【特別企画】「オーディオの魅力は部屋の響きがあってこそ」
「防音工事で音を良くする」ポイントは? 「アコースティックオーディオフォーラム」取材レポート
そして、壁材として用いる石膏ボードが1枚の場合と3枚にした場合での、振動の比較データも紹介。面密度を上げることで付帯歪音を抑制できると、部屋の剛性を向上させることの効用を説明した。
さらに、イベントでは実際の施工事例を紹介。「建物全体として耐震性などはしっかりしていても、オーディオ的な剛性は華奢だった」(鈴木代表)という物件を改装したもので、同社による防音工事の前後でどのように残響時間が変わったのか具体的なデータも公開された。
工事前のこの部屋でクライアントは「スピーカーから再生される低音域の量感に満足していなかった」という。この原因は「特別な吸音材など設置していない一見普通の部屋だが、床、壁、天井によって実は低音域が大きく吸音されていた」からだという。
これに対し同社では、低音域の残響時間が長めになるよう防音室を設計。「響きの長さはあるが、低音がだぶつくことなくスッキリとした残響なので、低音の輪郭もハッキリとして動きもリアルに感じられるようになった」とのことで、施主も「一発で違いがわかった」と満足したという。この事例に対し岩元氏は「部屋の悪影響を取り去ったら音がよくなった好例」だと語った。
なお、鈴木氏は「以前はフラットな特性がよいと思っていたが、今は低音の残響時間を長めにしたほうがよいと考えている」と、部屋の特性と音質の関係性についてコメント。「フラットな特性にすると低音が少し寂しくなるような印象を持っている」と述べ、現在同社では低音の残響時間を比較的長めにとるよう設計していると説明した。
■剛性が重要なのは部屋もオーディオ機器も共通
また、別の事例としてDolby Atomos(ドルビーアトモス)対応のシアタールームを構築した物件も紹介。ピュアオーディオも楽しめるよう透過型スクリーンでスピーカー間の距離を離さずに済むようにしたこと、サラウンドスピーカー等を(もちろん音質に配慮しながら)隠して設置できるようにすることで部屋全体のデザインにも気を使ったことなどを説明し、幅広いユースケースへ柔軟に対応できることもアピールした。
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