ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ<番外編>
年末年始は親子で一緒に映画を観よう!子供の年齢別&大人も楽しめる珠玉のアニメ映画4選
人によっては最長9連休となる2024年〜2025年の年末年始。遠出される方もいれば、お家でゆっくり過ごされる方もいると思いますが、親子で一緒に映画を観る時間を設けてみるのはいかがでしょう。
とは言え、ご家庭によってお子様の年齢はさまざまですし、年末年始の貴重な時間を大して面白くもない映画を観るのに費やしたくないという方もいると思います。そこで、本記事ではお子様の年齢層別にオススメのアニメ映画をご紹介します。もちろん、子供だけではなく大人が観ても楽しめて、尚且つ、親子で観るからこそ意義のある良作映画を厳選させていただきました♪
『窓ぎわのトットちゃん』(2023年・日本)
■あらすじ
全世界累計2500万部超、20以上の言語で翻訳されている黒柳徹子の自伝的小説を、『映画ドラえもん』シリーズを多数手がけてきた八鍬新之介監督がアニメーション映画化。
落ち着きがないことを理由に転校を余儀なくされた小学1年生のトットちゃん(大野りりあな)は、東京・自由が丘にあるトモエ学園に通うことになる。大好きなパパ(小栗旬)とママ(杏)、どんな子供に対しても真摯な姿勢で向き合う小林校長(役所広司)、小児麻痺で身体が不自由な同級生・泰明ちゃん(松野晃士)など、さまざまな人々と関わっていく中で成長していくトットちゃん。そんな穏やかな日々が続いていくかと思われた矢先、戦争の影が忍び寄り……。
〜小学生のお子様とご一緒に。黒柳徹子の幼少時代を描く感動作〜
自分自身の幼少時代を振り返ってみた時、触れた漫画やアニメや童話、関わっていた人々や習慣が、大きく自身の人格形成に影響を及ぼしていることが分かると思う。だからこそ、幼い我が子にはより良い経験や出会いをもたらしたいと考えるのが親心。そんな思いを抱える親御さんに何がなんでもオススメしたいのがこの作品。
問題児扱いされて転校することになったトットちゃんや、身体が不自由な泰明ちゃんなど、大多数とは異なる何かを持つ者が差別の対象にされてしまうというのはよくある話。だが、人と違うことは決して間違いではなく、その人物の個性や強みになり得ること。そういった他者との違いを否定するのではなく、受け入れられることの大切さを本作は示していく。
また、お祭りの屋台で買ったひよこ、死へと至る病、戦争がもたらすものなどを通して、命の重さについても考えさせられる。それら道徳的な要素を多分に含んだ本作を幼い子供が目にしても、その全てを理解できるとは限らない。が、幼い頃にこの作品を観たという経験は、この先の人生においてきっと良き影響をもたらしてくれるに違いない。
たとえ今は理解が追いつかずとも、年齢や経験を重ねていく中で理解できるようになったり、同様の境遇に直面した際には道標にだってなってくれる。そして、本作は子供に対してだけではなく、大人に対してもさまざまな気づきを与えてくれる。子供とっても大人にとってもさまざまな刺激と涙もたらしてくれる感動作。見終えた後には、黒柳徹子さんに対する捉え方が大きく変わっているかもしれません。
『夜明け告げるルーのうた』(2017年・日本)
■あらすじ
『夜は短し歩けよ乙女』『きみと、波にのれたら』『犬王』などで知られる湯浅政明が監督を務め、国内外のさまざまな映画祭でノミネート・受賞を果たしたオリジナル長編作品。
両親の離婚により、東京から父親の地元である寂れた漁港の町へ越して来た中学生のカイ(下田翔大)。自分で作曲した音楽をネットにアップしたことをキッカケに、クラスメイトにバンドへの加入を求められる。そんな時、カイたちの音楽に引き寄せられて人魚のルー(谷花音)が現れる。ルーと仲良くなるカイたちであったが、町には人魚が災いをもたらすという古い言い伝えがあり……。
〜中学生のお子様とご一緒に。中学生の少年と人魚の少女の出会いがもたらす奇跡〜
