もちろん、期待を持って出かけた。画質を判断することを業としている私たちにとって「ハイエンド向けの薄型モニターテレビ」という惹句(じゃっく)はいかにも魅力的である。また、それだけの製品を作るなら、そこには選び抜かれた技術集団がタッチしているはずだ。彼らとの再会や出会いは、常に新たな刺激を与えてくれるからだ。 新しいモニターテレビの名称は“XIVIEW(サイビュー)”で、全く新しい未知の映像が観られるテレビという意味である。モニターであるからチューナー内蔵ではない。ダイナミックコントラスト5万対1、そして120コマ倍速に対応した液晶パネルを採用しており、実績のある同社独自の高画質映像エンジン「GENESSAプレミアム」を絡ませて高画質化を実現している。静止画との併用を狙った本機は多彩なプリセットモードを搭載していることがまず大きな特徴として挙げられるが、こと動画再生に関しての注目モードは「モニター」と「シアター」だろう。ソースを忠実に映し出せるガンマの特性をベースとした「モニター」は業務機同様の画質が実現できるモードだ。そして「シアター」は文字通り映画ファン向けのモードである。一台一台、緻密なガンマ調整を行なってから出荷するというのも、モニターテレビならではの気配りとして高く評価できる。 |
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シネマモード プリセット値 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は老人として生まれ徐々に若返っていく男の数奇な運命を描いた大人の童話だが、描写そのものはリアルな作品である。全体にセピアとブルー(暖色と寒色)を巧みに使い分けた映像で、調整ではあらゆる意味でバランスの良さが求められる。ベンジャミンの幼なじみであるバレリーナの女性が公園のテラスで逆光を浴びて踊るシーンは見るたびに華を感じさせられるが、今回の調整では背筋に興奮が走るほどの美しさを感じた。 『愛を読むひと』はひねりの効いた刺激的なスリラーである。セクシャルなラブシーンの多いこの作品では、肌色や顔色をいかに魅力的にしかもリアルに表出するかがポイントとなった。『善き人のためのソナタ』は、私が視聴の定番としているソフトだ。壁崩壊前のベルリンで行なわれた思想統制と弾圧を描いたこの作品では、色の少ない殺伐とした時代の情景をいかに感じさせるかが第一のポイント。次に盗聴する男と盗聴される男の間の距離感がラストシークエンスの映像の中で表現されなければならない。輪郭の強調が目立たずに距離感の表現に長けている本機の映像は、その殺伐さと距離感を見事に表出してくれた。特にラストシーンでは、涙を禁じ得ないほどの波動が私の心と体を揺すっていた。 この日、視聴に費やした長い時間は、私がいかに映像にのめり込んだかと言うことの証でもある。調整しても思う通りの映像が得られるか得られないかは、最初の作品で決まる。それができなけれは、早急に引き上げた方がいい。この日は最初の作品が次の作品を促し、その結果また次の作品に挑戦したくなっていった。今まで、画質のいいテレビには数多く出会ったが、いまだかってこれだけ「いじって楽しめる」テレビと出会ったことはない。 私は私流の解釈を基に画質調整を行い映画を楽しんでいるが、映画とは人それぞれがその人なりに楽しむものである。このテレビが持つ多彩な画質調整機能は、リーズナブルである上に調整範囲の広さと確実さで群を抜いている。挑戦しがいのあるこのテレビ、放ってはおけない気がする。 |
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貝山流「LT-42WX70」調整術 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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評論家のプロフィール | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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