日立のWoooUTシリーズ開発の特徴は、日立グループ内の様々な組織から、それぞれの持つ技術を結集させた開発体制にある。開発にあたっては、
強力なトップダウンのもと、日立グループの総合力を結集し、全社を挙げての協力を取り付けた。このことからも、同社がWooo UTシリーズにかける強い意気込みが伝わってくる。
具体的には、通常のテレビの製品開発にあたるコンシューマ事業部グループ内のコンシューマエレクトロニクス研究所のみならず、デザイン本部や日立グループ内の各研究所の技術が総動員され、異例のスピードで開発が進められた。
例えば、薄さ30mm台という薄型化の実現のためには本体内に冷却ファンを搭載することができず、放熱構造の見直しが必要となる。このため、電源構成の変更や部品レイアウトの設計、放熱シミュレーションと、従来のテレビ設計を超えた技術が求められる。UTシリーズでは、大型サーバーの放熱設計を行ってきた「機械研究所」の技術を採り入れた。熱解析シミュレーションを用いることで、従来の薄型テレビとは異なるエアフロー構造が実現。薄型で省スペース、かつ背面の放熱孔も極力目立たせないという、デザイン上の課題もクリアした。
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同社の従来品に搭載された電源基板。これだけ高さがあるとWooo UTの薄型筐体には内蔵できない |
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これがWooo UTシリーズの電源基板。左の従来品と比べて大幅に薄型化した。この薄型化には日立グループの様々な技術が導入された |
この他にも、搭載する液晶パネルはIPSを生み出した「日立研究所」の技術を用いたもので、バックライトに新開発拡散板を搭載するなどの工夫により、従来比約1/2の厚みとすることに成功した。
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ファンを使わず、かつ背面に大きな孔を開けることなく効率的な冷却を行うために、同社の大型サーバで培った放熱技術を応用した |
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パネルと蛍光管の距離を短くすると、通常は輝度ムラが生じてしまうが、Wooo UTでは新方式の拡散板の採用によってパネルと蛍光管の距離を縮めることに成功した |
本体内蔵のHDDには当然のことながら日立の「中央研究所」、ソフトウェアには「システム開発研究所」、薄型設計のテレビ量産体制には「生産技術研究所」の技術が用いられている。通常は製品開発に直接関わらない研究所も含めて、開発段階から協力する体制を作り上げたことは、Wooo UTシリーズが薄型テレビの先鞭を付ける推進力となった。
コンシューマエレクトロニクス研究所単体の開発体制の枠を超えた、日立グループが持つ膨大な技術資産を、UTシリーズという開発目標の下に集結させる。目まぐるしく進化を続ける薄型テレビの開発競争のなかで、世界に先駆けて最薄部35mmという筐体のUTシリーズを世に送り出せた背景には、コンシューマ製品のみならず幅広い製品を手がけ、グループ総従業員数が約40万人にも及ぶ日立製作所の総合力があったのである。 |