精神的にも肉体的にも未発達で、思春期真っ盛りの中学時代。世の中のルールもまだよく分からず、家と学校での人間関係が大半を占めていて、小学生時代のように幼いままでもいられず、かといって高校生ほど大人にも近づけない。つまりは、中学時代に過ごす時間が最も身動きが取りづらく、それでいて、その後歩む人生の道筋を左右する土台作りのような期間にいるのではないでしょうか。
それを指し示すかのように、カイたちはまだ純粋で、良くも悪くも何色にでも染まっていく可能性を秘めている。人魚であるルーの存在も容易く受け入れ、音楽を通して友情(愛情)を育んでいく。その人間模様がたまらなく微笑ましく美しい反面、人魚を前に奇異の目を向ける大人たちは極めて俗世的。町の言い伝えも相まって、人魚に対して恐怖の目を向ける者もいれば、商用利用を考える者、野次馬根性で覗きに来る者など、純粋さの欠片もない。
しかし、大人になってしまえばそちらの思考へ至りやすいのも確か。かつて誰もが持ち合わせていたはずの純粋さは、次第に鳴りを潜めていく。それこそが大人になること、社会へ出ること、生きていくということなのかもしれない。そんな子供と大人の対比を見せつける本作は、中学生のお子様が観れば自分自身をカイたちに重ね合わせられるのと同時に、自分のやりたいこと、熱を注げる何かを見出す登場人物の姿を通して、何かしらのキッカケを得たり、背中を押してもらえるかもしれません。
そして、大人が観たのなら、失われてしまった純粋さを嘆きつつも、その上でどう生きていくのか、どう子供たちの見本になるのかを考えさせられることでしょう。見終えた後には、主題歌であり、劇中でも印象的に使用されている斉藤和義の楽曲「歌うたいのバラッド」が聴くたくなってしまうこと間違いなし♪
『空の青さを知る人よ』(2019年・日本)
■あらすじ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『ふれる。』などで知られる、監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀からなるアニメ制作チーム「超平和バスターズ」のオリジナル長編作品。
大好きなベースを弾いてばかりで、高校2年生のあおい(若山詩音)は、卒業後は進学も就職もせず、東京へ出てバンドを組むと決めている。市役所で働く31歳の姉・あかね(吉岡里帆)は、そんな妹が心配でたまらない。2人は13年前に交通事故で両親を亡くし、当時高校3年生だったあかねは、バンドマンの恋人・慎之介(吉沢亮)と共に上京する約束を断念。地元で就職して、妹の親代わりを務めてきた。
そして、自分を育てるために夢も恋愛も諦めてきた姉に対し、あおいは負い目を感じていた。そんな折、大物歌手が出演する町の音楽祭に、音信不通であった慎之介がバックミュージシャンとして参加することになり帰ってくるのだが、時を同じくして、13年前の姿をした慎之介があおいの前に現れる……。
〜高校生のお子様とご一緒に。支えてくれる人に対しての感謝の気持ち〜
主人公であるあおいが高校生であるように、高校生、それも受験や進路について考えなければならないタイミングが訪れているお子様を持つご家庭にオススメしたい本作。あらすじからも読み取れるように、本作の鑑賞を通して、進路について親子で会話する機会を生み出しやすくなるのと同時に、劇中では姉妹関係であるものの、親代わりを務めてきたあかねとあおいの関係性を通して、育ててきてくれた親への感謝も存分に感じてもらうことができるはず。
また、本作の魅力のひとつであり、ファンタジー要素でもある13年前の「しんの」こと慎之介の存在が、目にする大人の心を強く揺さぶってくれることでしょう。18歳の頃に思い描いた未来の自分と今の自分。それがピッタリ一致している人なんて、きっと数える程しか存在しない。良くも悪くも思い描いた通りの人生を歩めない人がほとんどで、誰もが折り合いをつけながら、より良き“今”を築いてきたに違いない。
