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編集部“イヤホン切り込み隊長”がレビュー

4個2,700円の高級イヤーピース。JVC「スパイラルドット++」を自腹で全5サイズ購入して試した

公開日 2019/04/06 07:00 編集部:成藤 正宣
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両モデルを並べて外観を比較すると、高さ、傘の膨らみ方、穴の大きさなど、見た目の上ではほぼ同じ。その中で、若干の差異を感じたのが開口部のフチ。初代では丸めてあったのに対し、スパイラルドット++では薄く鋭角的に仕上げられている。また、先端が薄く尖った分、ホーン形状のカーブは++の方が大きく取られているようにも見える。

スパイラルドット++(左)と、初代スパイラルドット(右)の開口部を比較。フチの処理がちょっと違う

より明確に違うのは表面の質感。初代もスベスベとした悪くない質感だが、++はさらに滑らか、かつ指に吸い付くかのよう。弾力性も豊かで、指で揉んでみると気持ちよい。引き換えに細かなホコリなどが付着しやすくなっているものの、この独特の感触を得られるなら些細な問題だ。

装着感は、手持ちのイヤホンの中から「大きめのイヤーピースで耳に浅く装着する機種」と、「小さめのイヤーピースで耳の深くまで装着する機種」の2種類を用意して比べた。

前者に選んだのはSATOLEX “Tumuri” 「DH303-A1」。初代/++ともにLサイズで無理なく耳に装着できたが、やはり++の方が耳を押し返す力が優しく、長時間の快適さでは一歩リードする印象。耳から外すときも、++の方がすんなり抜ける。

大きめのサイズで浅く装着している“Tumuri”。耳に対して少々オーバーサイズであっても負担を感じにくい

後者では、生産完了品ではあるがCampfire Audio「Lyra II」を用意。こちらは初代の場合MSサイズがピッタリ合うのだが、++のMSサイズではどうしても耳穴にはまりこんでくれず、スキマができてしまう。やはり弾力や先端部の形状が違うため、必ずしも初代と同じサイズが合うとは限らないようだ。

耳の深いところまで突っ込んで装着している「Lyra II」では、初代より大きめのサイズを選ぶ必要があった

わざわざ全サイズコンプリートしておいたのはこんな時のため。最終的に、スパイラルドット++はひと回り大きなMサイズで落ち着いた。

サイズはL/ML/M/MS/Sの5種類。高さはほぼ同一で、傘の膨らみ方が異なる

各パートを自然に立たせるキレの良さ、この効き目なら価格にも納得

それでは、肝心のスパイラルドット++による音の変化はいかほどのものか?

これが、2つのイヤホンのどちらでも、一聴しただけで認識できるくらいの違いが出た。スパイラルドット++では、初代のすっきりとした“クリアさ”は受け継ぎながら、さらに“キレの良さ”が加わったのだ。音の立ち上がりがクッキリとして明瞭感が増し、楽曲の1パート 1パートが聴き分けやすい。特に中高音域のシャープさは初代と比べても驚くほど向上している。

思っていた以上に劇的な効果が感じられたいっぽうで、全体としてはあくまでイヤホン自体の個性を活かした自然なバランスに収まっている。キレが強調されすぎて耳につくとか、低音域もいっしょに強調されてバランスが狂ってしまうといった大きな副作用はなく、今回試した組み合わせ以外でも、さまざまなイヤホンで良い結果が期待できそうだ。



一見するとイヤーピースとしては思い切った価格に見えるスパイラルドット++だが、最先端の素材によって得られる特有の装着感/チューニング効果は、その価格と十二分に釣り合っていると感じられる。普通のイヤーピースより1,000円少々上乗せしたくらいでこれだけの効果が得られるのなら、むしろ安いものとすら思えてしまう。

初代スパイラルドットと形状は似ているが同じサイズが合うとは限らない、という点にだけ留意すれば、お気に入りのイヤホンにいま少しの明瞭さ、あるいはふっくらとした柔らかな装着感が欲しいというとき、おおいに検討する価値のある高機能イヤーピースだ。

(編集部:成藤 正宣)

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