マランツのミドルから高級機のレンジをカバーするプリメインとデジタルプレーヤーの15/13/11シリーズ。そのなかでPM-11S1とSA-15S1がこの秋、それぞれS2へのグレードアップを果たした。ハイファイコンポーネントの分野でこれだけ充実したラインナップを持つメーカーはいまや少数派になってしまったが、製品のモデルチェンジをコンスタントに継続する点からも、マランツブランドの堅調な姿勢をうかがうことができる。 | ||||||||||||||
PM-11S2はプレミアムシリーズの主役PM-11S1の後継機として4年ぶりにリファインされた、マランツを代表するプリメインアンプである。ニュープレミアムデザインを継承した外見はほぼ同じに見えるが、両機種を並べて誰もが気付くのはトップパネルの変更であろう。PM-11S2には厚さ5mmのアルミ製トップカバーを新たに導入し、全体から受ける印象は大いに高級感を増した。アルミは非磁性体なので、オーディオ信号への影響を抑えられるメリットも大きい。マランツが高級機に積極的に導入している銅メッキシャーシとともに、高音質を支える重要な要素に数えることができそうだ。
外見の違いに比べて内容の更新はさらに大きく、多岐にわたっている。左右チャンネルのパワーアンプ基板を前後に並行配置して信号経路を最短化した基本コンストラクションこそ変わらないが、その中身は大幅な見直しを受けた。電源部はチョーク内蔵型トロイダルトランスをひと回り大型に変更し、アルミケースを含む二重シールドによる磁束漏れの低減を徹底。ケミコンもパーツのグレードを格上げしたカスタム品の大容量タイプを採用するなど、余裕ある設計を行っている。
マランツ独自の高速電圧増幅モジュール「HDAM」はスルーレートをさらに高めたSA3バージョンに進化。200V/μsec以上という数値はきわめて立ち上がり/立ち下がりの速い動作であり、まさに超高速アンプと呼ぶにふさわしい。このHDAM SA3を本機ではライン入力のバッファーアンプのほか、バランスバッファー、フォノイコライザー、プリ、パワーの各段に配置している。 |
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フォノイコライザーアンプは、コンスタント・カレント・フィードバック方式と呼ばれる新設計の回路に変更。SC-11S1などに搭載されて好評を得た同回路は、低域から高域までNFB量を一定とすることで音域ごとの音色差を大幅に抑える点に特徴がある。本機ではMMとMCの両方に対応したフルディスクリートタイプとしてクオリティにとことんこだわっているので、アナログレコードをじっくり楽しむ音楽ファンはぜひマークしておきたい。
そのほか、瞬時電流供給能力のさらなる向上、ウォルフソン製ボリュームで構成した高精度なリニアコントロール・ボリュームの採用など、プリメインアンプの最上位モデルにふさわしい贅沢な装備が目を引く。スピーカーターミナルはWBT製を採用し、信頼性、使い勝手ともにセパレート型なみの水準に到達している。
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SA-15S2はSA-15S1のリファインというよりはまったくの新製品といってよいほどに大きく変更されたグレードアップバージョンだ。まずは心臓部のドライブメカが新開発のSACDM-10に更新されたことが大きい。ローダーの素材には制振・制音に優れた「ザイロン」を導入したほか、台座を従来比2倍の2mm厚鋼板で固定して振動を徹底的に抑えた。さらに、メカドライブ全体をアルミ製カバーで覆うことによって、作動音の低減にも大きな効果が期待できる。このカバーには効果的な音響的チューニングを施したという。
デジタルプレーヤーのクオリティを左右する心臓部のD/Aコンバーターは、シーラスロジック社のCS4397からCS4398に一新された。最新世代のDACだけにS/Nや解像度が向上しているのはもちろんだが、それに加えてDACの付加機能として、デジタルフィルターの選択機能が新たに追加された。CDではデフォルトのスローロールオフと急峻なフィルター特性のどちらか一方から選択し、SACDの場合は可聴帯域外の周波数特性を2種類の設定から選ぶことができる。DSPで同等な機能を実現していた従来の仕様とは異なり、フィルターカーブを演奏中にも変更できるようになったので、聴き比べながら好みに合わせて選ぶことができ、活用の機会が広がっている。 |
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プリメインアンプのPM-11S2では、スルーレートを改善したHDAM SA3が音質改善に貢献しているが、SA-15S2の場合は2種類のHDAMを適材適所で使い分ける「ハイブリッドHDAM」構成を工夫することによって、出力回路の音質向上を実現した。具体的にはローノイズ、低歪フィルターブロックにHDAM(差動入力)、その送り出しにHDAM SA2 (低インピーダンスバッファ) という具合に両者を使い分けているというが、その使い分けが音質にどう生かされているのか、非常に興味深い。 | ||||||||||||||
最近のマランツのデジタルプレーヤーは下位モデルにもデジタル入力端子を搭載して用途を広げているが、本機も新たに光デジタル入力を搭載し、DACモードでの動作が可能になっている。対応サンプリング周波数は32kHzから96kHzの広範囲に及び、24bitまでの動作をサポート。MP3とWMAフォーマットへの対応と合わせて、使い勝手の改善を狙っている。PC音源の高音質再現はもちろんのこと、デジタル出力をそなえるUSB DACやPS3などとの組み合わせでも真価を発揮するに違いない。 なお、同軸入力を積んでいないのはアースからのノイズ流入を考慮した結果だという。
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