2桁の型番を有する製品群はマランツブランドの中心に位置する基幹コンポーネントであり、そのサウンドは「原音に忠実な再生音」を目指すポリシーで貫かれている。

この数年、その基幹モデル群においてS1からS2への世代交代が進行中だが、頂点に位置する11S2シリーズに続き、15と13のラインが昨年秋から約1年かけてそれぞれS2に進化。この秋、プレーヤーとアンプ4機種がついに出揃うことになった。その4モデルを一堂に会し、シリーズごとに組み合わせて試聴することが今回のテーマである。

 
左は昨年秋に発売したSA-15S2。右は今年6月に発売となったPM-15S2。いずれもS1から大きな進化を遂げた
     
 
こちらは13S2シリーズ。左がSA-13S2、右がPM-13S2。上の15S2シリーズと外観は同じに見えるが、注意深く観察すると13S2のトップパネルの厚さが増していること、インシュレーターの質感が異なることなどがわかるだろう

 

4モデルの陣容はCD・SACDプレーヤー「SA-15S2」とプリメインアンプ「PM-15S2」、そしてそれぞれ上位に相当する「SA-13S2」と「PM-13S2」で構成される。

ここで注目しておきたいのが、S1時代から継承する、15S2シリーズと13S2シリーズの関係である。両者は型番こそ異なるが実は密接な姉妹関係にあり、ベースモデルに相当する15S2に対し、13S2はその高音質バージョンという位置付けになっている。

ベースモデルと、それをチューニングした上位機種という関係だから、当然ながら基本的な回路構成や機能はほぼ共通し、スペックにも目立った差は存在しない。だが、スペックには現れなくとも音が変わるのは、オーディオに詳しい読者ならおなじみのことと思う。果たして15S2と13S2の場合も例外ではなく、後で紹介するように両者のサウンドには興味深い違いを聴き取ることができるのだ。

 

ベースモデルの概要と、上位機種の具体的な高音質化対策を順番に見ていこう。まずはプレーヤーのSA-15S2とSA-13S2だが、SA-15S2は前作のSA-15S1からメカニズム、D/Aコンバーター、オーディオ回路をすべて一新しており、型番以外に共通点はほとんどないほど、中身は大きく生まれ変わっている。もちろん、具体的な変更にはフラグシップ機のノウハウが数多く投入された。

 
SA-15S2(左)とSA-13S2(右)の背面端子部。端子の種類や数などは同じだが、SA-13S2は銅メッキシャーシのため印象は大きく異なる

独自開発のメカエンジン「SACDM-10」はトレー部にザイロンFRPを採用して不要振動を排除、2mm厚鋼板を用いた台座の導入など、メカブロック全体の振動対策も半端ではない。オーディオ出力回路ではHDAMとHDAM-SA2を適材適所で使い分け、信号処理の高速化を図っている。D/AコンバーターはシーラスロジックのCS4398を積む。

 

このSA-15S2に対し、SA-13S2では銅メッキシャーシの導入によってノイズ対策をさらに徹底していることが、外見からわかる大きな変更点の1つだ。もう1点はトップカバーを5mm厚のアルミ無垢材に変更して筐体の剛性を大幅に改善していることで、それによって外見の質感も明らかに向上した。インシュレーターをアルミ削り出しタイプにグレードアップするなど、ボディの振動対策を総合的にきめ細かく追い込んでいることにも注目しておきたい。

SA-15S2(左)とSA-13S2(右)の内部。レイアウト自体は共通だが、細部を眺めれば、たとえばSA-13S2は電源トランスに銅メッキシールドが施されていること、HDAMやコンデンサーなど各種デバイスに15S2とは異なるものが搭載されていることなどがわかるだろう。このような細かなチューニングの組み合わせで大幅な音質向上を図っているのだ
     
 
 
インシュレーターは両機ともアルミ製だが、15S2(左)は鋳造、13S2(右)は削り出しという違いがある。見た目はもちろん、音質にも違いが出る   SA-13S2/SA-15S2に付属のリモコン(左)とPM-13S2/PM-15S2に付属のリモコン(右)。どちらもプレーヤーとアンプを1台で統合コントロールすることができる

 

プリメインアンプのPM-15S2は、従来は一部にオペアンプを使用して構成していた部分をHDAM-SA3とHDAM-SA2を採用して新たに設計し直し、フルディスクリート化を達成したことが大きな変更点だ。オペアンプとHDAMではスルーレートに1桁以上の違いがあり、変更に伴うハイスピード化の効果はきわめて大きいという。最新のHDAM-SA3はフォノイコライザーとリニアコントロールボリューム回路の電圧/電流変換部に使われている。ちなみにフォノイコライザーはNFB量を全帯域で揃えた「コンスタント・カレントフィードバック」タイプであり、従来型に比べて音質の改善が著しい。アナログレコードの愛好家はぜひ注目しておきたいポイントだ。

コンスタント・カレントフィードバック型フォノイコライザーアンプを採用(写真はPM-13S2のもの)

CD・SACDプレーヤーにも当てはまることだが、HDAMの投入によるディスクリート化と信号伝送の高速化は、マランツが目指す「理想の音」に近付けるうえできわめて有効な手段であり、フラグシップをはじめとする上位機種では必須の技術になっている。今回のモデルチェンジでは、その設計手法を15S2シリーズまで導入することによって設計思想の一貫性を獲得したことになり、理想に大きく近付いたといえるだろう。

PM-15S2(左)とPM-13S2(右)の内部。こちらも仔細に眺めると、PM-13S2のトランス部が一回り大きく、シールドの仕上げも異なるなど、数多くのチューンナップがPM-13S2で行われていることがわかる

 

ベースモデルのPM-15S2に対し、最新のPM-13S2はプレーヤーと同様にアルミ無垢材のトップカバーと銅メッキシャーシを採用し、音のきめ細かいチューニングを図っている。さらに、二重シールドで漏洩磁束を徹底した抑え込んだ大型トロイダルトランスとカスタム設計の電解コンデンサーを採用し、しかも電源部の容量はPM-15S2に比べて大きな余裕を持たせており、再生音に大きな影響を与えることが予想される。たとえ出力の数値が同じでも、瞬時電流供給能力の違いなどによって、音圧感やスピード感に大きな差が出る可能性が高い。

 
PM-15S2(左)とPM-13S2(右)の背面端子部。プレーヤーと同様に端子の種類や数は同じだが、PM-13S2は銅メッキシャーシのため、より高級感が高い
     
 
天板はSA-13S2と同様、SA-11S2やPM-11S2にも採用された5mm厚のアルミ材を使用している   シャーシには銅メッキを施し、高周波数ノイズを減衰させている
     
 
プリアンプ段とパワー段からオペアンプを排除したフルディスクリート構成はPM-15S2と同様。写真はプリアンプ部で、“HDAM”の最新バージョン「HDAM-SA3」をふんだんに使用している   パワーアンプ部にはV/Iサーボ方式の電流帰還型回路を採用。入力回路とDCサーボ回路はHDAM-SA2にトランジスタを組み合わせ、オンボードのHDAM-SA3回路としている