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「真空管アンプ」、普通のアンプと何が違うの? 成り立ちや仕組み、魅力を解説!
オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。
そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では根強いファンの多い「真空管アンプ」について、その成り立ちから特徴、魅力など掘り下げていきたい。
■現代へと続くオーディオ技術を可能とした「三極管」
オーディオでいうところのアンプ(Amplifier)というのは、「増幅器」という意味である。プレーヤーなどから出力される微弱な信号を、スピーカーが駆動できる大電力へ増幅することが使命のコンポーネントといって差し支えないだろう。
もっとも、これはいわゆる「パワーアンプ」の働きで、上流機器の選択と音量調節をする役割の「プリアンプ」、そしてその両者を統合した「プリメインアンプ」もある。
アンプにはトランジスター(ソリッドステート)式と真空管式があることをご存じの人は多いだろう。大ざっぱにいうと、これは増幅を担う素子の違いを表すものだ。
そもそも現代オーディオに不可欠な「信号の増幅」が可能になったのは、1906年に真空管の一種「三極管」が発明された結果だった。当初は別の目的で発明された三極管は、数年後に信号が増幅できることが発見され、そこから一気にラジオ、レコードの電気吹き込み、そして現代オーディオへ続く第一歩というべき電蓄などが、どんどん実用化していった。
しかし、真空管はヒーターで熱を加えてやらないと動作しないことから効率が悪く、出力インピーダンスが高いことからスピーカーを駆動するにはアウトプット・トランスでインピーダンスを下げてやらねばならず、また一定時間で寿命を迎えるため新しい個体へ挿し替えてやらねばならない。
その問題点を解決するため、1947年に開発・実用化されたのが「トランジスター」だ。トランジスターは動作に熱を加える必要がなく、出力インピーダンスの低い素子を開発することも容易で、しかも効率が良いため多数をパラレル使用して出力を稼ぐことも容易く、寿命も相対的に長い。
1960年代に初登場したトランジスターを用いた「ソリッドステートアンプ」は、真空管アンプより低コストで構築できることもあってオーディオの敷居を一気に低くし、1970年代オーディオ大ブームの礎ともなった。
そんなトランジスターの大隆盛から、一度は1970〜80年代にかけて縮小の一途だった真空管アンプは、20世紀の終わり頃に息を吹き返し、現代は一般的なソリッドステートアンプ、「デジタルアンプ」と通称される高効率増幅方式、そして真空管アンプが三大増幅回路という趣となっている。趣味の世界は選択肢が多い方がいいに決まっているから、現在はまことにありがたい時代といってよいだろう。
■生々しさが真空管アンプの魅力。音の違いを楽しむ「球転がし」も魅力
真空管にも元祖の三極管と、高効率化を目指して進化していった四極管(ビーム管)、五極管があり、また出力方式にも終段の球(真空管)を1本だけ使うシングルや、信号波形の上半分と下半分を別々の球で増幅するプッシュプル、そしてシングルを2本並列に駆動するパラシングルなど、数々の方式がある。
それぞれに音の傾向は大きく違うし、また同じ三極管やビーム管でも銘柄が、また同一型番の球でもメーカーが違えば音がまったく違ってしまう。
それでも、ソリッドステートでは味わえない真空管アンプに特有の傾向というものがあるように、私個人は感じている。それは、まるでボーカルをえこひいきしているかのように実体感豊かで生々しく、バックの演奏から浮き立たせて表現する才能である。それに比べてソリッドステートは、伴奏も歌い手も平等に取り上げる、という風情が漂う。
例えば音源のマスタリング時などには後者の方が適しているかもしれないが、「この歌手の歌が聴きたいんだ!」とオーディオに情熱を燃やすマニアには、私は前者の方が向いているのではないか、という気がしてならない。
また、前述したが真空管を挿し替えることによって音の傾向をかなり大きく変えることが可能で、自分好みの音へチューニングする調整の余地が大きいのも真空管アンプの大いなる美点だ。
例えば「6CA7(EL34)」と「KT88」、「6L6GC」などは僅かな調整で挿し替えて楽しむことが可能だし、それらを生産している、あるいは過去にしていたメーカーは膨大な数に及ぶ。いろいろな互換球を取り揃え、挿し替えて音の違いを楽しむ「球転がし」という趣味も、真空管ならではといったところだろう。
真空管の難点というと、これも前述したが熱さなければ真空管は動作しないため、ヒーターの分だけ消費電力が大きいことと、部屋が暑くなることであろう。しかし、それを吹き飛ばすだけの魅力があると、私は信ずる。
