SA-15S2は主要なデバイスと回路がそっくり新しくなっていると紹介したが、本機の音はその事実を裏付けるものであった。その違いは半端なものではなく、SA-15S1からSA-15S2につなぎ変えて音を出した瞬間に、この2機種の成り立ちが別物であることを思い知らされる。

音の違いを具体的に紹介していこう。試聴したディスクはアンプの聴き比べと同じだが、どの録音についても、音の違いはかなり大きい。オーケストラは低弦と金管楽器がマッシブで力強く、一つひとつの音符の動きがクリアに浮かび上がってくる。量感があるからといって細部がぼやけるわけではないところが本機の最大の特徴であり、中高域の明瞭な粒立ち感でもわかる通り、解像感は明らかに前作を上回っている。R.コルサコフの《道化師の踊り》は様々な打楽器を効果的に使っているのだが、それぞれの楽器の音色と演奏者の位置がSA-15S1よりも鮮明に把握できるのである。S/Nが優れていることもあり、余韻の消え際はていねいで伸びやか、奥行きや高さなど空間表現の性能も確実に上がっている。

試聴時に使用したPM-11S2(左)、SA-15S2(右)。S1とS2の比較では、セッティングで音質が変わらないよう、同じ位置に機器を置いた

 

ロヴィーサのボーカルは詰まったところのない軽やかさと同時に、タイトでスピード感のあるリズム楽器の存在感に感心した。このアルバムでは、おなじみのボサノバの曲をひとひねり加えたアレンジで演奏しているのだが、そうしたサウンドの特徴が狙い通りに聴き手に伝わってきて気持ちがいい。抜けのいいスピード感のあるサウンドは長く聴いていてもストレスを感じないものだが、本機で聴くボーカルやジャズにはその良さがそなわっている。

SA-15S1のサウンドには聴きやすい柔らかさがあるが、SA-15S2の明快で彫りの深い音を聴いた後では、正直なところ、もう少し積極的に鳴って欲しいと感じる部分がある。この音の違いは、プリメインアンプ2機種の比較試聴で感じた違いと方向性は似ているが、プレーヤーでこれだけ大きな音の進化を引き出すのは簡単ではないはずだ。

ダニエル・ド・ニースが歌うヘンデルでは、楽器の定位と音像の立体感に2機種の違いが現れた。音色の基本的な志向はよく似ているが、SA-15S2には、声のイメージがフォーカスよく定まってふらつきが少ないという特徴がある。今回の試聴はB&Wの800シリーズで聴いたのだが、やはり空間再現の精度が高いスピーカーを組み合わせると、プレーヤーの音場再現力の重要性がよく理解できる。

今回の試聴ではスピーカーにB&W「800D」を使用した

 

期待以上に力強いサウンドが出てきたので、大編成のオーケストラをあらためて聴いてみることにした。ブダペスト祝祭管のマーラー《復活》である。この曲ではティンパニの打点の正確さや、皮の張りの強さなど、ある強さのテンションがかかった音の鳴りっぷりの良さに気付かされる。音がいつの間にか出るというのではなく、まさにここぞというポイントで音が立ち上がる。このアタック感の違いを正確に聴き分けるにはそれなりのシステムが必要だが、そこまで厳密に問わなくとも、ほとんどの再生系でサウンドの切れの良さとして聴き取ることができるはずだ。

 

SA-15S2は光デジタル入力端子も備える
SA-15S2に新設されたDACモードのパフォーマンスも大いに気になるので、最後にSA-7S1と本機を光ケーブルで接続して確認してみることにした。組み合わせとしては現実的でないが、クオリティの確認が目的だからご容赦いただきたい。

この組み合わせから出てきたサウンドは、ディテールを緻密に引き出す繊細な面と、ドライブ感のあるベースの力強さが両立し、上質感もしっかりそなわっていた。音の抜けがよいのはDACモードでの動作時にメカドライブの電源を遮断しているためだろう。解像力の高さは新しいDACにそなわる良さであり、低域の力強さからは、トランスポートとして使っているSA-7S1の潜在能力をうかがうことができた。たんなる付加機能ではなく、様々な用途に安心して常用できる性能だ。