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本格オーディオシステムとも連携可能

ドラクエ×N響ライブ配信は打楽器の迫力がすごい!Live Extremeが呼び起こしたオーディオの感動

公開日 2024/06/07 06:45 逆木 一
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ドラクエ・コンサートが自宅でもハイクオリティで楽しめる



去る5月6日、NHK交響楽団による「ドラゴンクエスト・コンサート 〜そして伝説へ…〜」(指揮:下野竜也)が東京芸術劇場にて開催された。このコンサートの模様は、コルグによるインターネット動画配信システム「Live Extreme」によってライブ配信も行われ、筆者も当日自宅で視聴したので、その際の様子をレポートしたい。

NHK交響楽団による「ドラゴンクエスト・コンサート 〜そして伝説へ…〜」がLive Extremeで配信された

Live Extremeは最大でリニアPCM 384kHz/24bit・DSD 5.6MHzのロスレス/ハイレゾ配信が可能であり、特に音にこだわったライブやイベントで活用されている。専用の再生ソフトやアプリを用いる必要がなく、普段使用しているウェブブラウザをそのまま使用しつつ、高音質の配信を受けられるというのが大きな特徴となる。

PC等のブラウザを使用し、USB-DAC等に出力することができれば、本格オーディオシステムにてライブ配信を高音質で楽しむことができる、というのも大きなポイントのひとつ。今回も、筆者のデスクトップシステム、USB-DACにiFi audio「NEO iDSD2」、プリメインアンプにNmode「X-PM9」、スピーカーにParadigm「Persona B」という布陣で再生している。

デスクトップオーディオのスタイルで本格的に自宅でライブ配信を楽しむことができる。モニターのサイズは31.5インチで、映像の迫力もなかなか

ちなみに、筆者自身が過去に開催したオンラインのオーディオイベント「Audio Renaissance Online」において、開始して間もないLive Extremeをいちはやく配信で活用した経験がある。よって、Live Extremeという技術/システムがいかに重要かつ有用であるか、単なるリスナーとしてだけではなく、企画の当事者という立場からも真に理解しているつもりだ。

ブラウザからの再生にはPCのシステム設定が必要



今回のドラクエコンサートの音声仕様は48kHz/24bitであり、それをビットパーフェクトで再生するためにはPCのサウンド設定を確認する必要がある。

Windowsの場合は、パソコンの「サウンド設定」からプロパティを開き、該当するフォーマットを選択する必要がある

筆者はWindowsPCとUSB-DACの環境なので、サウンドの設定からデバイスを選択→プロパティの「詳細」で「24ビット、48000Hz(スタジオの音質)」を選択すればよい。

一度設定してしまえば音源のスペックにかかわらずビットパーフェクト再生が可能なPC用再生ソフトと比べ、この辺りは面倒と言えば面倒な部分なのだが、一般的なウェブブラウザで再生可能という簡便性とのトレードオフと捉えるべきだろう。

Live Extremeで音声が48kHz/24bitで配信されている

充実したエネルギー感で、打楽器の鮮烈な存在感も印象的



今回のコンサートは2部構成で、第1部は『ドラゴンクエストV』の「序曲のマーチ」から始まり、エルガー/組曲「子どもの魔法のつえ」第1番 作品1a ―「序曲」「メヌエット」「妖精と巨人」、『ドラゴンクエストIV』から「海図を広げて」「栄光への戦い」、ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)―「カッチェイ王の魔の踊り」「こもり歌」「終曲」という、ドラクエの曲の間に“魔法”の要素があるクラシックの楽曲を挟んだ内容となっている。

池袋の芸術劇場からの公演をリアルタイムで自宅でも鑑賞できる

2021年に亡くなられた、ドラクエシリーズの音楽を手掛けられたすぎやまこういち氏の功績に想いを馳せながら序曲を聴き始めたのだが、演奏はもちろんのこと、それ以上に音の良さにのけぞってしまった。曲全体の厚み、エネルギー感の充実は掛け値なしで素晴らしく、ロッシーでは絶対不可能な、ロスレスでなければ実現できないクオリティの高さである。

全体を通じて根本的な迫力不足を感じるような瞬間は皆無であり、同時にトランジェントの良さや細部の卓越した描写も両立されている。また、特に感銘を受けたのがティンパニやシンバルといった打楽器で、分厚い弦楽器や管楽器にまったく埋もれることなく、鮮烈に存在感を主張して曲の盛り上げに著しく貢献している。「子どもの魔法のつえ」では低弦楽器のキレの良さ、「火の鳥」ではダイナミックレンジの広さが特に印象的で、曲目としてもたいへん満足のいくものだった。

演奏の熱量や生々しい鮮度感も伝わってくる



休憩を挟んだ第2部は、1987年にNHK交響楽団が録音した『交響組曲「ドラゴンクエストV」そして伝説へ…』を全曲演奏するという内容。3の序曲にあたる「ロトのテーマ」から始まり、街やフィールド曲・ダンジョン曲を経て、かの有名な「勇者の挑戦」を含む戦闘曲、ラストはすぎやまこういち氏も会心の作と認める「そして伝説へ」。

筆者はドラクエの音源として『交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ』(東京都交響楽団版)を所有しているが、今回のライブ配信の満足度は完全にそれを上回っている。やはり各種打楽器の存在感が素晴らしく、音楽全体に鮮明さや躍動感をもたらしているのが大きい。「勇者の挑戦」から「そして伝説へ」いたるドラマチックな展開では、思わず鳥肌が立ってしまった。

同じく所有している96kHz/24bitハイレゾ版『交響組曲「ドラゴンクエストXI」過ぎ去りし時を求めて』と比べてもなお、トータルの音質では今回のライブ配信が上と言っても過言ではない。厳密なマスタリングを経ないリアルタイム配信だからこそ、良い意味で演奏の熱量や生々しい鮮度感がスポイルされることなく届けられた結果だろう。

小学生時代、小さなブラウン管テレビでリメイクのスーパーファミコン版ドラクエ3を遊んでいた筆者は、当然ながらゲーム内の打ち込み音源を聴いていたわけだが、思い出として刻み込まれた音は、機械的・技術的な制約を超越した遥かに壮大にして鮮烈なものだった。今回のコンサートのライブ配信は、当時の感動をあらためて呼び起こすに十分だった。

「音質を妥協しない」Live Extremeの大きな価値



コロナ禍を経てインターネットによるライブ配信は「定着」したと言えるが、残念なことに「音質」の扱いは低いままという状況が続いている。Apple MusicやAmazon Musicといった音楽サービスでは最大192kHz/24bitのハイレゾ配信が実現しているのに比べれば、ライブ配信における音質の本質的向上は後回しにされがちでもある。

無論、音声のロスレス化は直接的なビットレートの増大を招くため、コストも含めて様々な事情でおいそれと実現できるものではないことは重々承知している。そして、このような現実があるからこそ、「音質も妥協しない映像配信」を実現するLive Extremeには極めて大きな価値がある。今回のコンサートのライブ視聴を通じて、あらためてその思いを強くした。

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