が、もしあの頃の自分が今の自分を見たのなら、一体どんな風に思うのだろう……。姉妹のドラマだけではなく、過去と現在の2人の慎之介が生み出すドラマも描かれているからこそ、より濃密で多層的なドラマが形成されている本作は、高校生のお子様が観ても、親である大人が観ても、何か感じ入るものがあるはず。
『Ultraman: Rising』(2024年・日本/アメリカ)
■あらすじ
日本が生んだ円谷の特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、Netflixオリジナル作品として日米合作で製作したCGアニメーション。野球選手として活躍するサトウ・ケン(山田裕貴)には、「ウルトラマン」に変身して地球の平和を守るというもう一つの顔がある。
野球選手とヒーローの両立に苦労しながらも日々を過ごしていたある日、成り行きで怪獣の赤ちゃんを助けるケン。自分のことを親だと思っている赤ちゃん怪獣の世話も加わり、野球もウルトラマンとしての活動もままならず疲弊していくケンであったが……。
〜大学生以上のお子様とご一緒に。大人になってこそ理解が及ぶ親の苦労〜
大学生や社会人ともなれば、親元を離れ、一人暮らしをしたり自立していく子供が増えていく。親子関係も家庭によってさまざまなので、離れて暮らしていても頻繁に連絡を取り合う親子もいれば、年に数回顔を合わせるだけ、場合によっては疎遠になってしまっているという方もいるでしょう。ケンの場合はどうだろう。かつてウルトラマンとして地球の平和を守っていたケンの父親(小日向文世)は、その使命を果たすために家族と離れて暮らす道を選択した。結果、ケンとの親子関係が破綻してしまう。
「私と仕事、どっちが大切なの?」という決まり文句があるが、家族と共に過ごす時間とウルトラマンとしての使命、その二択を迫られた結果である。そして、大人になったケンもまた、野球選手とウルトラマンと育児の中で選択を迫られる。そう、大人になってみなければ、自分も同じ状況に陥らなければ、理解できないことや気がつけないことが人生には山ほどある。
そうして父親との雪解けのキッカケを得て、変化・成長していくケンの親子関係を描きつつ、「ウルトラマン」としてのアクション性やエンタメ性も両立させているのが本作の魅力的なところ。「一緒に観よう」と気軽に言える間柄であれば問題ないが、そうでなかった場合には、しれっと本作を流し、劇中で繰り広げられる人間ドラマを通して子供に対する思いを伝えるのも一つの手。子供向けのアニメーション作品だと油断していたら、大きなしっぺ返しを喰らう秀作です。
◇
気になる作品はありましたか?定義はさまざまありますし、作品の出来不出来に大きく左右される部分もありますが、映画とは人生におけるエモーショナルな瞬間を切り取り凝縮させたものであると私は考えます。
その熱が目にする者の心に刺激を与え、実人生における活力や何かしらのキッカケをもたらしてくれる。こと今回ご紹介した4作品に関しては、子供の成長の上でも、より良き親子関係を模索する上でも、たくさんの刺激を与えてくれると思います。それでは、良き年末年始をご家族でお過ごしください♪
(C) 黒柳徹子/2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
(C) 2017 ルー製作委員会
(C) 2019 SORAAO PROJECT
(C) 2024 Netflix, Inc.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
とは言え、ご家庭によってお子様の年齢はさまざまですし、年末年始の貴重な時間を大して面白くもない映画を観るのに費やしたくないという方もいると思います。そこで、本記事ではお子様の年齢層別にオススメのアニメ映画をご紹介します。もちろん、子供だけではなく大人が観ても楽しめて、尚且つ、親子で観るからこそ意義のある良作映画を厳選させていただきました♪
