薄型テレビシェアNo.1を独走するシャープのAQUOSは、2010年にブランド誕生10周年を迎える。このタイミングで次世代AQUOSとして新たに「LED AQUOS」を発表した。

一般的にLEDは、水銀などの有害物質を含まず、低発熱、低消費電力な次世代の照明として期待されており、液晶テレビもまた、ハイエンド製品を中心に、蛍光管であるCCFLからLEDへの移行が始まっている。だがテレビにおいては、LEDバックライトを搭載したテレビはあくまで「液晶テレビ」というカテゴリーの中の、一つの形態として捉える見方が一般的だろう。

 

では今回、シャープがあえて「LED AQUOS」という名称を打ち出したのはなぜか。そこには「液晶テレビ」を超越し、「LEDテレビ」を名乗るにふさわしい理由と覚悟がある。2009年11月から発売されるLED AQUOS「LXシリーズ」を、次のステージに向けた布石として大いに注目したい。

“LED AQUOS”LX1ライン

いまから約10年前、テレビと言えばブラウン管が当たり前の時代に、シャープはブラウン管テレビの生産完全終了と、液晶テレビへのシフトを発表した。当時は多くの人がその実現性を疑ったものだし、反論さえあったほどだが、今の液晶テレビの隆盛ぶりをみれば、その先見の明と技術革新による実行力が確かなものだったことに気づかされる。

ブラウン管から始まったテレビの歴史は、液晶の登場で大きく変わった。薄型化や大画面化はもちろん、消費電力の大幅な削減など、ブラウン管の延長では超えられない限界を、液晶という新しい表示デバイスを用いる事で突破したのだ。

そして今、液晶テレビAQUOSはLED AQUOSへ進化する。シャープはテレビのバックライトを蛍光管からLEDにシフトさせることを明言した。テレビを液晶に置き換えた実績を持つシャープだけに、その意図や意義を知る事は、テレビの未来を推し量る上で重要と言えるだろう。

 

LED AQUOS「LXシリーズ」では、光源のLED化のみでなく、技術者が「30年来の夢がかなった」と言う「UV2A」と呼ぶ新しい技術に基づく液晶パネルが採用されている。UV2Aは、光の透過率を高めることで画面の明るさ向上と低消費電力化を果たし、また光漏れの低減によって、液晶テレビが苦手としてきた黒の沈みを飛躍的に向上させ、映像品位を高めるシャープ独自の技術だ。新時代のLEDテレビにふさわしい、次世代液晶パネルの登場と言えよう。

 

LXシリーズは、シャープが長年培ってきたLED技術と液晶パネル技術の両輪を組み合わせることで、画質の向上だけでなく、省エネ性能も一気に前進させた。具体的には、前衛となるGXシリーズと比較して約30%もの消費電力削減を実現しており、基礎技術開発、主要部品の製造、商品としてのテレビ生産まで一貫して行う数少ないメーカーの強みを存分に活かしている。

LXシリーズは画質を重視した従来のGシリーズ、Rシリーズの後継モデルとして位置づけられ、60V型、52V型、46V型、40V型がラインナップされる。共通の特長として目を引くのが「好画質センサー」。詳細は後述するが、シリーズに共通する素直で高次元な画質の力を、どのような環境でも最大限に引き出し、積極的に楽しむための機能で、先進的かつユニーク、そして誰にでも扱えるフレンドリーなものだ。

 
“LED AQUOS”LXシリーズは、これまでのG/Rシリーズの後継機種として位置づけられる   本体前面下部、SHARPロゴの下に「好画質センサー」を装備する

音質面では、「ARSS」と呼ぶ6スピーカーシステムを新たに搭載。既存の薄型テレビでは難しかった、映像と音声の融合に挑んでおり、豊かな低音を生み出す「Duo Bass」(40V型を除く)との相乗効果により、これまでの薄型テレビの基準を超える臨場感の獲得をねらっている。

 

そして何より、これだけ先進的な性能を備えつつ、一部のマニアだけでなく、一般的なユーザーでも手が届く価格帯に設定されているのもLXシリーズの特長と言える。総合的な商品価値を重視しているのは、HDMIによる機器連携で使い勝手をさらに向上させる「AQUOSファミリンクII」や、高速で実用的なネット機能の充実ぶりを見ても明らかだ。

派手な機能やギミックに振り回されず、テレビの基本である画質、省エネ、使い勝手、価格設定に注力したLXシリーズのコンセプトは「次世代」の標準と呼ぶにふさわしい。