80年以上の歴史を持つ名門オーディオ企業

SHUREは設立から80年以上の歴史を持つ、オーディオ・エレクトロニクスのメジャーブランドだ。現在、本社をアメリカ合衆国イリノイ州ナイルズに置き、フランクフルト、ロンドン、東京、香港、上海にも拠点を構える、国際的な企業である。工場も本社、メキシコ、中国の各地に持っている。

SHUREが1932年に発売した同社初のマイク
創業者シュアー氏は元々はラジオ技術者であり、1925年に会社を立ち上げ、ラジオのパーツやキットの販売を開始した。

しかしその後、完成品ラジオを販売するメーカーが台頭してきたこともあり、次の事業としてマイクの開発に乗り出す。そして最初のマイク製品を販売開始したのが1932年のことである。

その後、同社のマイクは放送や音楽の現場で高い評価を得て、確固たる地位を得た。同社は世界有数のマイク・ブランドであり、同社のマイクは現場におけるひとつのスタンダードである。その使用例は枚挙にいとまがない。

ここではひとつだけ例を挙げておこう。あなたがテレビを見ていてボーカリストがマイクを手にしていたら、それは十中八九、同社のマイクだ。

 

好評を得たミュージシャン向けイヤホン

さて同社の現在の主なプロダクトラインは、マイクロフォン、ワイヤレスマイク、パーソナルモニター、フォノカートリッジ、そしてイヤホンだ。どの分野の製品もそれぞれの現場で活躍しているが、今回ここでは我々に身近なイヤホンについて、同社の理念、同社製品の特長を紹介していこう。

同社のイヤホン開発はそもそも、大会場での音楽ライブにおける、ある問題に対応するために開始された。

ミュージシャン向けのイヤホンモニターシステムを開発したところ、その音質の良さが認められ、コンシューマー向けに発売することになった

ステージ上でミュージシャンが自分や他のメンバーの演奏をモニタリングするのに従来は一般的に、モニタースピーカーというシステムが使われていた。ライブ会場のステージ前方などに置かれている黒い箱を見たことがあるだろうか。あれがモニタースピーカーだ。

しかし会場が大きくなると問題が出てきた。モニタースピーカーからの音が大歓声に掻き消されてしまうようになったのだ。

そこで同社が開発したのが、イヤホンを使ったモニターシステムである。イヤホンの構造や形状を工夫して遮音性を高め、大歓声に負けることなくモニター音声をミュージシャンの耳に直接届けることを狙ったのだ。そして完成した同社のパーソナルモニターシステムはミュージシャンたちに好評を博した。

話はここから意外な方向に進む。ミュージシャンたちはふと気付いたのだ。「このイヤホンって普通に音楽を聴くときにもいいよね」ということに。

音の良さはプロクオリティだし、外の騒音はカットしてくれるそのイヤホンは、ミュージシャンが移動中のバスや飛行機の中で音楽を聴くときにもその力を多いに発揮してくれたのだ。

同社モニターイヤホンをそのように使い始めた最初のミュージシャンは、スティービー・ワンダーやハービー・ハンコックなどであったという。一流のミュージシャンは一流のリスナーでもある。その彼らが、同社イヤホンの音楽リスニング用としての魅力を発見したのだ。

それをきっかけに同社は、モニターイヤホンを一般向けにも積極的に販売するようになり、そして現在は、音質や装着感、使い勝手をさらに向上させたSEシリーズがラインナップされている。

 

遮音性の高さと音質の良さがSHUREブランドの特徴

さてステージモニターの技術を受け継ぐ同社のイヤホンは、極めて高い遮音性を大きな特長としている。同社は自社のイヤホンを「サウンド・アイソレーティング・イヤホンズ」と呼んでいるほどだ。

同社のサウンド・アイソレーションのアプローチは実にシンプル。耳栓と同じようなイヤパッドで耳を塞ぐという物理的な手法で、外部騒音をカットする。至って単純な手法だが騒音カット性能は高い。超小型マイクを耳の穴の中に仕込んで行われた実際の計測で、フォーム・イヤパッド装着時の同社イヤホンは、ノイズキャンセリング・ヘッドホンの代表的な製品を上回る騒音カット性能が確認されているという。

また最近のモデルの多くには、フォーム・イヤパッドと同等の遮音性を維持しながら装着感を高めたソフト・フォーム・イヤパッドが採用されており、使い勝手の面でも大きな進歩を見せている。

もちろん、優れた音質も大きな特長だ。わかりやすいところでは、一般的なダイナミック型ユニットに対して音質面での優位を持つバランスド・アーマチュア型ユニットの採用(一部モデルを除く)が特徴的。

黄金の耳=ゴールデンイヤーズと呼ばれる熟練のエンジニアが音質調整を行う。他社から引き抜かれないよう名前や顔は公表していないという

しかし同社ならではの音質を実現する本当に大切なポイントは他にある。「ゴールデンイヤーズ」と呼ばれる熟練エンジニアによる最終的な音質調整や、アーティストからのフィードバックが、同社のイヤホンの音質を高い水準に引き上げているのだ。長い歴史で得たノウハウや人材、そして音楽製作の現場とのリレーションシップを持つ同社だからこそ実現できる音質、というわけである。

さて、同社イヤホンの完成度を示すひとつのリサーチ結果がある。同社のイヤホンを購入したユーザーの33%はその後、同社の上級モデルにステップアップしているというのだ。

同社イヤホンを実際に購入したユーザーがその音に納得し、その上のクラスの製品に大きな可能性を感じたという証である。

ミュージシャンに見いだされ、一般ユーザーからの支持も不動のものとなったSHUREイヤホン。リーズナブルな新製品も加わり、その魅力は今後さらに広い層へと伝わっていくだろう。

 

 
ヒビノ(株)ヒビノプロオーディオセールスDiv.
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