『窓ぎわのトットちゃん』(2023年・日本)
(配信:Netflix)
■あらすじ
全世界累計2500万部超、20以上の言語で翻訳されている黒柳徹子の自伝的小説を、『映画ドラえもん』シリーズを多数手がけてきた八鍬新之介監督がアニメーション映画化。
落ち着きがないことを理由に転校を余儀なくされた小学1年生のトットちゃん(大野りりあな)は、東京・自由が丘にあるトモエ学園に通うことになる。大好きなパパ(小栗旬)とママ(杏)、どんな子供に対しても真摯な姿勢で向き合う小林校長(役所広司)、小児麻痺で身体が不自由な同級生・泰明ちゃん(松野晃士)など、さまざまな人々と関わっていく中で成長していくトットちゃん。そんな穏やかな日々が続いていくかと思われた矢先、戦争の影が忍び寄り……。
〜小学生のお子様とご一緒に。黒柳徹子の幼少時代を描く感動作〜
自分自身の幼少時代を振り返ってみた時、触れた漫画やアニメや童話、関わっていた人々や習慣が、大きく自身の人格形成に影響を及ぼしていることが分かると思う。だからこそ、幼い我が子にはより良い経験や出会いをもたらしたいと考えるのが親心。そんな思いを抱える親御さんに何がなんでもオススメしたいのがこの作品。
問題児扱いされて転校することになったトットちゃんや、身体が不自由な泰明ちゃんなど、大多数とは異なる何かを持つ者が差別の対象にされてしまうというのはよくある話。だが、人と違うことは決して間違いではなく、その人物の個性や強みになり得ること。そういった他者との違いを否定するのではなく、受け入れられることの大切さを本作は示していく。
また、お祭りの屋台で買ったひよこ、死へと至る病、戦争がもたらすものなどを通して、命の重さについても考えさせられる。それら道徳的な要素を多分に含んだ本作を幼い子供が目にしても、その全てを理解できるとは限らない。が、幼い頃にこの作品を観たという経験は、この先の人生においてきっと良き影響をもたらしてくれるに違いない。
たとえ今は理解が追いつかずとも、年齢や経験を重ねていく中で理解できるようになったり、同様の境遇に直面した際には道標にだってなってくれる。そして、本作は子供に対してだけではなく、大人に対してもさまざまな気づきを与えてくれる。子供とっても大人にとってもさまざまな刺激と涙もたらしてくれる感動作。見終えた後には、黒柳徹子さんに対する捉え方が大きく変わっているかもしれません。
『夜明け告げるルーのうた』(2017年・日本)
(配信:U-NEXT )
■あらすじ
『夜は短し歩けよ乙女』『きみと、波にのれたら』『犬王』などで知られる湯浅政明が監督を務め、国内外のさまざまな映画祭でノミネート・受賞を果たしたオリジナル長編作品。
両親の離婚により、東京から父親の地元である寂れた漁港の町へ越して来た中学生のカイ(下田翔大)。自分で作曲した音楽をネットにアップしたことをキッカケに、クラスメイトにバンドへの加入を求められる。そんな時、カイたちの音楽に引き寄せられて人魚のルー(谷花音)が現れる。ルーと仲良くなるカイたちであったが、町には人魚が災いをもたらすという古い言い伝えがあり……。
〜中学生のお子様とご一緒に。中学生の少年と人魚の少女の出会いがもたらす奇跡〜
精神的にも肉体的にも未発達で、思春期真っ盛りの中学時代。世の中のルールもまだよく分からず、家と学校での人間関係が大半を占めていて、小学生時代のように幼いままでもいられず、かといって高校生ほど大人にも近づけない。つまりは、中学時代に過ごす時間が最も身動きが取りづらく、それでいて、その後歩む人生の道筋を左右する土台作りのような期間にいるのではないでしょうか。
それを指し示すかのように、カイたちはまだ純粋で、良くも悪くも何色にでも染まっていく可能性を秘めている。人魚であるルーの存在も容易く受け入れ、音楽を通して友情(愛情)を育んでいく。その人間模様がたまらなく微笑ましく美しい反面、人魚を前に奇異の目を向ける大人たちは極めて俗世的。町の言い伝えも相まって、人魚に対して恐怖の目を向ける者もいれば、商用利用を考える者、野次馬根性で覗きに来る者など、純粋さの欠片もない。