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(協力:オーディオランド)
そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では根強いファンの多い「真空管アンプ」について、その成り立ちから特徴、魅力など掘り下げていきたい。
■現代へと続くオーディオ技術を可能とした「三極管」
オーディオでいうところのアンプ(Amplifier)というのは、「増幅器」という意味である。プレーヤーなどから出力される微弱な信号を、スピーカーが駆動できる大電力へ増幅することが使命のコンポーネントといって差し支えないだろう。
もっとも、これはいわゆる「パワーアンプ」の働きで、上流機器の選択と音量調節をする役割の「プリアンプ」、そしてその両者を統合した「プリメインアンプ」もある。
アンプにはトランジスター(ソリッドステート)式と真空管式があることをご存じの人は多いだろう。大ざっぱにいうと、これは増幅を担う素子の違いを表すものだ。
そもそも現代オーディオに不可欠な「信号の増幅」が可能になったのは、1906年に真空管の一種「三極管」が発明された結果だった。当初は別の目的で発明された三極管は、数年後に信号が増幅できることが発見され、そこから一気にラジオ、レコードの電気吹き込み、そして現代オーディオへ続く第一歩というべき電蓄などが、どんどん実用化していった。
しかし、真空管はヒーターで熱を加えてやらないと動作しないことから効率が悪く、出力インピーダンスが高いことからスピーカーを駆動するにはアウトプット・トランスでインピーダンスを下げてやらねばならず、また一定時間で寿命を迎えるため新しい個体へ挿し替えてやらねばならない。
その問題点を解決するため、1947年に開発・実用化されたのが「トランジスター」だ。トランジスターは動作に熱を加える必要がなく、出力インピーダンスの低い素子を開発することも容易で、しかも効率が良いため多数をパラレル使用して出力を稼ぐことも容易く、寿命も相対的に長い。
1960年代に初登場したトランジスターを用いた「ソリッドステートアンプ」は、真空管アンプより低コストで構築できることもあってオーディオの敷居を一気に低くし、1970年代オーディオ大ブームの礎ともなった。
そんなトランジスターの大隆盛から、一度は1970〜80年代にかけて縮小の一途だった真空管アンプは、20世紀の終わり頃に息を吹き返し、現代は一般的なソリッドステートアンプ、「デジタルアンプ」と通称される高効率増幅方式、そして真空管アンプが三大増幅回路という趣となっている。趣味の世界は選択肢が多い方がいいに決まっているから、現在はまことにありがたい時代といってよいだろう。
■生々しさが真空管アンプの魅力。音の違いを楽しむ「球転がし」も魅力
真空管にも元祖の三極管と、高効率化を目指して進化していった四極管(ビーム管)、五極管があり、また出力方式にも終段の球(真空管)を1本だけ使うシングルや、信号波形の上半分と下半分を別々の球で増幅するプッシュプル、そしてシングルを2本並列に駆動するパラシングルなど、数々の方式がある。
それぞれに音の傾向は大きく違うし、また同じ三極管やビーム管でも銘柄が、また同一型番の球でもメーカーが違えば音がまったく違ってしまう。
それでも、ソリッドステートでは味わえない真空管アンプに特有の傾向というものがあるように、私個人は感じている。それは、まるでボーカルをえこひいきしているかのように実体感豊かで生々しく、バックの演奏から浮き立たせて表現する才能である。それに比べてソリッドステートは、伴奏も歌い手も平等に取り上げる、という風情が漂う。
例えば音源のマスタリング時などには後者の方が適しているかもしれないが、「この歌手の歌が聴きたいんだ!」とオーディオに情熱を燃やすマニアには、私は前者の方が向いているのではないか、という気がしてならない。
また、前述したが真空管を挿し替えることによって音の傾向をかなり大きく変えることが可能で、自分好みの音へチューニングする調整の余地が大きいのも真空管アンプの大いなる美点だ。
例えば「6CA7(EL34)」と「KT88」、「6L6GC」などは僅かな調整で挿し替えて楽しむことが可能だし、それらを生産している、あるいは過去にしていたメーカーは膨大な数に及ぶ。いろいろな互換球を取り揃え、挿し替えて音の違いを楽しむ「球転がし」という趣味も、真空管ならではといったところだろう。
真空管の難点というと、これも前述したが熱さなければ真空管は動作しないため、ヒーターの分だけ消費電力が大きいことと、部屋が暑くなることであろう。しかし、それを吹き飛ばすだけの魅力があると、私は信ずる。
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