テレビを熟知したスタッフたちが「レグザ番組表・ファイン」の開発現場に集まった
━━テレビの操作感の善し悪しを左右する、“REGZA”シリーズのGUIはどのように設計されているのでしょうか。
本村氏:ゼロから立ち上げる商品に搭載する機能と、既に発売されている商品に追加するための機能を開発する場合とでは、それぞれに違いがあります。今回は「Z3500」シリーズを例にお話しします。“REGZA”をお求めになるお客様は、テレビに対してとても強いこだわりをお持ちな方が多くいらっしゃいます。そのため、普段からリモコンの使い心地や番組表の表示方法など、様々なご意見をいただきます。これらの貴重なご意見をベースに、バージョンアップ等で対応できる場合は機能追加も行います。その他にもいただいた沢山のアイデアが、次の商品開発にとっての“宝”になっています。次に販売店の方々からのご意見です。日頃からお客様の声を生で聞いている、販売店スタッフのご意見はとても参考になります。それらの声を集めて、当社の商品開発にフィードバックするのが営業メンバーの仕事です。これらのご意見・ご要望などが、商品企画を担当する私の元に集まってきて、それらを精査してから次の仕様のリクエストとして、GUIを開発するメンバーに伝えて行きます。
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本村氏より託されたリクエストを、実際の製品に搭載される機能として落とし込んでいくことが宮崎氏の使命だ |
宮崎氏:商品企画から受けた仕様要望書について、技術的な可能性を検討するのが私の役割です。仕様のリクエストについては、お客様からのご意見を元にしたものも多いのですが、一方では本村が突発的にひらめいた機能をメールで伝えてくる場合も多くあります。その内容には「これ、できる?」といった感じで、とても簡素なものもあります。中でも印象深いのが「Z2000シリーズのEPGバージョンアップ」の件ですね。あの時は本当に焦りました。このようにして集まってきた数多くの要望について、放送の仕様などを確認しながらプログラム(フロー)の流れなどを確認します。それらが確定すると、次にGUIの画面デザインを担当する山根、小原の在籍するデザインセンターへ引き継ぎます。
山根氏:デザインセンターでは、本村、宮崎より託された仕様を実際の画面に反映させていきます。例えば「レグザ番組表・ファイン」では、番組名と放送内容を一つの枠に表示する仕様になっていますが、ここで番組名と放送内容を同じ文字サイズや文字色で表示してしまうと、見づらくなります。番組表でもっとも重要なのは「番組名」ですので、それが一番見やすくなるようにコントラストを強くして目立たせます。次に放送内容の説明は文字のコントラストを番組名よりも落として、少し控えめに配置します。けれども一方で放送内容のコントラストを下げすぎてしまうと、今度は文字が見づらくなります。この「目立たないけど読みやすい番組情報」を実現するまで、何度もトライアルを繰り返してきました。
小原氏:デザインセンターはGUIのデザインを作り上げても、そこで仕事が終わるわけではありません。むしろデザインがあがってからの方が、仕事は忙しくなるかもしれません。GUIの画面はいったんパソコンで作成したものを、次にテレビに書き込んでテストします。テレビへの移植を済ませたら、今度は社内・社外のモニターを使って実際に操作を行ってもらい、チェックを行います。社内モニターといえどもテレビにはまったく関係ない部署の人がテストをします。社外モニターになると、お子様やお年寄りまで幅広い年齢の方がテスターになります。その間、私たち開発スタッフはまるで運動会で活躍する自分の子どもを見守るような心境で、いつも緊張しながらテストの結果を待っています。
小原氏は東芝初のHDD内蔵テレビ“ちょっとタイムフェイス”「LH100」シリーズから、テレビのGUIを担当している、同社の録画機能付きテレビの操作性を熟知したエキスパートの一人だ。一方の山根氏は同社製品のユニバーサルデザインにも関わるなど、エルゴノミックス(人間工学)に強いデザイナーである。ややもすればエンジニアの“独りよがり”に陥りやすい開発段階の仕様について、ユーザーとしての目線から見つめ直し、バランスを調整するのが彼らの役割となる。 |