佐藤良平が見たオーディオテクニカ2010年秋冬モデル − サラウンドヘッドホン&ATH-CKM99に注目!
毎秋恒例となっているオーディオテクニカの新製品発表会が、2010年10月7日に東京文京区湯島のテクニカハウスで行われた。業界の注目度は高く、会場に入りきれないほどの参加者が詰めかけた。
会の進行は例年以上にショウアップされたもので、新製品を身につけたモデルによるデモンストレーションや会場でのDJプレイが出席者の目を引きつける。後半では昨年から広告のイメージキャラクターを務めている女性ボーカリストBoAさんや、同社の公式サイトでウェブコミックを連載中のタイ人マンガ家のウィスット・ポンニミットさん(通称タムさん。「コミックIKKI」に連載して先ごろ完結した『ブランコ』が面白い!)が登場するサプライズもあり、会場は例年にもまして華やかな雰囲気に包まれた。
新製品のラインナップはイヤホンとヘッドホンが中心で、双方合せて16機種、カラーバリエーションを合わせると合計34モデルもの新型機が紹介された。依然として景況が大きく改善しない中でこれだけの弾をまとめ撃ちするのは並大抵のことではなく、市場をリードするメーカーとしての自負が窺える。同社とヘッドホンのシェアを分け合う大手ソニーが数年ぶりとなる大規模な新製品攻勢をかけつつあるが、テクニカは昨年から続いている勢いに今回発表の新製品を加え、見応えのある戦いを展開してくれそうで心強い。
筆者が注目するモデルは、何といってもデジタルワイヤレスヘッドホンシステム ATH-DWL5500(11月19日発売、オープン価格)だ。これは先代DWL5000(120,750円)の機能を維持しつつ価格を下げる狙いの製品で、半額以下の5万円前後という衝撃的な値付けで売り出される。DWL5500は機能面だけでなく価格面でも最強のサラウンドヘッドホンだったが、本機は音質面で後退することなく買いやすさを打ち出した。
機能面では新たに7.1chサラウンド音声とドルビープロロジックIIxに対応したのが大きな特長だ。先代が装備した24bit伝送は省かれたが、CDスペックまでの非圧縮信号をそのまま楽しむぶんには問題ない。付属ヘッドホン本体の仕様はDWL5000と殆ど変らず、テクニカのオープンエア型でトップから2番目の通常型ヘッドホンATH-AD1000を原型とし、真剣な音楽鑑賞にも充分使える。「将来ヘッドホンの大多数はワイヤレスになる」というのが持論であるにもかかわらず、筆者は今まで日常的にワイヤレス・ヘッドホンを使ったことがなかった。このDWL5500は手元に置いて常用するワイヤレス機の第一号になると思う。
イヤホンの新製品では今回発表された中で最もランクが高いATH-CKM99(11月19日発売、21,000円)が気に入った。キメの細かさと押し出しの強さを両立した、バランスの良いモデルだ。チタニウム切削+ステンレスのハイブリッドメタルハウジングを採用して不要な振動を抑えた。筐体は非常に軽く、装着していてもストレスが少ない。密閉性が高いため、周囲から来る雑音に強いのもメリットだ。
このモデルに限った話ではないが、ニューモデルを一渡り聴いてみて印象深いのは「テクニカが作るイヤホンの上手さ」である。常に価格を上回る満足感をリスナーに与え、音楽を楽しく聴かせる製品作りは貴重であり、一貫したポリシーを感じさせる。
ウッド製ハウジングの限定モデルが発表されないのは意外だったが、ATH-W5000(製品レビュー)とATH-W1000X(製品レビュー)の2機種が現行製品として生きているので、まず順当といったところだ。同様に新型が出なかった小型アクティブ・スピーカーも現行モデルで充分という判断だろう。
今回発表されたヘッドホンやイヤホンに低価格帯の製品が多いのは経済状況の反映と思われるが、高級機を押し出すソニーと棲み分けができそうな感触も得た。昨年に比べて今年のヘッドホン業界はさすがに落ち着いた感があるものの、今月末のヘッドホン祭りに照準を合せた各社の動きもあいまって、さらなる活性化が期待できる。テクニカとソニーの二強に加えて他メーカーがどう出るのか、この年末にかけて興味は尽きない。
