【特別企画】「良い音」と「部屋の影響」との関係性を考える試聴イベント
“フラットな特性”は“良い音”に繋がるのか? 「アコースティックオーディオフォーラム」潜入レポート
橋爪氏は「マルチマイクでオーバーダビングしての録音だが、あたかも一緒に演奏してるかのように感じられるような、ひとつひとつの楽器が演奏している空気感がマスクされないように気を使った」と収録時のポイントを解説。
また、「この部屋には余分な響き、いやな響きがない。部屋のセッティングがいいと、音がよくなるのと同時に曲がよくなっていくと感じた」と、同社ショールームの響きについてコメント。「音楽は本来『いい曲だな』と思うものであり、『いい音だな』ではないと思う。それが感じられる部屋だ」と評価した。
この言葉に鈴木氏は「この部屋には、突出したところに響きがないから心地よく感じる」と回答。部屋の作り方、残響音のコントロールによって音楽の聴こえ方がどのように変わるのかのポイントを示した。
そして最後に、イコライザーにより、部屋の伝送特性の中で特に際立ったピークを抑えた場合と、ディップを持ち上げた場合、それぞれで聴感上どのような違いを感じられるかを聴き比べた。
ピークを抑えたものについて鈴木氏は「低音が薄くなったと思う人も、一方で滑らかになったと感じる人もいるかもしれない」とコメント。一方のディップを持ち上げたバージョンについては「一般的には違和感を覚える人も多いかもしれない。ディップは補正しないほうが私はいいように感じる」とした。
そしてデモを通じて「オーディオ機器における電気的な領域ではフラットにするのがいいのだろうが、アコースティックな、三次元的な現場ではあまりやらないほうがいいのではないか」とコメント。“特性をフラットにする”ことにこだわり過ぎるのではなく、伝送特性データの持つ意味や特徴を理解し、そのデータを部屋づくりに活かしていくという考え方を改めて紹介してイベントを締めくくった。