状況証拠は揃った? アップルのハイレゾ対応は間もなくか
状況証拠が徐々に揃ってきたように思える。様々な情報を総合すると、iOSの純正環境でハイレゾ再生を行えるようになる可能性が高まってきた。
まだくわしい内容や時期などを語る段階ではないが、いずれにしても最近の新製品の動向を見る限り、アップルがハイレゾ対応に足を踏み出すという、長年の噂が現実味を帯びてきた。
◇
その根拠として挙げたいのが、フィリップスが発表した、世界初のLightning端子搭載ヘッドホン「M2L」(関連ニュース)だ。本体の片側ハウジングから飛び出たケーブルは、先端がLightning端子となっている。同端子搭載のiPhoneなどiOS端末と直結でき、iOS端末内のデジタル音声をヘッドホン内部でD/A変換、増幅・再生するという画期的なヘッドホンだ。また、それだけでなくM2Lは「ハイレゾ対応」を謳っているのも見逃せないポイントだ。
もともと、Lightning端子搭載ヘッドホンというアイデアは、アップルが今年6月の開発者向け会議「WWDC」にて発表していたもの。iTunes Radioなどの操作をより快適に行えるようになるほか、ヘッドホンの各種機能をアプリで操作することができるといった利点がアピールされていた。その時点では言及されなかったものの、Lightning端子を使えばハイレゾ音声をデジタル出力できるという利点もある。
たとえばラディウスのポタアン「AL-LCH21」は、LightningケーブルをiPhoneやiPadに挿し、最高96kHz/16ビットのハイレゾ音源を入力・D/A変換してアナログ出力することができる。アンプ部がヘッドホンに入っているか入っていないかの違いだけで、同じようなソリューションはすでに存在するのだ。
一つ付け加えておくと、WWDC直前の5月末、アップルはBeats Electronicsを30億ドルで買収した。こういった事実があっただけに、はじめてのLightning端子搭載ヘッドホンはBeatsから発表されるという見方が多く、フィリップスが世界で始めて発表したことに対して驚きの声が多く上がった。
もちろん、フィリップスがフライングして発表したわけはない。フィリップスは“Fidelio”「X2」など、多彩な新製品群をIFAのオープニングにあわせて発表したが、M2Lはその際、同時に発表されず、会期終了後にひっそりとプレスリリースを出すにとどまった。
Lightning搭載ヘッドホンは世界初である。本来であれば、この時期最も注目の集まるIFAで発表を行いたかったはずだ。その機会をあえてスルーし、新iPhone発表後に今回の新製品の発表を行ったということは、アップルとフィリップスのあいだで、解禁タイミングについてあらかじめ同意があったと考えるのが自然だ。さらにいうとM2Lは、Made for iPhoneなどの、いわゆる「MFi」認証も、もちろん取得している。
そして、注目していただきたいのはM2Lのリリースタイトルだ。原文はドイツ語だが、英訳すると「Philips Fidelio M2L earphones with Lightning connector provides high-definition sound quality for the mobile operating system iOS 8」となる。これをさらに日本語に翻訳すると、「Lightning端子を搭載したPhilipsの“M2L”イヤホンが、モバイルOS『iOS 8』にハイディフィニション・サウンドクオリティーを提供する」となる。これはかなり決定的だと思うのだが、いかがだろうか。
なお、IFA開催にあわせてソニーは、同じくハイレゾ対応DAC内蔵のヘッドホン「MDR-1ADAC」を発表した。ただしこのモデルは、単にUSB入力端子を備えているだけの製品だ。Lightningアダプターを経由し、USB端子からiOS端末内のデジタル音声を入力することもできるが、あくまでXperiaやPCなど、多岐にわたる対応機器のうちの一つという位置づけだ。逆に言えば、だからこそIFA開催にあわせて発表できたのだろう。
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「M2L」はDACを内蔵し、24ビットの音声をD/A変換して再生することができるというのだが、それでは、その24ビット音声をいったいどうやって再生するのか。
