。したがって音楽的保守主義者には向かないが、良い演奏を積極的に発掘したいリスナーには強くお勧めしたい。
オーディオ的には、なんといってもスピーカーのドライブ能力の高さが光る。このアンプを入手したら、最初はミニサイズのブックシェルフ型スピーカーとの組み合わせでもいいが、最終的にはヨーロッパ製のハイエンドクラスのトールボーイ型までグレードアップしたい。 |