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ネットワーク連携機能を持つものも

進化するスピーカー最前線 -パッシブ・アクティブ型の違いを解説-

公開日 2022/02/15 06:45 生形三郎
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■ネットワーク環境の普及により、スピーカーも大きく進化する

ヘッドホンやイヤホンといったプライベートな音楽を楽しむスタイルが定着する中で、やはりスピーカーを通して音楽を楽しみたい、音楽を全身で浴びる、あるいは友人とともに楽しむといったスタイルもまた、音楽の大きな楽しみ方であり続ける。

スピーカーはいま、大きな変革のときにある。サウンド面はもとより機能面でも大きな進化を遂げており、多様化も著しい。その背景には、ネットワーク環境の普及や、スマートフォンが中心のライフスタイルが主流になったことで、無線接続やネットワークを利用した再生形態が一般的となったことが挙げられる。

“巣ごもり”を受け、自宅でのエンタメを楽しむためにスピーカーを導入、グレードアップしたいという需要も高い

いま多くの人々にとって最も身近なスピーカーといえば、Bluetoothスピーカーであろう。2010年前後から爆発的に普及したスピーカーで、スマートフォンとペアリングすることで再生可能な手軽さが魅力。AppleのHomePodのようなスマートスピーカーのほか、ソニー、JBLといった老舗オーディオメーカーも多様なラインアップを展開している。

BluetoothやWi-Fiなどを活用したスピーカーも爆発的に普及。家庭内のみならずアウトドアユースとしても活用されている

それ以前までオーディオファンにとってスピーカーといえば、いわゆる「パッシブ型」のスピーカーを指すことが多かった。アンプを別途必要とし、アンプやプレーヤーを自分なりに組み合わせて再生するタイプのスピーカーである。だが、現在ではそこに、アンプまで一体化した「アクティブ型」のスピーカーが増えてきている。

デジタル再生技術の進化によって、アクティブ型スピーカーは、いまやハイファイクオリティでも十分に通用する製品が増えてきている。そこでここでは、改めてスピーカーのパッシブ型・アクティブ型の違いを整理するとともに、それらをハイクオリティで再生するためにはどういった知識が必要なのかを整理してみよう。

■アンプを持たない「パッシブ型」、アンプ内蔵の「アクティブ型」の違い

そもそもスピーカーとは、電気信号を空気の振動に変換するものだ。スピーカーから音を出すためには、その電気信号を大きな信号へと増幅するアンプというものが必要となる。

このアンプ内蔵の有無で、スピーカーは大きく2つに分けられ、アンプ無しをパッシブ型、アンプ内蔵のものをアクティブ型と呼ぶ。さらに、アクティブ型には、デジタル回路を持つタイプがあり、デジタル信号を有線や無線で入力可能であったり、DSP処理を使って音質を積極的に調整可能であったりする。


それぞれの特徴を見ていこう。

■(1)パッシブ型

アンプを別に用意する、伝統的なスタイルのスピーカーだ。このタイプの最大のメリットは、アンプを変えることでサウンドのキャラクターを好みのものに変えることができること。特に、オーディオ製品の中でも人気の高い「真空管アンプ」を使いたいと思った場合、パッシブ型でないと難しい場合が多い。

難点としては、逆に、アンプが自由に変えられることがネックになり得ることだろう。アンプのスペース確保が必要なことに加え、「能率」や「インピーダンス」と呼ばれるものの値が低いスピーカーを組み合わせる場合、アンプによってそのスピーカーの性能が十全に発揮できないということも起こりうるからだ。


■(2)アクティブ型

専用のアンプを内蔵しているのがアクティブ型だ。DTMや音楽制作ユースでは、パワードスピーカー、モニタースピーカー、スタジオモニターなどと呼ばれることも多い。

メリットは、なんといっても、アンプが一体となっているので、省スペースであることに加え、設計の意図通りの音が、はじめから得られるということに尽きる。また、多くのアクティブ型は、内蔵するスピーカーユニットごとに専用のアンプを内蔵していたり、ユニットごとに最適化した信号分配が行なれていること、そして、スピーカーケーブルが不要なことから、特に「音の解像力の高さ」や「デフォルト状態での的確なスピーカー駆動」という点では、一般的なパッシブ型に対して大きなアドバンテージを備えている。これこそが、音楽制作や音声制作現場でアクティブ型が主流となっている大きな理由の一つだろう。


さらに、昨今のアクティブスピーカーでは、専用のマイクロフォンを使った補正機能や、複数台スピーカーの一元的なマネジメント機能を搭載するものも出てきており、スピーカー再生でネックとなるルームアコースティックの問題解決や、サラウンドスピーカー環境の構築を容易にするモデルも登場している。