ご承知の通り、これまではiOS標準の「ミュージック」アプリでハイレゾ音源を再生することはできなかった。厳密に言うと、48kHz/24ビット音源までは、iTunesからの同期や「ミュージック」アプリでの再生などが行えた(注)が、それよりサンプリングレートが上がり、48kHz/24ビットを超える音源になると、転送時にエラーが出てしまい、iTunesとの同期自体が行えなかった。
もちろん、iTunesの「アプリ」タブから、HF Playerなどのサードパーティー製アプリへファイルをドラッグ&ドロップで転送すれば、96/24や192/24などの再生・出力を行うことはできる。ただし、せっかくMFi認証取得済みのLightning搭載ヘッドホンが発表され、そのモデルがハイレゾ対応するとアナウンスしている状況で、再生を他社製アプリにまかせるということは、これまでのアップルの行動パターンから考えて可能性は低い。
アップルがこの時期に「Lightning直結ヘッドホン」というソリューションを発表し、それを体現した商品にMFi認証を与えていること、さらにはそのヘッドホンがハイレゾ対応を謳っていることも加味すると、近い将来に「ミュージック」アプリでのハイレゾ対応が拡充され、それがLightning端子から出力できるようになる、と考えるのが自然に思える。
もちろんすべては憶測の域を出ないし、状況証拠ばかりで確証に乏しいことはわかっているが、前述の通り、M2Lのリリースタイトルは「iOS 8にハイディフィニション・サウンドクオリティーを提供する」である。これは期待も高まるというものだ。
おそらくアップルはこの秋、新iPadなどの発表会をもう一度開催するはず。何か動きがあるとすればそのときだろう。M2Lが発売される12月までに、何らかのポジティブな発表があることを期待したい。
(注)日本オーディオ協会の定義では、CD/DATレベルを超える音源はすべてハイレゾマーク適用範囲としており、たとえば48kHz/24ビットの音源は「ハイレゾ」として認められる。この定義を適用するのであれば、現在のiPhoneやiTunesもハイレゾ対応を果たしていることになる。
まだくわしい内容や時期などを語る段階ではないが、いずれにしても最近の新製品の動向を見る限り、アップルがハイレゾ対応に足を踏み出すという、長年の噂が現実味を帯びてきた。
その根拠として挙げたいのが、フィリップスが発表した、世界初のLightning端子搭載ヘッドホン「M2L」(関連ニュース)だ。本体の片側ハウジングから飛び出たケーブルは、先端がLightning端子となっている。同端子搭載のiPhoneなどiOS端末と直結でき、iOS端末内のデジタル音声をヘッドホン内部でD/A変換、増幅・再生するという画期的なヘッドホンだ。また、それだけでなくM2Lは「ハイレゾ対応」を謳っているのも見逃せないポイントだ。
もともと、Lightning端子搭載ヘッドホンというアイデアは、アップルが今年6月の開発者向け会議「WWDC」にて発表していたもの。iTunes Radioなどの操作をより快適に行えるようになるほか、ヘッドホンの各種機能をアプリで操作することができるといった利点がアピールされていた。その時点では言及されなかったものの、Lightning端子を使えばハイレゾ音声をデジタル出力できるという利点もある。
たとえばラディウスのポタアン「AL-LCH21」は、LightningケーブルをiPhoneやiPadに挿し、最高96kHz/16ビットのハイレゾ音源を入力・D/A変換してアナログ出力することができる。アンプ部がヘッドホンに入っているか入っていないかの違いだけで、同じようなソリューションはすでに存在するのだ。
一つ付け加えておくと、WWDC直前の5月末、アップルはBeats Electronicsを30億ドルで買収した。こういった事実があっただけに、はじめてのLightning端子搭載ヘッドホンはBeatsから発表されるという見方が多く、フィリップスが世界で始めて発表したことに対して驚きの声が多く上がった。
