<山本敦のAV進化論 第172回>
5Gの本格商用化が間近。オーディオビジュアルの世界にどんな新製品や新サービスが登場する?
クオリティの高い音楽配信サービスが揃えば、ストリーミング対応の「常時接続DAP」が登場する可能性もある。
例えば2018年に発売されたiPhone XSやiPhone XRが内蔵する「eSIM(埋め込みSIM)」の機能を活用すると、オーディオ機器のモバイル通信ネットワークへの接続設定はとても簡単になる。またNTTドコモがApple Watchや「ワンナンバーフォン ON 01」などに提供する、スマホの電話番号を連携する “子機=ワンナンバー対応デバイス” としてワンナンバーサービスの適用対象となれば、月々のランニングコストも負担が抑えられる。
アップルがメディアプレーヤーの「iPod touch」の最新モデルや、新しいコンテンツサービスの開発を進めているというウワサも聞こえ始めた。 “メディアプレーヤーのIoT化” にまたアップルが一石を投じることも考え得る。
あるいはさらに革新的なウェアラブルタイプのオーディオ・ビジュアル機器が誕生する可能性もある。フェイスブックやアップルがARスマートグラスの開発を進めているというウワサもあり、5Gの商用化が始まる2020年前後の動向を注視したい。
なお、スマート家電や家庭向けのIoTデバイスについては、個々の機器にLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる、省電力で広エリアをカバーする低コストな通信技術を採用するネットワーク通信機能が内蔵される動きが活発化している。
例えばパナソニックは、LPWAのひとつであるLTE-Mを活用するIoT家電の実現に向けて、昨春からNTTドコモと共同で実証実験をスタートしている。現在のスマート家電はインターネットに接続するためのWi-Fi設定などが煩雑になりがちであることから、特に日本国内では機能の認知が伸び悩んでいる。単体で無線通信機能を備え、面倒な手間をかけずに “置くだけ” でインターネットを活用したスマート機能が使えるようになれば普及を後押ししそうだ。5Gの同時多数接続機能により状況が一変する期待もある。
5Gはスマホやコネクテッドカーのための技術であり、オーディオビジュアル機器とは無縁のように思われるかもしれない。だが5Gのサービスが走り出せば、少なくとも既存の4Gのネットワークにかかっている負荷が分散され、モバイル環境で楽しむオーディオビジュアルコンテンツの可能性も広げてくれそうだ。
いまは多くのアイデアが水面下にあり、形になる時を待っているタイミングだろう。2月に開催されるMWC 2019でどんな5G対応スマホや、新しい端末・サービスが発表されるのか楽しみだ。筆者も現地に足を運んで最新動向をぜひ本連載などでレポートしたいと思う。
(山本 敦)