対応機器は、技術の仕組みは − アップル「AirPlay」について関係各社に聞いた
本日、アップルは新たなメディアストリーミング機能「AirPlay」を発表した。
同社CEOのスティーブ・ジョブズ氏は、プレゼンの中でソーシャルネットワーク機能「Ping」の説明にかなり時間を割き、AirPlayについてはほとんど説明を行わなかった。
また、日本で行われたメディア向けのハンズオンにおいても、AirPlayのデモは行われていなかった。アップルの、この機能に対する温度感はそれほど高くなさそうだ。
とは言えAVファンにとっては、AirPlayもPingに負けず劣らず重要な機能。この期待の技術について、関係各社に聞いた結果をまとめた。
■「AirPlay」には2種類ある
まず「AirPlay」とは何か簡単に説明しよう。少し分かりにくいが、AirPlayにはPC/Mac用「iTunes 10」の機能と、11月に登場予定の「iOS 4.2」に組み入れられる機能の2種類がある。
iTunes 10のAirPlayは今のところ音楽配信に特化した機能。それに対してiOS 4.2のAirPlayは、iPadやiPhone、iPod touch内の動画や音声、写真などを、9月に北米で発売される新「Apple TV」にストリーミング配信し、Apple TVを通して再生する機能だ。
PC/Mac用「iTunes 10」のAirPlayと「iOS 4.2」のAirPlayは、同一名称なのに機能が異なる。これでは話が混乱してしまうので、ここからは特に断りが無い限り、PC/MacのAirPlayを指すものと考えて欲しい。※9/10追記:この記事は記事掲載時点の情報をもとに執筆しています。今後、PC/Mac版のiTunesなどから、音楽以外のデータを配信できるようになる可能性があります。 ※11/12追記:iTunes 10.1から音楽だけでなく動画の配信も可能になりました。
■音楽データを非圧縮伝送。iPhoneなどでコントロール可能
AirPlayは、これまでアップルが「AirTunes」と呼んでいた機能とほぼ同等のもの。iTunesをサーバーにして、音楽データをネットワーク経由で配信する機能だ。AirTunesの場合、iTunesの右下にスピーカーを選択するメニューが現れ、かんたんに音声出力先を切り替えることができた。AirPlayでもこのインターフェースを継承している。
これまでAirTunesに対応していた製品はアップルの「AirMac Express」だけだった。iTunes 10のAirPlayでは、この機能が、他社製のスピーカーやAVアンプなど機器単体で利用可能になる。
またAirPlayでは、再生中の楽曲の情報も配信することが可能。曲名、アーティスト名、アルバム名、経過時間と残り時間、アルバムのアートワークを、AirPlay対応機器で表示することができる。
なおAirPlayの操作には、iPhone/iPod touchの「Remote」アプリが使用できる。再生や一時停止だけでなく、スキップやリピートなども行える。またAirPlayを利用する各デバイスの音量は、すべてiTunesからコントロールすることができる。
さらに、iTunesにはもともと、複数スピーカーをコントロールする機能が備わっている。たとえば各部屋に置いたAirPlay対応機器に、楽曲を一箇所から集中して配信するなどということもできそうだ。
音質も申し分ない。ハンズオン会場のアップル説明員に聞いたところ、AirPlayもAirTunesと同様、非圧縮で音楽データを伝送できるという。
技術面の詳細は明らかにされていないが、アップル説明員によると「既存のオープンな技術で作られた規格ではない」とのことで、DLNAやUPnPとは互換性がないようだ。この点は、DLNAをベースにした、Windows 7のWindows Media Playerにおける「リモート再生」とは全く異なる。
いずれにせよAirPlayはアップルがライセンスを管理しており、ライセンスを取得したメーカーしか対応機器を製造できない仕組みになっているようだ。
■既に「AirPlay」対応機器は存在するのか
さて、このAirPlay。読者のみなさんが関心があるのは、対応機器はあるのか、あるとしたらどの機器で利用できるかという点だろう。