もちろん、フィリップスがフライングして発表したわけはない。フィリップスは“Fidelio”「X2」など、多彩な新製品群をIFAのオープニングにあわせて発表したが、M2Lはその際、同時に発表されず、会期終了後にひっそりとプレスリリースを出すにとどまった。
Lightning搭載ヘッドホンは世界初である。本来であれば、この時期最も注目の集まるIFAで発表を行いたかったはずだ。その機会をあえてスルーし、新iPhone発表後に今回の新製品の発表を行ったということは、アップルとフィリップスのあいだで、解禁タイミングについてあらかじめ同意があったと考えるのが自然だ。さらにいうとM2Lは、Made for iPhoneなどの、いわゆる「MFi」認証も、もちろん取得している。
そして、注目していただきたいのはM2Lのリリースタイトルだ。原文はドイツ語だが、英訳すると「Philips Fidelio M2L earphones with Lightning connector provides high-definition sound quality for the mobile operating system iOS 8」となる。これをさらに日本語に翻訳すると、「Lightning端子を搭載したPhilipsの“M2L”イヤホンが、モバイルOS『iOS 8』にハイディフィニション・サウンドクオリティーを提供する」となる。これはかなり決定的だと思うのだが、いかがだろうか。
なお、IFA開催にあわせてソニーは、同じくハイレゾ対応DAC内蔵のヘッドホン「MDR-1ADAC」を発表した。ただしこのモデルは、単にUSB入力端子を備えているだけの製品だ。Lightningアダプターを経由し、USB端子からiOS端末内のデジタル音声を入力することもできるが、あくまでXperiaやPCなど、多岐にわたる対応機器のうちの一つという位置づけだ。逆に言えば、だからこそIFA開催にあわせて発表できたのだろう。
「M2L」はDACを内蔵し、24ビットの音声をD/A変換して再生することができるというのだが、それでは、その24ビット音声をいったいどうやって再生するのか。
ご承知の通り、これまではiOS標準の「ミュージック」アプリでハイレゾ音源を再生することはできなかった。厳密に言うと、48kHz/24ビット音源までは、iTunesからの同期や「ミュージック」アプリでの再生などが行えた(注)が、それよりサンプリングレートが上がり、48kHz/24ビットを超える音源になると、転送時にエラーが出てしまい、iTunesとの同期自体が行えなかった。
もちろん、iTunesの「アプリ」タブから、HF Playerなどのサードパーティー製アプリへファイルをドラッグ&ドロップで転送すれば、96/24や192/24などの再生・出力を行うことはできる。ただし、せっかくMFi認証取得済みのLightning搭載ヘッドホンが発表され、そのモデルがハイレゾ対応するとアナウンスしている状況で、再生を他社製アプリにまかせるということは、これまでのアップルの行動パターンから考えて可能性は低い。
アップルがこの時期に「Lightning直結ヘッドホン」というソリューションを発表し、それを体現した商品にMFi認証を与えていること、さらにはそのヘッドホンがハイレゾ対応を謳っていることも加味すると、近い将来に「ミュージック」アプリでのハイレゾ対応が拡充され、それがLightning端子から出力できるようになる、と考えるのが自然に思える。
もちろんすべては憶測の域を出ないし、状況証拠ばかりで確証に乏しいことはわかっているが、前述の通り、M2Lのリリースタイトルは「iOS 8にハイディフィニション・サウンドクオリティーを提供する」である。これは期待も高まるというものだ。
おそらくアップルはこの秋、新iPadなどの発表会をもう一度開催するはず。何か動きがあるとすればそのときだろう。M2Lが発売される12月までに、何らかのポジティブな発表があることを期待したい。
(注)日本オーディオ協会の定義では、CD/DATレベルを超える音源はすべてハイレゾマーク適用範囲としており、たとえば48kHz/24ビットの音源は「ハイレゾ」として認められる。この定義を適用するのであれば、現在のiPhoneやiTunesもハイレゾ対応を果たしていることになる。