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一方、DSPなどデジタルオーディオ系も挑戦的だ。マランツは一貫してシーラスロジックを採用。今回もそのことに変わりはないのだが、ワンパッケージの中に32ビットの2つのDSPコアを入れた新チップCS49500を搭載している。ひとつはオーディオデコード、もうひとつがポストプロセシングだ。このデュアルプロセスDSPが断然有利なのは、回路面積が少なくてすむためにそこから放射される高周波ノイズが激減する。これは高級AVアンプにとってエポックというべきだろう。
何というS/Nのすごさ…。静寂のレベルがひと桁違っており、私が持参したCD、またDVDソースはことごとくこれまで聞こえなかった絶妙なニュアンスを味わうことになる。フォン・オッターのメゾプラノは軽やかな天女の声のようだし、ジャズではジェーン・モンハイトのコクと深みのあるボーカルテクニックが素晴らしい。それを解像力というなら手の切れそうなベースのエッジ、シンバルの波面やピアノの音域の正確さはこれまた驚異的。音楽全体が躍動とリアルな空気感に包まれるのだ。ピュア・ダイレクトモードで聴く生っぽさと音の鮮度は、高級ピュアアンプの域に迫ると言おう。 5.1チャンネル再生もハイレベルだ。「ボクサー7」は吹けあがりがよく、しなやかでハイスピードなレスポンスを見せる。ロハセルウーファーとダイアモンドトゥイーターを搭載するニュー800シリーズを、苦もなくドライブしてみせるのは驚くしかないだろう。強力な電源ステージや厚底の銅メッキシャーシ、アルミ無垢削り出しの脚なども、立体的で緻密、かつ悠然としたサラウンド空間の再現性に効を奏していたのだ。 『マスター・アンド・コマンダー』は風や波音、船体のきしみなどどこまでも微細な効果音を拾っており、その対比としての16ポンド砲の威圧するエアー感がひきたつのだ。天井が高く、超低域の土台もまったく揺るがない。『LOVERS』の息を飲むスリリングな移動音や、『めぐりあう時間たち』の何気ない会話や小鳥のさえずり川の流れなど自然な素材音にも、SR9600の懐深さを実感したのである。
IEEE1394(i.LINK)やバージョン1.1対応のHDMI端子など各種インターフェースも装備する、先進のフラグシップの登場に、ホームシアターの未来形を見た。
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