注目の画質については、エアチェック映像を中心にした印象を紹介しておこう。結論から言うと、超薄型だからといって画質面で不利になる要因はなく、実際に既存の液晶テレビと互角の性能を確保しているといってよい。

32V型の良さである解像感の高さに加え、素直で伸びのあるコントラスト感を実現しており、映画からスポーツまで、幅広いソースを4つの映像モード(スーパー、スタンダード、リビング、シネマティック)で柔軟に描き分ける。特にリビングモードは明るさとコントラスト感を巧みに両立させており、外光が入る明るいリビングルームなどの環境で活躍してくれそうだ。映画など落ち着いた階調のあるソースはシネマティックモードがよい。色バランスにもくせがなく、肌色の描写にも偏りは感じられない。上下左右178度の広範囲な視野角とコントラスト比10,000対1を確保できるIPSαパネルの良さも実感することができた。

【Woooステーション】UTシリーズの画質をチェックする山之内氏。様々な角度から眺め、IPSαパネルの視野角の広さを確かめる。横方向から見てもコントラストの低下が少ない点に好印象を持ったという

薄型から超薄型への進化は、テレビがレイアウトフリーの領域に進むことを促し、大きな変革を引き起こす可能性を秘めている。来年は液晶テレビだけでなくプラズマテレビもさらなる薄型化がテーマになりそうだ。その先には複数の方式の次世代ディスプレイも登場を控えているが、まずはUTシリーズが切り開いた新しい可能性を高く評価したい。こうした意欲的な製品が市場に登場することによって、ホームエンタテインメントの世界に新しい潮流が生まれ、ライフスタイルにまで影響を与え、テレビとの接し方にも変化が生まれるだろう。常識にとらわれない斬新なセッティングを工夫したり、これまで諦めていた場所に設置するという具合に、使い手の創意と工夫が生きてくることも楽しみだ。

日立が他社に先駆けて超薄型テレビを製品化した背景には、グループ内に擁する企業や研究所の資産がある。技術力の高さが際立つ製品だが、それを形にする環境があったからこそ、早期の製品化が実現したのである。

【上段】左:「UT42-XV700」(2008年4月上旬発売) 右:「UT37-XV700」(2008年2月上旬発売)
【下段】32V型「UT32-HV700」(2007年12月中旬発売)のカラーラインナップ。ブラック、ホワイト、レッド、ブルーの4色を用意。レッドとブルーは限定生産