Suaraさんが語る「Pure2」ここが聴きどころ! − F.I.X. RECORDS「Pure2」制作現場レポート(3)
Shuntaroさんが語る「ジャズアレンジが生まれるまで」
インタビュー編の最後であるが、『Pure2』のジャズアレンジを橋本さんとともに担当され、ピアノ演奏の入っている楽曲をすべて担当されたShuntaroさんにも単独でお話を伺ったので、その内容についてもお届けしたい。
− 今回のセッションにおいてShuntaroさんは重要なポジションにいらっしゃると思うのですが、演奏のご担当以外に、どういった役割をなさっていたのかも教えてください。
Shuntaroさん(以下、敬称略):デモテープを皆に送って、橋本さんから受け取ったイメージを各メンバーに伝えるのが自分の役目でしたね。コンセプトや方向性をきちんと認識してもらった上でレコーディングに入っているんです。
− デモテープ作りから実際のアレンジの流れについてを教えていただけますか。
Shuntaro:橋本さんが先に作ってくれた「キミガタメ」と「トモシビ」のワンコーラス分を一緒に聴きながら今回のアルバムのコンセプトを聞いて、“それはとても良いんじゃない!”って話をしましたね。ジャズでも色々あるじゃないですか。ピアノトリオとかビッグバンド的な大きい編成のものとか。そうしたもののなかで、日本ではなかなかお目にかかれないジャズをやろうと決めたんです。編成的にトランペットやフルート、ビブラフォンといったメインを張る楽器なども考えて、そうした楽器を使ったジャズを参考資料として聴きながらデモテープを作っていきましたね。
− 橋本さんも事前に500枚聴き込まれたと仰っていましたね。
Shuntaro:とにかく聴きまくって引き出しを作って吐き出す、という作業でしたね。ジャズが嫌いになりそうでしたよ(笑)。ただのパクリじゃない、肉付けができるようになるまで聴く。そして面白いところだけ記憶に残しておくんです。“キメ”、“リズムパターン”、“リズム楽器構成”が面白いとか。それが溜まってきた段階で、パズルのように今回用意された楽曲へはめ込んでいくという感じでしょうか。
− 楽曲もそれぞれどのように決めていったんですか?
Shuntaro:曲の匂いは消さないで欲しい、切ないのに明るい雰囲気にしてしまうといったアレンジは止めて欲しいという最低限の条件をいただきつつ、あとは自由にやらせていただきました。
− まずその原曲になるベースのものも理解しつつ、ということですね。
Shuntaro:方向性を橋本さんと二人で確認しつつデモテープを作って、一発録りとか、録音方法についても橋本さんと事前に話し合いをしました。しかしアナログの音は素晴らしいですよ。較べてはいけないけど、デジタルの音は貧弱というのがありありと感じ取れますよ。
− クリック(レコーディング演奏時のガイドとなる一定テンポのリズム音)の有り無しについては?
Shuntaro:あまり深く考えていなかったですよ。現場で決めましょうと。でもクリックのあるものとないもの、二個聞いてみて良いほうを選ぶという単純なものですね。それの流れでヘッドホンモニターもなくしてみたらどうだろうという流れでした。
− ヘッドホンなしでの録音は現代のレコーディングにおいては貴重な体験ですよね。
Shuntaro:本当にね。最後にヘッドホンなしのテイクを聴いたら明らかにリアリティがあって、立体感も増えるんですよ。ヘッドホンを付けていると、自分の演奏が間違えていないかどうかに神経が行きがちですが、ヘッドホンがないと耳や脳を周りの人に集中させないといけないから、自分のことを考えている余裕がない。だからこそ、素の自分がそのまま出るんでしょう。テクニカルじゃなくて自然で聴きやすいものにバッと変わるんですよ。
− これまでのお仕事の中で音質にフィーチャーしたセッションはありましたか?
Shuntaro:ありませんね。良い音で録りたいという思いは皆持っていますが、今のご時世、そこを目指して音楽を作るのはなかなか難しいことです。J-POPは特に。「ダリ」は音が素晴らしくて、内側から良いフレーズ、プレイが引き出されるような感じがしましたね。
− 確かにすごいグルーヴを感じましたし、どんどんアドリブも出てきますよね。
Shuntaro:演奏している側も楽しいですからね。聴いていても楽しいと思いますよ。こういう面子でライブをやるっていたら、見たいと思うはずですよ。だから『Pure2』が音楽の再スタートのきっかけになれば最高ですよね。
− ありがとうございました。
編集部からプレゼントのお知らせ
Suaraさんからのメッセージが入った「Pure2 − Ultimate Cool Japan Jazz − 」をファイル・ウェブ読者3名様に特別プレゼントします!下記フォームから奮ってご応募ください。2011年6月15日(水)12時まで受付致します。多数のご応募お待ちしております!
※受付は締め切りとなりました。多数のご応募有り難うございました!
【筆者紹介】
岩井 喬:1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。