まずアップルの同機能の紹介ページには、「主なパートナー」として、デノン、マランツ、B&W、JBL、iHomeの各ブランドロゴが表示されている。また、同じページにはB&WのZeppelinやデノンのAVアンプの姿も見える。
またアップルのニュースリリースには、「AirPlayでは、さらに新しくAirMac Expressが無くてもBowers & Wilkins、JBL、Denon、iHome等の各社から発売されている外部スピーカー、レシーバー、ステレオシステムを介しても利用できるようになりました」とある。これを読む限り、すでに対応機器が存在するように捉えられる。
早速アップル広報部に問い合わせてみたが、「iTunesのウェブページと、ニュースリリース以上の情報はない。対応機器がすでに発売されているかも含め、詳細は回答できない」という。
それではと、名前が挙げられているメーカーに直接聞いてみた。まずAVアンプの写真が掲載されていたデノンからは、「現時点では対応機器はない」とのコメントが得られた。
マランツには、マランツとB&W、両ブランドの対応機器について尋ねたが、「情報が無いのでコメントできない」との返答だった。
JBLについては、ハーマンインターナショナルジャパンに確認。「我々も今日知った。現時点で情報が来ていないということは、現在開発中ということと考えられる」という返事だった。
これらの結果から、現段階では、少なくともiHOME以外のメーカーから、AirPlay対応機器が国内で販売されている可能性は低い。
だがアップルも、対応予定がない製品の写真を、機能紹介ページに掲載することはしないだろう。近いうちに対応機器の発表、あるいはアップデートでの対応などが行われるものと予想される。
当たり前のことだが、今後アップルでは、同機能のパートナーメーカーを広く募り、対応機器のラインナップを拡大させていく意向を持っているという。
記者自身もAirTunesを長年使って、その利便性を日々実感している一人だ。この機能が他メーカーにも開放されたことは素直に歓迎したい。対応メーカーや機器が早期に登場し、拡大することを期待している。
同社CEOのスティーブ・ジョブズ氏は、プレゼンの中でソーシャルネットワーク機能「Ping」の説明にかなり時間を割き、AirPlayについてはほとんど説明を行わなかった。
また、日本で行われたメディア向けのハンズオンにおいても、AirPlayのデモは行われていなかった。アップルの、この機能に対する温度感はそれほど高くなさそうだ。
とは言えAVファンにとっては、AirPlayもPingに負けず劣らず重要な機能。この期待の技術について、関係各社に聞いた結果をまとめた。
■「AirPlay」には2種類ある
まず「AirPlay」とは何か簡単に説明しよう。少し分かりにくいが、AirPlayにはPC/Mac用「iTunes 10」の機能と、11月に登場予定の「iOS 4.2」に組み入れられる機能の2種類がある。
iTunes 10のAirPlayは今のところ音楽配信に特化した機能。それに対してiOS 4.2のAirPlayは、iPadやiPhone、iPod touch内の動画や音声、写真などを、9月に北米で発売される新「Apple TV」にストリーミング配信し、Apple TVを通して再生する機能だ。
PC/Mac用「iTunes 10」のAirPlayと「iOS 4.2」のAirPlayは、同一名称なのに機能が異なる。これでは話が混乱してしまうので、ここからは特に断りが無い限り、PC/MacのAirPlayを指すものと考えて欲しい。※9/10追記:この記事は記事掲載時点の情報をもとに執筆しています。今後、PC/Mac版のiTunesなどから、音楽以外のデータを配信できるようになる可能性があります。 ※11/12追記:iTunes 10.1から音楽だけでなく動画の配信も可能になりました。
■音楽データを非圧縮伝送。iPhoneなどでコントロール可能
