”ちょっとした工夫+α”でOK!低予算からのオーディオ音質向上術(1)試聴環境を見直そう
(1)まず「予算ゼロ」からスタート。
~身近なものを使ってルームチューン(音場調整)やセッティングを改善する方法
予算ゼロでもできることは、まず設置の見直しと室内音響から……。スピーカーを壁から離すとか、キチンと左右の真ん中で聴いているかなど、基本的なところをチェックするだけでも気構えが違ってくる。もちろん、部屋を片付けておくことは大前提だ。
次に音を大きく変える要因が「室内音響」。本格的なルームチューンとなるとそれなりの資金が必要だが、部屋の隅にグッズをおいて響きを調整するくらいなら創意工夫で何とかなるもの。古くから雑誌や座布団、タオル、ビンなどを使い、響きをコントロールすることは行われてきた。そんな先人の知恵を拝借しよう。
例えば座布団をスピーカーの後ろにおいて音のこもりとってみたり、響き過ぎる部屋ならカーテンやカーペットがとても有効。窓に断熱フィルムを貼って音がよくなることもあるのだ(反射が抑えられる)。
これらの方法については、次回詳しく解説していこう。
(2)安くて高品位なアクセサリーを使う
オーディオ専用のアクセサリーは高いというイメージがあるかも知れないが、安くてもクオリティの高い製品は多い。まずは3,000円代のアイテムをピックアップしてご紹介しよう。
*クライナ 吸音材 Watayuki ¥3,150(税込)

KRYNA Watayuki
*サンシャイン 超薄型制振シート A-30 ¥3,000(税込)
※サイズ違いのラインナップも有り(全6種類)
機器の振動によって音が汚れるのはオーディオの常識だが、スピーカーを他のコンポと離すなど、設置の工夫だけでは解決が難しい。それを救済するのがこの超薄型制振シート。これは鉄をベースに亜鉛、アルミを混ぜた金属で、樹脂系の制振材をサンドイッチしたもの。わずか0.6ミリの極薄ながら効果は驚くほどだ。ラックの棚などに敷いてコンポを乗せるといった使い方がオススメで、S/Nがぐっと上がり余分な付帯音がなくなる。声や楽器のヌケがよくなり、気持ちよいほどのクリアさが得られる。サイズによってラインナップが分けられていて、小さな「A-30」(395×295)が3,000円ぽっきり。中型の「A-40」(445×350)が3,500円だ。
安くても高機能・ユニークなアクセサリー
ほんの少し予算を加えれば、面白くて高機能なアクセサリーもある。布タイプの音場調整材や耐震も兼ねたチューニングベルトなど紹介しよう。
*アールアール 音場調整用オーガンジー ¥3,780(1枚・税込)
その名も「オーガンジー」だ。大型の「やままゆ」からとった生地で、繊維が強くハリがあるのが特徴。このハリが音のエネルギーを波消しブロックのように調整して、バランスよく吸音・拡散するという。
畳一枚ほどの広さがあり、色はベージュと黒の2タイプ。透けてみえるナチュラルな質感だ。これを部屋に吊るすだけでOK。すっとキツさがおさまる。ボーカルがよく通り、きれいに広がって開放感たっぷりなサウンド。一般の吸音材のように音痩せしないのがポイントだ。カーテン代わりに使ったり、壁や天井に張りつけてもよく、和風のテイストで落ちつける。ホーンスピーカーに丸めて入れるのも、刺激を和らげるのに効果的だ。オーガンジー4枚重ねで、スピーカーユニットにすっぽり被せるタイプ(3,780円/1枚)もあり、こちらは自作派におすすめ。
*サウンドステージ ケーブルスタビライザー CB-L1 ¥3,990(税込)

サウンドステージ CB-L1
*ティグロン チューニングベルト TB-15W ¥4,935(税込)
地震大国・日本で、なぜこれまでになかったのか、というアイテムだ。平たく言えばスピーカーをスタンドに、アンプやプレーヤーをラックにしっかりと縛りつけるオーディオ用ベルト。土台と一体化させることで、音のチューニング効果と落下防止の一石二鳥をねらったものだ。しなやかで厚手のベルトだから機器を傷つけることもない。
大地から根が生えたような感じのサウンドだ。重心がビシっときまり、低音が締まってスピード感が高まる。音の濁りが消えて振動に埋もれていた音が次々に現れ、ワンランク上の表現力となる。
次回は、身近なものを使って試聴環境を改善する方法について詳しく解説しよう。
<筆者紹介>
林 正儀 Masanori Hayashi
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。