掲げられた標語は「プライベートシアターへのベストソリューション」。自信あふれる表現どおりその内容は卓抜で、ピュアオーディオで練り上げた技術と最新技術が巧みに融合している。電源は強力。大型トロイダルトランスと10万マイクロの大容量の電解コンデンサーが余裕ある電力を供給する。マイコンとディスプレイの電源は別個にトランスを設け、オーディオ回路への干渉を排除。出力段は大出力素子LAPTを採用した電流帰還アンプ。向き合った出力基板(4chと3ch) の中央をファンで強制空冷する新方式で、大電流回路を最短距離で結べるメリットが大きい。大電流供給ラインにはOFCのプレートが投入されている。電圧増幅段はHDAM-SA2モジュール、NF帰還型の電子ボリュームを採用し、歪みを最小に抑えている。オーディオデコーダーには、シーラスロジックの最新の高性能チップ(CS49500)を採用した。32ビット処理DSPを2基封入した優れもので、1基はデコード用、もう1基は自動音場補正を含む信号処理用である。
『マスター・アンド・コマンダー』では、緻密に付けられた効果音と身体を直撃する迫力ある砲撃戦のサウンドを堪能した。嵐の海の描写はまさに効果音の見本市だが、吹きすさぶ風や荒れ狂う波の音が、一瞬ごとに音色を変えているさまが克明に伝わってきた。今まで、このシーンで音色の変化がこれだけ多彩に表出されたことはなかった。
140Wの出力段7基を搭載した7.1chアンプ。5.1h再生では、フロントのバイアンプ駆動が可能だ(クリックで拡大)
次世代インターフェースHDMIも搭載(クリックで拡大)
砲撃戦の音は振動が身体を直撃する迫力がある。砲弾が人間の身体を粉砕するというリアルな感触が感じられるほどの凄まじさだ。ハリウッド製の『シャル・ウィ・ダンス』では、ダンスコンペティションの前日、ジェニファー・ロペスがリチャード・ギアをダンススタジオに誘いタンゴを踊るシーンを見る。ロペスの身を張った踊りが彼女のギアに対する感情表現にもなっている〔華〕のシーン。微細に捉えられたロペスの息遣いが、洗練された音楽の中で生々しい効果を生んでいるのが克明に判る。これは見慣れたソフトの中での新発見だ。それはこのアンプのクリアなサウンドがもたらした新発見である。
液晶タッチパネル型、学習機能付きリモコンを標準で付属(クリックで拡大)
ステレオ再生では、ピュアオーディオの高級機と拮抗する高音質が得られ、サラウンドでは聞き慣れたソフトから新しい陶酔や感動を引き出す。音に対する考えや好みがはっきりしている〔個〕にとっては、手放せぬ逸品となるだろう。
早稲田大学卒業後、東宝に入社。13本の劇映画をプロデュース。独立後、フジテレビ/学研製作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサーを務める。映画製作の経験を活かしたビデオの論評は、家庭における映画鑑賞の独自の視点を確立した。