とりわけ、この「アンプとの組み合わせの相性」や「部屋環境に応じた音質調整」というものは、オーディオ再生の醍醐味でありつつも、一方では、導入や使いこなしのネックとなる部分だといえる。よって、これらがアクティブ型スピーカーの諸機能で解決されることにより、オーディオ趣味の裾野が大きく広がる可能性を持つのではと筆者は期待を寄せている。

ジェネレックの提供する「GLM」キットでは、マイクとPCで部屋の音響環境を測定し、部屋の特性に応じたルーム補正が行える

デメリットとしては、オーディオ趣味として、好みのアンプを選ぶことができないので、アンプとの組み合わせを選ぶ楽しみや音質向上の伸び代が少ないこと、そして、日本においては、そもそもホームオーディオ機器として楽しめる音質や外観デザイン、そして、機能性を備えたアクティブ型スピーカー製品の選択肢がまだまだ少ないことが挙げられるだろう。しかしながら、昨今、その数が急速に増えつつあるのでこれからが楽しみでもある。

■(3)ハイブリッド型

日本国内に流通するモデルでは数が少ない上に、ハイエンドな価格帯が中心だが、パッシブ型とアクティブ型を兼ね備えた「ハイブリッド型」と呼ばれるタイプも存在する。低音再生部分だけ専用のアンプを搭載したり、アンプを内蔵していながらも、切り替えスイッチでパッシブ型のスピーカーとして使えるもの、そして、低音部の調整専用の付属マイクロフォンを用いて音質補正が可能な機能を備えるものがある。


低音部への専用アンプを持つハイブリッド型は、駆動が困難な低音域を着実に駆動するほか、室内環境に影響を受けやすい低域部を補正可能とするなど、従来のスピーカーシステムで生じやすいウィークポイントを解消し、より合理的にスピーカーシステムを運用することが可能となる。

低域をアクティブ駆動することで、真空管アンプとの組み合わせといった新しい楽しみ方も広がる

■機能統合式のアクティブ型

さらに、アクティブ型は、アンプだけでなく、DACを搭載していたり、ネットワークや無線接続機能を搭載し、ソース機器としての役割を兼ね備えたものが増えてきている。こうした統合型・一体型のアクティブスピーカーは、それ単体で音楽再生が完結するので、純粋に「音楽を再生する装置」としては、もっともシンプルで合理的な存在だと言える。いわゆるBluetoothスピーカーもその一種ということができるだろう。やはりオーディオ再生の裾野を広める大きな可能性を秘めていると言える。

KEFの「LSX」は、Wi-Fi/Bluetooth接続にも対応、Spotify等のストリーミングサービスに対応するなど、スピーカーだけでさまざまな音楽再生が可能になる多機能モデル。KEFの音質技術と、インテリアとのマッチングも踏まえたデザイン性の高さも魅力

実際に海外メーカーでは、この手のアクティブスピーカーがパッシブ型とともに主力製品としてラインナップしているブランドが多数ある。日本では、いくつかの理由、例えば、技適取得にかかるコストや、ホームオーディオでは伝統的なパッシブ型が主流であるなどのマーケティング面での理由によって未上陸の場合も多いが、B&Wの「Formation」シリーズ、また年始のCESではJBLもアクティブモニターを発表しており、今後の展開にも期待が高まる。

B&Wの「Formation Duo」も、トレードマークのトゥイーターを搭載したアクティブスピーカーとして日本市場での期待も高まる

肝心の音質に関しては、昨今のデジタルアンプ技術の進化や、DSP技術の進歩により、かなり高レベルな音質が実現されているといえる。デジタルアンプ技術においては、昨今ハイファイブランドが採用するほどの高音質が実現されていることは周知の事実であるし、DSP技術においても、「積極的な音質操作」というより、「如何に自然な音質を引き出すかの補正」が高次元で行われている印象だ。

以上、パッシブ型とアクティブ型、ハイブリッド型のスピーカーの特徴を概観したが、当然ながらそれぞれに魅力があるといえるだろう。近年のロスレス・ストリーミングのサービスインや、コロナ禍における巣ごもり需要などもあり、リスニングスタイルの多様化はもちろん、様々なライフスタイルに合わせたオーディオ機器のニーズは高まりを見せることは間違いない。アンプだけでなくプレーヤー機能を搭載可能なアクティブスピーカーは、今後一層ラインアップが充実することは明白だろう。

(編集部からのお詫び:初出時、インピーダンスと能率について生形氏の意図と異なる誤った記載がございました。読者諸氏並びに生形氏にお詫びするとともに、正しい表現に訂正しております)

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