少しの工夫で音が変わるのもレコードの面白さ
知識ゼロからのカートリッジ選び。“カートリッジ交換”でレコード再生をさらにグレードアップ
■音溝を忠実にピックアップするために針先の形状も重要
現在ほとんどの針先(スタイラスチップとも呼ばれる)は、ダイヤモンドでできています。硬くて磨耗に強い素材だからです(その昔はサファイアなども使われていたそうです)。この針先が、どんな形にカットされているかによっても、音に違いが出ます。丸針・楕円針・ラインコンタクト針という3つの形があります。
丸針:もっとも一般的。文字通り針先がボール状にカットされているので、レコードの溝に点で安定して接触するため、かつては放送局などでよく使用されていました。初心者にも安心。ただし、多少音の歪みが起きやすいというデメリットが。比較的安価。
楕円針:丸針の歪みを解消するべく開発されたもので、音溝の情報量をより多く拾うことができます。こちらも溝に点で接触しますが、同じ針圧でも負荷がかかりやすくなるので、針もレコードも磨耗しやすいのが弱点。比較的安価。
ラインコンタクト針:点接触ではなく、線接触にしようと開発されたカットの仕方。負荷がかかりにくいだけでなく、より忠実に音情報を拾う。特殊ラインコンタクト針、シバタ針、マイクロリニア針といったヴァリエーションがある。値段は比較的高額。
それぞれの寿命については、オーディオテクニカでは、丸針は500時間、楕円針は300時間、ラインコンタクトは800〜1000時間としていますが、使用環境によります。聴き始める前にレコード盤や針先のクリーニングをすることで、長持ちさせることができます。
■ボディの素材やコイルでも音が変化する
MC型かMM/VM型か、丸・楕円針かラインコンタクト針か、といったところが音質の違いをわかりやすく伝える決め手かもしれませんが、そのほかにボディを金属にするか樹脂にするかで、やはり音の質感が変わります。オーディオテクニカのVM型カートリッジは、堅牢なダイキャストアルミニウム合金のボディか、高剛性樹脂のボディかを選ぶことができます。
他にもカンチレバーの素材、コイルの素材などにも選択肢があります。コイルはMC型にもMM/VM型にも使用されていますが、銅の純度が高いほうが電気抵抗が少なく、よりよい音を出してくれます。4Nというのは純度99.99%、6Nとは純度99.9999%(Nは9の意味)。6Nと表記されているものの方が、値段も上がり、グレードが高いということになります。
カートリッジを取り付けるヘッドシェルも、アルミニウム製やマグネシウム合金製などがあります。カートリッジと合わせた重さが、お手持ちのプレーヤーに対応しているかを調べて、その重さの範囲におさまる組み合わせで選びます。重すぎると、アームの反対側についている錘とバランスが取れず、針圧の調整ができなくなってしまうから要注意。取り扱い説明書に、たとえば、カートリッジは6.5g(±0.2g)、ヘッドシェルは10g(ネジ・ナット・ワイヤー含む)仕様、などと書いてあります。
■気になるモノラルカートリッジ
古いクラシック音楽やジャズの録音などで、モノラル録音のLPに出会うことがよくあります。モノラルのレコードは、音溝の左右に同じ情報が刻み込まれています。針は音溝に沿って、水平方向に振動すれば十分に音の情報を得られます。ところが、ステレオ用に作られたカートリッジでは針が垂直の動きにも対応してしまうので、音溝の微細な汚れや傷などにも反応し、余計な情報も拾いがちになってしまいます。
モノラル専用に作られたカートリッジは、水平方向の振動に対応し、垂直方向の情報は切り捨てて発電しないため、より十分に刻み込まれた音の情報を拾うことができるのです。
実際に、モノラルレコードをステレオ・カートリッジとモノラル専用カートリッジで聴き比べてみると、一目瞭然! ぐっと音の厚みが増して、充実したサウンドを楽しむことができます。
■カートリッジの取り扱いで気を付けたいこと
カンチレバーの周りはとても繊細で壊れやすいので、使用しないときはカバーをしておくのが安心です。掃除をしようと手を近づけたら、ニットの袖先に針が引っかかってとれてしまった! などという悲劇が起こらないように……。
また、カートリッジは意外と強い磁石を使用しているので、磁石に引っ張られやすいものは、周りに置かないようにしましょう。うっかり引っ張られてカートリッジに当たってしまい破損、という事故も防ぎたいですね。