AirPlayは、これまでアップルが「AirTunes」と呼んでいた機能とほぼ同等のもの。iTunesをサーバーにして、音楽データをネットワーク経由で配信する機能だ。AirTunesの場合、iTunesの右下にスピーカーを選択するメニューが現れ、かんたんに音声出力先を切り替えることができた。AirPlayでもこのインターフェースを継承している。
これまでAirTunesに対応していた製品はアップルの「AirMac Express」だけだった。iTunes 10のAirPlayでは、この機能が、他社製のスピーカーやAVアンプなど機器単体で利用可能になる。
またAirPlayでは、再生中の楽曲の情報も配信することが可能。曲名、アーティスト名、アルバム名、経過時間と残り時間、アルバムのアートワークを、AirPlay対応機器で表示することができる。
なおAirPlayの操作には、iPhone/iPod touchの「Remote」アプリが使用できる。再生や一時停止だけでなく、スキップやリピートなども行える。またAirPlayを利用する各デバイスの音量は、すべてiTunesからコントロールすることができる。
さらに、iTunesにはもともと、複数スピーカーをコントロールする機能が備わっている。たとえば各部屋に置いたAirPlay対応機器に、楽曲を一箇所から集中して配信するなどということもできそうだ。
音質も申し分ない。ハンズオン会場のアップル説明員に聞いたところ、AirPlayもAirTunesと同様、非圧縮で音楽データを伝送できるという。
技術面の詳細は明らかにされていないが、アップル説明員によると「既存のオープンな技術で作られた規格ではない」とのことで、DLNAやUPnPとは互換性がないようだ。この点は、DLNAをベースにした、Windows 7のWindows Media Playerにおける「リモート再生」とは全く異なる。
いずれにせよAirPlayはアップルがライセンスを管理しており、ライセンスを取得したメーカーしか対応機器を製造できない仕組みになっているようだ。
■既に「AirPlay」対応機器は存在するのか
さて、このAirPlay。読者のみなさんが関心があるのは、対応機器はあるのか、あるとしたらどの機器で利用できるかという点だろう。
まずアップルの同機能の紹介ページには、「主なパートナー」として、デノン、マランツ、B&W、JBL、iHomeの各ブランドロゴが表示されている。また、同じページにはB&WのZeppelinやデノンのAVアンプの姿も見える。
またアップルのニュースリリースには、「AirPlayでは、さらに新しくAirMac Expressが無くてもBowers & Wilkins、JBL、Denon、iHome等の各社から発売されている外部スピーカー、レシーバー、ステレオシステムを介しても利用できるようになりました」とある。これを読む限り、すでに対応機器が存在するように捉えられる。
早速アップル広報部に問い合わせてみたが、「iTunesのウェブページと、ニュースリリース以上の情報はない。対応機器がすでに発売されているかも含め、詳細は回答できない」という。
それではと、名前が挙げられているメーカーに直接聞いてみた。まずAVアンプの写真が掲載されていたデノンからは、「現時点では対応機器はない」とのコメントが得られた。
マランツには、マランツとB&W、両ブランドの対応機器について尋ねたが、「情報が無いのでコメントできない」との返答だった。
JBLについては、ハーマンインターナショナルジャパンに確認。「我々も今日知った。現時点で情報が来ていないということは、現在開発中ということと考えられる」という返事だった。
これらの結果から、現段階では、少なくともiHOME以外のメーカーから、AirPlay対応機器が国内で販売されている可能性は低い。
だがアップルも、対応予定がない製品の写真を、機能紹介ページに掲載することはしないだろう。近いうちに対応機器の発表、あるいはアップデートでの対応などが行われるものと予想される。
当たり前のことだが、今後アップルでは、同機能のパートナーメーカーを広く募り、対応機器のラインナップを拡大させていく意向を持っているという。
記者自身もAirTunesを長年使って、その利便性を日々実感している一人だ。この機能が他メーカーにも開放されたことは素直に歓迎したい。対応メーカーや機器が早期に登場し、拡大することを期待している。