本機に付属のリモコン。iPodのメニュー操作に対応し、あらゆる操作を行うことができる
このページではマクセル「MXSP-3000」の使い勝手とそのクオリティについてご紹介する。まずは音楽再生時の使い勝手から見ていこう。接続したiPod本体のインターフェースで操作するときの操作性は、もちろんiPodそのものだ。iPod nanoならクリックホイール、iPod touchならタッチパネルを使い、普段通りに操作できる。

iPod対応スピーカーの中にはリモコンを用意していない、あるいはリモコン操作できる機能が少ない製品もある。リモコンでは再生・一時停止や曲のスキップなどの基本操作しか行えないという製品も少なくない。その点、本機のリモコンはiPodのメニュー操作に対応しており、例えばプレイリスト選択から再生開始まで、一連の操作をリモコンだけで行える。上下ボタンでメニュー項目を選択してSETボタンで選択、というのがおおよそのリモコン操作方法だ。もちろん再生の基本操作や音量調整にはそれぞれのボタンが用意されている。

 
本機の底面には直径100mmのサブウーファーを搭載し、低音の再生能力を高めている
では期待の音質チェックだ。最初はジャズ・ボーカル。Sarah Vaughan「Sassy Swings The Tivoli」を聴いてみた。1960年代のライブ録音だ。

ボーカルを前面に押し出してバックを一歩引かせる音場の描き方がまず印象的。主役はもちろん歌であるので、これが前に出るのは何の違和感もない。ユニットの口径からすると声が太く感じたので耳を近付けて確認してみたところ、声の帯域もサブウーファーが補っているようだ。小型システムでは有効な手段である。

そしてバックの演奏だが、配置としては後ろに行くが、その存在感や迫力は失わせない。古い録音なのでハードヒットの多いアップテンポの曲では特に音が荒っぽいのだが、そのざらつきを変に丸めたりせずに、ちゃんとそのまま届けてくれる。納得できる音だ。

次に八城邦義トリオ「Alone Together」を聴いてみた。この音源は収録帯域の広さ、ダイナミクスの広さ、音場の緻密さなどハイレベルな最新の録音。さすがにそれをそのまま引き出す再生というのは、この価格・サイズの製品に求めるのは無理がある。それは当然だ。

しかし実際に聴いていると、中域中心にまとまりながら勢いを感じさせ、これはこれで楽しめる音なのである。ピュアオーディオのシステムで再生したときよりも、ドラムスのバシッという迫力あるキレなどが強調される。脚色と言えなくもないが、心地よい脚色なのでこれは歓迎できる。

サブウーファーの活躍も目覚ましく、ベースやフロアタム、バスドラムなどに十分な太さを与えてくれている。音場全体の厚みも不足を感じさせない。これも納得できる音に仕上げられている。

The Jimi Hendrix Experience「Live At Monterey」も聴いてみた。これは文句なしに相性が良い。本機が得意とする帯域とヘンドリックスのギターのおいしい帯域が重なっており、ファズがギュワンと圧縮感のある唸りをあげる。ドラムスのバシッというキレも健在。総じて音楽再生ではサブウーファーが大きな効果を発揮しており、中域を充実させる効果に加え、低域の表現力も十分に確保していると感じた。

 

さて、iPodでの動画再生も試してみよう。しかし試すも何も、本機とテレビを映像ケーブルで接続さえしていれば、iPodで普通に動画を再生開始するだけで映像はテレビから、音は本機から再生される。音楽再生時と変わらない使い勝手で、迷うことはないだろう。新iPod nanoの動画撮影の手軽さ+本機の動画再生の手軽さは、動画の楽しみ方を変えてくれることだろう。

 
新iPod nanoの背面左下にはビデオカメラが内蔵されている   メニューから「ビデオカメラ」を選び、クリックホイールを押すだけで手軽に動画撮影が行える
 

次にiPodを外して、ブルーレイレコーダーと接続して映画を再生してみた。もちろん本格的なシアターシステムには及ばないが、一般的な薄型テレビ内蔵のスピーカーと比べれば明らかな向上を実感できる。音場の厚み、低域の存在感が違うのだ。メインスピーカー自体は薄型テレビ内蔵のものとあまり変わらない口径だが、ここでもサブウーファーが活躍してくれる。また本機にはサラウンド機能も搭載されており、音場の広がりを重視したい場合には効果的だ。

iPod対応スピーカーとして、今までにない新しい形を提案した“デッキスピーカー”「MXSP-3000」。今回のテストを通して、新提案というにふさわしい機能と使い勝手、そして音質を備えていることを確認できた。音楽も動画ファイルもDVDやブルーレイも、いままでより良い音で楽しみたい。そういう方に向けた手頃な選択肢の登場だ。