■音場の厚みと情報量の多さはSHUREの名に恥じない
次はロック・フィーリングも強いジャズ・ユニット、上原ひろみ率いるHIROMI'S SONICBLOOMの「BEYOND STANDARD」。
付属イヤホンはやはり、バランスは良好で軽快さには好感も持てるが、厚みや重み、演奏の細かなニュアンスなどの再現力はない。シンバルは少し丸まった感じで繊細さが薄れているし、ピアノの音色もガツンという力強さや輪郭の艶やかさがいまひとつで、いまひとつ説得力に欠ける。
SE102-Kにすると、ピアノは適度な厚みと艶を得てグランドピアノらしさを増す。スネアドラムの一発ごとのニュアンスの違い、アタックの強さや響きの残り方などもより強く感じられる。シンセとギターの音色もクリアさを増し、ベースラインも力強さを得る。
曲中にピアノのアルペジオが続いてその音が重ねられ音場に溢れていくというような場面があるのだが、その音の重なりも、重ねつつ一音一音にしっかりとした粒立ちがあって分離しており、無数の音が溢れていく様が美しい。やはり音場に厚みがあるし、音場の中の情報量(音数と音のニュアンス)が多いと感じる。
一般的な携帯音楽プレーヤーに付属するイヤホンとの音質の差は、明らかだ。加えて特に屋外では遮音性の差も発揮されるため、総合的な音質の差はさらに広がることになる。
1万円を切るとはいえ、いままで「イヤホンなんて付属のもので十分」と思っていた方にとっては、安い買いものではないだろう。しかし音を聴けば説得力は十分と思う。
同社ユーザーを裾野から広げるために投入される戦略モデルだけに「安くてもSHUREの名に恥じない音」が求められるわけだが、それを見事に達成していると言える。高音質イヤホンのエントリーモデルとして広くおすすめできる製品だ。 |