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方式によってどう違う?

【海上忍のAV注目キーワード辞典】第16回:ノイズキャンセリング − ノイキャンの“これまで”と“これから”

公開日 2012/12/17 16:51 海上 忍
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【第16回:ノイズキャンセリング】

■ノイズキャンセリングの基本的なしくみ

「ノイズキャンセリング」とは、文字どおり雑音を除去/軽減する機構のこと。ヘッドホンやヘッドセットに搭載され、ドライバーユニットが発する以外の音を打ち消す働きを持つ。地下鉄のトンネル内や航空機内などの騒々しい場所でも、走行音や周囲の話し声など雑音を軽減し、音楽だけを楽しませてくれる。オーディオファイルには「NC」や「ノイキャン」と短縮して呼ばれる、現在では相応の認知度を誇る技術だ。

このノイズキャンセリング、そもそもは航空機のパイロットの耳を保護するために考え出されたもの。パイロットは高レベルの騒音に長時間晒されるため、外部の音を遮断することが望ましいが、耳栓では管制塔など外部とコミュニケーションを図ることが難しくなる。密閉型ヘッドホンでは、通信相手の声は聞き取りやすいが外部の音は聞こえにくく、オープンエア型ヘッドホンでは、外部の音は聞きやすいが通信相手の声は聞き取りにくい。ノイズキャンセリングヘッドホンならば、この状況を一石二鳥で解決できるというわけだ。

現在、ノイズキャンセリングヘッドホンはBOSEやソニーなど多くのメーカーが手がけているが、誕生から20年という期間を考慮すれば比較的若い技術といえる。そのぶん改良の余地は大きく、スマートフォンの普及による需要増加という追い風もあり、今後登場するであろう新製品に期待できるジャンルなのだ。

ボーズのNCヘッドホン「QuietComfort 15 Acoustic Noise Cancelling headphones」(限定色モデル)

■音を打ち消すいくつかの方式

ノイズキャンセリングの鍵は「逆位相」にある。耳もと近くに取り付けたマイクでノイズを拾い、その音とは位相が正反対の音を発生させれば、互いを打ち消し合い結果的にノイズが減る、という考え方がその出発点だ。そのため、ヘッドホンには通常のドライバーユニットのほかに、ノイズを拾うための集音マイク、ノイズを増幅するためのアンプが必要になる。ノイズキャンセリングヘッドホンが電源を別途必要とするのは、これが理由だ。

その方式は、逆位相の信号を電気的に発生させノイズを打ち消す「アクティブ方式」と、ハウジングの遮音性を高めるなどして受動的な消音効果を狙う「パッシブ方式」の2種類に大別できる。より高いノイズ低減効果が得られることから、現在はアクティブ方式が主流となっている。

アクティブ方式の実装にもいくつかの種類があり、なかでもフィードバック式とフィードフォワード式が知られている。

フィードバック式は、耳元に近い位置に集音マイクが設置されるため、精度の高いノイズキャンセリング効果が得られる。耳元に近いぶん小型化には制約があり、音質にも影響があるとされる。一方フィードフォワード式は、ハウジングの外側に集音マイクを設置する。そのため小型化しやすく、音質への影響も少なくすむが、耳元から離れるぶん消音性能ではフィードバック式に譲る。

両者の長所をうまく組み合わせた製品も登場している。たとえば、ソニーが2012年秋に発売した「MDR-1RNC」(関連ニュース)は、フラッグシップモデルのMDR-1Rにノイズキャンセリング機能を追加。ハウジングの内側と外側に集音用センサーを搭載する「デュアルデジタルノイズセンサーテクノロジー」は、フィードバック式とフィードフォワード式を統合した技術であり、約99.7%という高いノイズ低減性能を実現した。このデュアル方式はノイズ低減効果が大きく、各メーカーから同様のコンセプトを採用した製品が投入されているところだ。

ソニー「MDR-1RNC」

■ノイズキャンセリング機能のこれから

ノイズキャンセリングヘッドホンのノイズ低減率は、およそ20〜25dB程度とされ、低反発ポリウレタン耳栓の40dB前後という値には及ばない。フィードバック式とフィードフォワード式を併用した製品の登場により、ノイズ低減性能は大幅に向上したが、逆位相の信号で打ち消すという仕組みは低音域には効果的なものの、高音域のノイズ低減効果を得意としない。

ノイズが低減される結果、アンプの出力するヒスノイズが目立ってしまうこともあるなど、アクティブ型ならではの課題も残る。音質を維持・向上させつつノイズ低減効率の改善を図ることは、オーディオ機器である以上避けては通れない。

デジタル方式の場合、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)がノイズの分析から音を打ち消すまでの処理を担うため、どうしても補助電力を必要とする。各メーカーは、ハウジング近くや小型コントロールボックスにバッテリーを格納するなどしてその要求に応えているが、エンドユーザはそのような事情など考慮しない。ソニーの「XBA-NC85D」(関連記事)などといったボックスレス型製品も登場しているが、より「普通のヘッドホン/イヤホン」に近づけるべく、さらなる小型化/一体化の試みが続くはずだ。

世界初のボックスレス型デジタルNCイヤホン「XBA-NC85D」

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