日立の薄型液晶テレビWooo UTシリーズ−−。最薄部35mmという前代未聞の薄型デザインで世界に衝撃を与えた2007年12月のデビューから、2008年6月には第2世代機にあたるWooo UT770シリーズをリリースした。

薄型・レイアウト自由型、オプションのワイヤレスユニット、HDD内蔵・iVスロット装備による録画対応といった特長だけでなく、映像配信への対応も万全なWooo UT770シリーズは、薄型テレビのトレンドをすべて先取りした最先端モデルだ。

 
Wooo UT770シリーズは薄型というだけでなく、内蔵HDDとiVポケットにより録画対応も万全。しかもネットワークに接続すれば、映像配信サービスにもフル対応する。薄型テレビのトレンドを牽引する最先端モデルだ

今までにない新しいコンセプトをいち早く具現化したWooo UTシリーズは、どのように誕生したのだろうか。UTシリーズの企画・開発段階にまで立ち返り、発売までの経緯に迫ってみよう。

日進月歩の進化を続ける薄型テレビでは、大画面化と高画質化、そして高機能化と、熾烈な競争が繰り広げられている。もちろん製品ごとの違いはあるにせよ、長いスパンで捉えてみると、各社のテレビとも画質・機能に熟成を重ね、概ね満足できるものになろうとしていている。このような時代に、ユーザーを満足させることができる薄型テレビの差別化とはどのようなものだろうか。

日立の答えは、部屋のインテリアにマッチし、設置や使い方を自由に決められるテレビという、現在のWooo UTシリーズのコンセプトだった。

日立がUTシリーズの企画段階で行ったテレビ購入希望者への調査によると、テレビを従来の約1/2にあたる50mmに薄型化しただけでは、魅力を感じる回答者が少なかったのに対し、薄さが約1/3となる30mmになると、「とても魅力あり」という回答が半数以上に急増したという。このことから、UTは薄さ30mm台を目指して開発を行い、見事に製品化を成し遂げた。

薄型化・軽量化を進めたことで、従来は購入者の1%程度にとどまっていた”壁掛け”というスタイルがより身近になる。さらには、デザイナーからは薄さだけでなく、例えば壁から離して部屋の中央にも置くことができるなど”レイアウト自由型”をデザイン面からも実現するため、背面から見ても美しい360°デザインも開発目標に掲げられた。そして、これらの目標のもと、日立の総力を結集したWooo UTシリーズの開発体制が整えられていったのだ。

 
壁掛けスタイル。壁掛けユニットの価格が角度固定型の場合で9,800円(税込)と非常に安価なのも嬉しい   賃貸住宅などで壁掛け設置が難しい場合でも、壁寄せスタンドを使うことでスッキリとレイアウトすることが可能

 
通常のテーブルトップ設置にも対応する(スタンドは同梱)。背面まで美しくデザインされているので、壁際だけでなく部屋のセンターに配置しても美観を損ねることはない   スタイリッシュなデザインのフロアスタンドも用意。薄型、かつ360°どこから見ても美しいWooo UTだから、部屋の中央に設置してもスタイリッシュに決まる

 

日立のWoooUTシリーズ開発の特徴は、日立グループ内の様々な組織から、それぞれの持つ技術を結集させた開発体制にある。開発にあたっては、 強力なトップダウンのもと、日立グループの総合力を結集し、全社を挙げての協力を取り付けた。このことからも、同社がWooo UTシリーズにかける強い意気込みが伝わってくる。

具体的には、通常のテレビの製品開発にあたるコンシューマ事業部グループ内のコンシューマエレクトロニクス研究所のみならず、デザイン本部や日立グループ内の各研究所の技術が総動員され、異例のスピードで開発が進められた。

例えば、薄さ30mm台という薄型化の実現のためには本体内に冷却ファンを搭載することができず、放熱構造の見直しが必要となる。このため、電源構成の変更や部品レイアウトの設計、放熱シミュレーションと、従来のテレビ設計を超えた技術が求められる。UTシリーズでは、大型サーバーの放熱設計を行ってきた「機械研究所」の技術を採り入れた。熱解析シミュレーションを用いることで、従来の薄型テレビとは異なるエアフロー構造が実現。薄型で省スペース、かつ背面の放熱孔も極力目立たせないという、デザイン上の課題もクリアした。

 
同社の従来品に搭載された電源基板。これだけ高さがあるとWooo UTの薄型筐体には内蔵できない   これがWooo UTシリーズの電源基板。左の従来品と比べて大幅に薄型化した。この薄型化には日立グループの様々な技術が導入された

この他にも、搭載する液晶パネルはIPSを生み出した「日立研究所」の技術を用いたもので、バックライトに新開発拡散板を搭載するなどの工夫により、従来比約1/2の厚みとすることに成功した。

 
ファンを使わず、かつ背面に大きな孔を開けることなく効率的な冷却を行うために、同社の大型サーバで培った放熱技術を応用した   パネルと蛍光管の距離を短くすると、通常は輝度ムラが生じてしまうが、Wooo UTでは新方式の拡散板の採用によってパネルと蛍光管の距離を縮めることに成功した

本体内蔵のHDDには当然のことながら日立の「中央研究所」、ソフトウェアには「システム開発研究所」、薄型設計のテレビ量産体制には「生産技術研究所」の技術が用いられている。通常は製品開発に直接関わらない研究所も含めて、開発段階から協力する体制を作り上げたことは、Wooo UTシリーズが薄型テレビの先鞭を付ける推進力となった。

コンシューマエレクトロニクス研究所単体の開発体制の枠を超えた、日立グループが持つ膨大な技術資産を、UTシリーズという開発目標の下に集結させる。目まぐるしく進化を続ける薄型テレビの開発競争のなかで、世界に先駆けて最薄部35mmという筐体のUTシリーズを世に送り出せた背景には、コンシューマ製品のみならず幅広い製品を手がけ、グループ総従業員数が約40万人にも及ぶ日立製作所の総合力があったのである。

このような開発の経緯を知ると、Wooo UT770シリーズの持つ先進性も納得できる。

最薄部35mmミリの薄型筐体に、背面まで美しいデザインを施した光沢仕上げの本体はもちろん、IPSパネルの搭載により、明るく力強い画質と広視野角も確保した。WoooステーションにはHDDを内蔵しており録画にも対応、さらにiVDR-SによるHDD増設も可能だ。

 
オプションの「プレミアム フロアスタンド」を使用するとさらにスタイリッシュなイメージなる   使いやすいリモコンも付属する

ネットワーク機能は、独自の「Wooonet」ポータルに加え、映像配信の「アクトビラ」にフル対応、しかも薄型テレビとして初めて「アクトビラ ビデオ・ダウンロード」にも対応した。もちろん、話題の「NHKオンデマンド」も利用できる。

薄型テレビのトレンドを1年先取りした日立の薄型液晶テレビ、Wooo UT770シリーズ。2009年は、先進性を活かしたさらなる快進撃に期待したい。