【連載】佐野正弘のITインサイト 第31回
ライカ監修スマホ「Leitz Phone 2」は魅力的だが課題も残る
2021年にソフトバンクから販売されたスマートフォン「Leitz Phone 1」。ソフトバンクとライカカメラが提携し、1インチという高級コンパクトデジタルカメラ並みの大型イメージセンサーを搭載しただけでなく、カメラのレンズから画質、さらには本体デザインなど全体にわたってライカカメラが全面的に監修したスマートフォンであったことから、カメラ愛好家を中心に大きな注目を集めたことは記憶に新しい。
そして昨日11月10日には、その後継モデルとなる「Leitz Phone 2」が、再びソフトバンクから発売されると発表された。
端末の製造は、Leitz Phone 1に続いてシャープが担っていることから、Leitz Phone 2はライカカメラの監修を受けているシャープのスマートフォン「AQUOS R7」をベースに開発がなされている。
それゆえ、約4,720万画素の1インチイメージセンサーを搭載し、ライカカメラ監修の非球面レンズを搭載するなど、ハード的に見れば多くの面でAQUOS R7と共通しているようだ。
加えて、Leitz Phone 1、さらに言えばそのベースモデルとなった「AQUOS R6」で評判が良いとは言えなかったオートフォーカスに関しても、イメージセンサーの全ての画素を用いた「OctaPD AF」に対応。より素早く、そして正確に被写体にピントが合うようになるなど、AQUOS R7と同様の改善がなされているようだ。
ただLeitz Phone 2は、全面的にライカカメラの監修が入っているだけあって、AQUOS R7とは違っている部分も多くある。中でも大きな違いとなるのは、Leitz Phoneシリーズ独自の撮影モード「Leitz Looks」であろう。
Leitz Phone 1のLeitz Looksは、ライカカメラらしいモノクロ撮影ができる機能が備わっていたが、Leitz Phone 2では大幅なリニューアルがなされており、新たにライカカメラを代表する3つのレンズの画質を体験できる機能が用意されている。
具体的には、風景などに適した広角撮影用の「Summilux 28」と、幅広いシーンで活用できる「Summilux 35」、そして大口径で背景をぼかした表現などがしやすい、ポートレート撮影などに適した「Noctilux 50」の3つ。それらにモノクロームなど3つのフィルターを加えることで、ライカカメラらしい表現ができるようになるとのことだ。
Leitz Phone 2は、撮影に用いるカメラが1つだけなので、どうやって3つのレンズを再現するのか?という点には疑問も沸くが、実際にはそれぞれのレンズの画角に合わせて撮影した写真を切り抜き、ソフトウェア処理によってレンズの特性に応じた表現を再現しているとのこと。Leitz Phone 2は同じ1インチセンサーであっても、Leitz Phone(約2,020万画素)と比べ倍以上の画素数を誇るだけに、画素数の向上をライカカメラらしい表現に生かしたといえるだろう。
もちろん、本体デザインにも監修が入っているだけに、ライカカメラらしさを感じさせる外観となっている。実際、Leitz Phone 2のカラーは「ライカホワイト」1色のみだが、これも「ライカM8」の限定モデルのカラーを再現したものだという。
ただ、Leitz Phone2の価格は22万5,360円と、Leitz Phone 1の発売当初の価格(18万7,920円)と比べて一層高額になっている。そこには、ライカカメラのより強いこだわりを反映したことも影響しているだろうが、ベースモデルのAQUOS R7がAQUOS R6より大幅に値段が上がっていること、そして昨今の急速な円安なども少なからず影響していると考えられる。
だが20万円前後という価格であれば、実際のカメラと比べれば安いというのはLeitz Phone 1の発表時から言われていたことでもある。Leitz Phone 2のターゲットもライカカメラの愛好家、あるいはライカカメラに憧れを持つ人に限定されることから、価格の上昇がそこまで販売を左右するとは考えにくい。
またソフトバンクは今回、Leitz Phone 2の販売をソフトバンクショップの全店舗から、主要量販店やソフトバンクショップなど全国約850店舗へと大きく絞り込んでいる。その理由についてソフトバンク側は、Leitz Phone 1の販売実績を考慮し、その上でよりプレミアム感を持たせるために販路を絞り込んだとしている。ターゲットをかなり絞り込んだ商品だけに、こちらもある意味妥当な選択といえるだろう。
