ここ最近のテレビの多目的化は凄い。そもそもテレビ番組も地上デジタルからBS、CS等があり、DVDやBDによる映像鑑賞は当然のこと、さらにパソコンのディスプレイとして使う人もいる。インターネットに接続して双方向番組に参加したり、様々な情報を表示したりするなど、テレビは単なるテレビ番組を映すものではなくなった。

そうしたテレビが次に表現するデバイスとして注目されているのが写真だ。フィルム時代は、写真はプリントやスライドプロジェクターで鑑賞していた。だがデジタルになって、鑑賞の仕方もプリントだけでなく、パソコンのディスプレイやデジタルフォトフレームなど多様化した。その中でテレビは、最も手軽に大画面で写真が鑑賞できる。例えば40インチの画面はテレビではもう当たり前。ところが写真のプリントは大きすぎて、とても手軽に鑑賞というわけにはいかない。テレビは新たな写真の鑑賞方法を提供してくれるのだ。

だがテレビは、本来動画を映すもの。写真の表示まで考慮したテレビはごくわずかだ。しかも、決して写真家が満足できるレベルではなかった。だがビクターから発売された“XIVIEW(サイビュー)”「LT-42WX70」は、動画でも写真でも優れた画質が得られるように開発されたテレビだ。表示性能にこだわり、テレビチューナーは搭載していない。そのためテレビというよりディスプレイモニターに性格が近い。

写真の表示で重要なのが、色再現と階調再現だ。一般的なテレビでは動画映像を目的としていたため、写真を表示させると明部から暗部までの階調に不自然さを感じることが多かった。また色再現にしても、見た目の印象と同じ表示をしてほしいと思わせることが多かった。どうしても写真表示に特化したパソコン用ディスプレイと同じ性能を求めてしまう。しかしテレビなので、動画の表示性能も重要だ。いくら写真の表示に優れていても、動画が悪ければ台無し。動きのある画面の滑らかな表示や、コントラスト、自然な階調再現や色再現、そしてS/Nなど、動画は動画でこだわりたい。

 
 製品の仕様

JVC 液晶マルチモニター
“Xiview”LT-42WX70

●画面サイズ:42V型 ●有効画面寸法:930W×523Hmm/対角1067mm ●表示色数:約10.7億色 ●輝度:450cd/m2 ●コントラスト比:4000対1 ●主な映像入力端子:HDMI× 3×アナログRGB×1、コンポーネント/コンポジット×1 ●消費電力:175W(待機時0.4W) ●本体外形寸法(スピーカー部を除く):990W×599.8H×42.5Dmm ●本体質量(スタンド・スピーカーを含む):約19.0kg

>>ビクターの製品情報(LT-42WX70スペシャルサイト)
>>製品データベース

 


そういった欲張りな要求に応えたのが高画質エンジン「GENESSAプレミアム」を搭載した本機だ。RGBのビット数を従来の各8bitから12bitへアップ。合計36bitとすることで、再現可能な色はなんと約687億色にもなる。おかげで広色域の画像や幅広い階調再現に対応した。また動画をクリアに表示する3次元ノイズリダクションや「倍速120コマ」による滑らかな動きも実現。搭載されたパネルは本機用にカスタマイズされたもの。プリセットモードはなんと「スタンダード」「ダイナミック」「シアター」「モニター」「フォト プロ」「ゲーム」と6つも用意されている。それぞれの調整項目も非常に多岐に渡っており、自分好みの画をとことん追い込むことができる。非常にマニアライクなディスプレイとして、「ハイアマチュア」を自認するユーザーのために作られた製品と言ってもいいかもしれない。

個々の欲求にしっかり応えてくれて、動画の表示と写真の表示をハイレベルで両立させた希有なディスプレイがLT-42WX70だ。実際にどこまで高画質にそれぞれを再現できるのかが気になるところ。次項からは、実際に動画(映画)や写真を表示して、本機の実力を検証してみることにしよう。

 
 評論家のプロフィール

藤井智弘 Tomohiro Fujii

東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。96年に東京新宿コニカプラザ(現コニカミノルタプラザ)で写真展「PEOPLE」を開催後、フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、各種雑誌や広告で活動。また国内や海外の街を撮影している。社団法人日本写真家協会会員。