(佐藤良平)
会の進行は例年以上にショウアップされたもので、新製品を身につけたモデルによるデモンストレーションや会場でのDJプレイが出席者の目を引きつける。後半では昨年から広告のイメージキャラクターを務めている女性ボーカリストBoAさんや、同社の公式サイトでウェブコミックを連載中のタイ人マンガ家のウィスット・ポンニミットさん(通称タムさん。「コミックIKKI」に連載して先ごろ完結した『ブランコ』が面白い!)が登場するサプライズもあり、会場は例年にもまして華やかな雰囲気に包まれた。
新製品のラインナップはイヤホンとヘッドホンが中心で、双方合せて16機種、カラーバリエーションを合わせると合計34モデルもの新型機が紹介された。依然として景況が大きく改善しない中でこれだけの弾をまとめ撃ちするのは並大抵のことではなく、市場をリードするメーカーとしての自負が窺える。同社とヘッドホンのシェアを分け合う大手ソニーが数年ぶりとなる大規模な新製品攻勢をかけつつあるが、テクニカは昨年から続いている勢いに今回発表の新製品を加え、見応えのある戦いを展開してくれそうで心強い。
筆者が注目するモデルは、何といってもデジタルワイヤレスヘッドホンシステム ATH-DWL5500(11月19日発売、オープン価格)だ。これは先代DWL5000(120,750円)の機能を維持しつつ価格を下げる狙いの製品で、半額以下の5万円前後という衝撃的な値付けで売り出される。DWL5500は機能面だけでなく価格面でも最強のサラウンドヘッドホンだったが、本機は音質面で後退することなく買いやすさを打ち出した。
機能面では新たに7.1chサラウンド音声とドルビープロロジックIIxに対応したのが大きな特長だ。先代が装備した24bit伝送は省かれたが、CDスペックまでの非圧縮信号をそのまま楽しむぶんには問題ない。付属ヘッドホン本体の仕様はDWL5000と殆ど変らず、テクニカのオープンエア型でトップから2番目の通常型ヘッドホンATH-AD1000を原型とし、真剣な音楽鑑賞にも充分使える。「将来ヘッドホンの大多数はワイヤレスになる」というのが持論であるにもかかわらず、筆者は今まで日常的にワイヤレス・ヘッドホンを使ったことがなかった。このDWL5500は手元に置いて常用するワイヤレス機の第一号になると思う。
イヤホンの新製品では今回発表された中で最もランクが高いATH-CKM99(11月19日発売、21,000円)が気に入った。キメの細かさと押し出しの強さを両立した、バランスの良いモデルだ。チタニウム切削+ステンレスのハイブリッドメタルハウジングを採用して不要な振動を抑えた。筐体は非常に軽く、装着していてもストレスが少ない。密閉性が高いため、周囲から来る雑音に強いのもメリットだ。
このモデルに限った話ではないが、ニューモデルを一渡り聴いてみて印象深いのは「テクニカが作るイヤホンの上手さ」である。常に価格を上回る満足感をリスナーに与え、音楽を楽しく聴かせる製品作りは貴重であり、一貫したポリシーを感じさせる。
ウッド製ハウジングの限定モデルが発表されないのは意外だったが、ATH-W5000(製品レビュー)とATH-W1000X(製品レビュー)の2機種が現行製品として生きているので、まず順当といったところだ。同様に新型が出なかった小型アクティブ・スピーカーも現行モデルで充分という判断だろう。
今回発表されたヘッドホンやイヤホンに低価格帯の製品が多いのは経済状況の反映と思われるが、高級機を押し出すソニーと棲み分けができそうな感触も得た。昨年に比べて今年のヘッドホン業界はさすがに落ち着いた感があるものの、今月末のヘッドホン祭りに照準を合せた各社の動きもあいまって、さらなる活性化が期待できる。テクニカとソニーの二強に加えて他メーカーがどう出るのか、この年末にかけて興味は尽きない。
(佐藤良平)