ただ気になるのが、それだけ値段が高く、強いこだわりを詰め込んだ高付加価値の製品にも関わらず、スマートフォンであるがゆえ、製品寿命の短さという課題を抱えていることだ。
スマートフォンはOSバージョンアップの限界という問題もあって、製品にもよるが寿命は3年前後というのが一般的で、デジタルカメラのように同じデバイスを長く使い続けるのは難しいし、販売する側も同じデバイスを長く販売できない。
実際、ソフトバンクはLeitz Phone 2の発売に伴って、Leitz Phone 1は市場在庫がなくなった時点で販売は終了するとしており、スマートフォン特有の製品寿命の短さを回避できていない様子だ。そのことがLeitz Phoneシリーズの評価を落としてしまいかねないのが気がかりだ。
一方で注目されるのが、ライカカメラに関連する取り組みとして、シャープと同様にライカカメラと提携している中国のXiaomi(シャオミ)が、11月2日に「Xiaomi 12S Ultra Concept」というコンセプトモデルを打ち出したことだ。
これはライカカメラの監修を受けた「Xiaomi 12S Ultra」(日本未発売)をベースに、ライカカメラのレンズを直接装着する機構を備え、スマートフォンながら一眼レフカメラのようにレンズを交換できる仕組みを備えたスマートフォンである。
Xiaomi 12S Ultra Conceptはあくまで、レンズを変えてスマートフォンの撮影体験を変えるというアプローチで開発されたものと思われる。だが見方を変えれば、このアプローチは製品寿命が短いスマートフォンを交換していくことにより、高額で高付加価値のレンズを使い続けながら、長く継続した撮影体験を得ることにつながる可能性もある。
むろん、Xiaomi 12S Ultra Conceptはあくまでコンセプトモデルであるし、そもそもハードウェア的にカスタマイズするというアプローチで成功したスマートフォンの事例はほとんどない。多くの消費者が求める、オールインワンモデルで高い付加価値を与えるには、Leitz Phoneシリーズのようなかたちが最適解であることはたしかだ。
だがこの仕組みでは、どれだけ高い付加価値の商品を開発しても、短命で終わってしまうという課題を抱え続けることになる。課題解決には、従来にない新しいアプローチが求められていると言えそうだ。
そして昨日11月10日には、その後継モデルとなる「Leitz Phone 2」が、再びソフトバンクから発売されると発表された。
■ライカカメラ全面監修の新モデル「Leitz Phone 2」
端末の製造は、Leitz Phone 1に続いてシャープが担っていることから、Leitz Phone 2はライカカメラの監修を受けているシャープのスマートフォン「AQUOS R7」をベースに開発がなされている。
それゆえ、約4,720万画素の1インチイメージセンサーを搭載し、ライカカメラ監修の非球面レンズを搭載するなど、ハード的に見れば多くの面でAQUOS R7と共通しているようだ。
加えて、Leitz Phone 1、さらに言えばそのベースモデルとなった「AQUOS R6」で評判が良いとは言えなかったオートフォーカスに関しても、イメージセンサーの全ての画素を用いた「OctaPD AF」に対応。より素早く、そして正確に被写体にピントが合うようになるなど、AQUOS R7と同様の改善がなされているようだ。
ただLeitz Phone 2は、全面的にライカカメラの監修が入っているだけあって、AQUOS R7とは違っている部分も多くある。中でも大きな違いとなるのは、Leitz Phoneシリーズ独自の撮影モード「Leitz Looks」であろう。
Leitz Phone 1のLeitz Looksは、ライカカメラらしいモノクロ撮影ができる機能が備わっていたが、Leitz Phone 2では大幅なリニューアルがなされており、新たにライカカメラを代表する3つのレンズの画質を体験できる機能が用意されている。
具体的には、風景などに適した広角撮影用の「Summilux 28」と、幅広いシーンで活用できる「Summilux 35」、そして大口径で背景をぼかした表現などがしやすい、ポートレート撮影などに適した「Noctilux 50」の3つ。それらにモノクロームなど3つのフィルターを加えることで、ライカカメラらしい表現ができるようになるとのことだ。
Leitz Phone 2は、撮影に用いるカメラが1つだけなので、どうやって3つのレンズを再現するのか?という点には疑問も沸くが、実際にはそれぞれのレンズの画角に合わせて撮影した写真を切り抜き、ソフトウェア処理によってレンズの特性に応じた表現を再現しているとのこと。Leitz Phone 2は同じ1インチセンサーであっても、Leitz Phone(約2,020万画素)と比べ倍以上の画素数を誇るだけに、画素数の向上をライカカメラらしい表現に生かしたといえるだろう。
もちろん、本体デザインにも監修が入っているだけに、ライカカメラらしさを感じさせる外観となっている。実際、Leitz Phone 2のカラーは「ライカホワイト」1色のみだが、これも「ライカM8」の限定モデルのカラーを再現したものだという。
ただ、Leitz Phone2の価格は22万5,360円と、Leitz Phone 1の発売当初の価格(18万7,920円)と比べて一層高額になっている。そこには、ライカカメラのより強いこだわりを反映したことも影響しているだろうが、ベースモデルのAQUOS R7がAQUOS R6より大幅に値段が上がっていること、そして昨今の急速な円安なども少なからず影響していると考えられる。
だが20万円前後という価格であれば、実際のカメラと比べれば安いというのはLeitz Phone 1の発表時から言われていたことでもある。Leitz Phone 2のターゲットもライカカメラの愛好家、あるいはライカカメラに憧れを持つ人に限定されることから、価格の上昇がそこまで販売を左右するとは考えにくい。
またソフトバンクは今回、Leitz Phone 2の販売をソフトバンクショップの全店舗から、主要量販店やソフトバンクショップなど全国約850店舗へと大きく絞り込んでいる。その理由についてソフトバンク側は、Leitz Phone 1の販売実績を考慮し、その上でよりプレミアム感を持たせるために販路を絞り込んだとしている。ターゲットをかなり絞り込んだ商品だけに、こちらもある意味妥当な選択といえるだろう。
■課題として残る製品寿命の短さ
ただ気になるのが、それだけ値段が高く、強いこだわりを詰め込んだ高付加価値の製品にも関わらず、スマートフォンであるがゆえ、製品寿命の短さという課題を抱えていることだ。
スマートフォンはOSバージョンアップの限界という問題もあって、製品にもよるが寿命は3年前後というのが一般的で、デジタルカメラのように同じデバイスを長く使い続けるのは難しいし、販売する側も同じデバイスを長く販売できない。
実際、ソフトバンクはLeitz Phone 2の発売に伴って、Leitz Phone 1は市場在庫がなくなった時点で販売は終了するとしており、スマートフォン特有の製品寿命の短さを回避できていない様子だ。そのことがLeitz Phoneシリーズの評価を落としてしまいかねないのが気がかりだ。
一方で注目されるのが、ライカカメラに関連する取り組みとして、シャープと同様にライカカメラと提携している中国のXiaomi(シャオミ)が、11月2日に「Xiaomi 12S Ultra Concept」というコンセプトモデルを打ち出したことだ。
これはライカカメラの監修を受けた「Xiaomi 12S Ultra」(日本未発売)をベースに、ライカカメラのレンズを直接装着する機構を備え、スマートフォンながら一眼レフカメラのようにレンズを交換できる仕組みを備えたスマートフォンである。
Xiaomi 12S Ultra Conceptはあくまで、レンズを変えてスマートフォンの撮影体験を変えるというアプローチで開発されたものと思われる。だが見方を変えれば、このアプローチは製品寿命が短いスマートフォンを交換していくことにより、高額で高付加価値のレンズを使い続けながら、長く継続した撮影体験を得ることにつながる可能性もある。
むろん、Xiaomi 12S Ultra Conceptはあくまでコンセプトモデルであるし、そもそもハードウェア的にカスタマイズするというアプローチで成功したスマートフォンの事例はほとんどない。多くの消費者が求める、オールインワンモデルで高い付加価値を与えるには、Leitz Phoneシリーズのようなかたちが最適解であることはたしかだ。
だがこの仕組みでは、どれだけ高い付加価値の商品を開発しても、短命で終わってしまうという課題を抱え続けることになる。課題解決には、従来にない新しいアプローチが求められていると言えそうだ。