しかし、大人になってしまえばそちらの思考へ至りやすいのも確か。かつて誰もが持ち合わせていたはずの純粋さは、次第に鳴りを潜めていく。それこそが大人になること、社会へ出ること、生きていくということなのかもしれない。そんな子供と大人の対比を見せつける本作は、中学生のお子様が観れば自分自身をカイたちに重ね合わせられるのと同時に、自分のやりたいこと、熱を注げる何かを見出す登場人物の姿を通して、何かしらのキッカケを得たり、背中を押してもらえるかもしれません。
そして、大人が観たのなら、失われてしまった純粋さを嘆きつつも、その上でどう生きていくのか、どう子供たちの見本になるのかを考えさせられることでしょう。見終えた後には、主題歌であり、劇中でも印象的に使用されている斉藤和義の楽曲「歌うたいのバラッド」が聴くたくなってしまうこと間違いなし♪
『空の青さを知る人よ』(2019年・日本)
(配信:Amazon Prime Video / Netflix / hulu / U-NEXT )
■あらすじ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『ふれる。』などで知られる、監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀からなるアニメ制作チーム「超平和バスターズ」のオリジナル長編作品。
大好きなベースを弾いてばかりで、高校2年生のあおい(若山詩音)は、卒業後は進学も就職もせず、東京へ出てバンドを組むと決めている。市役所で働く31歳の姉・あかね(吉岡里帆)は、そんな妹が心配でたまらない。2人は13年前に交通事故で両親を亡くし、当時高校3年生だったあかねは、バンドマンの恋人・慎之介(吉沢亮)と共に上京する約束を断念。地元で就職して、妹の親代わりを務めてきた。
そして、自分を育てるために夢も恋愛も諦めてきた姉に対し、あおいは負い目を感じていた。そんな折、大物歌手が出演する町の音楽祭に、音信不通であった慎之介がバックミュージシャンとして参加することになり帰ってくるのだが、時を同じくして、13年前の姿をした慎之介があおいの前に現れる……。
〜高校生のお子様とご一緒に。支えてくれる人に対しての感謝の気持ち〜
主人公であるあおいが高校生であるように、高校生、それも受験や進路について考えなければならないタイミングが訪れているお子様を持つご家庭にオススメしたい本作。あらすじからも読み取れるように、本作の鑑賞を通して、進路について親子で会話する機会を生み出しやすくなるのと同時に、劇中では姉妹関係であるものの、親代わりを務めてきたあかねとあおいの関係性を通して、育ててきてくれた親への感謝も存分に感じてもらうことができるはず。
また、本作の魅力のひとつであり、ファンタジー要素でもある13年前の「しんの」こと慎之介の存在が、目にする大人の心を強く揺さぶってくれることでしょう。18歳の頃に思い描いた未来の自分と今の自分。それがピッタリ一致している人なんて、きっと数える程しか存在しない。良くも悪くも思い描いた通りの人生を歩めない人がほとんどで、誰もが折り合いをつけながら、より良き“今”を築いてきたに違いない。
が、もしあの頃の自分が今の自分を見たのなら、一体どんな風に思うのだろう……。姉妹のドラマだけではなく、過去と現在の2人の慎之介が生み出すドラマも描かれているからこそ、より濃密で多層的なドラマが形成されている本作は、高校生のお子様が観ても、親である大人が観ても、何か感じ入るものがあるはず。
『Ultraman: Rising』(2024年・日本/アメリカ)
(配信:Netflix )
■あらすじ
日本が生んだ円谷の特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、Netflixオリジナル作品として日米合作で製作したCGアニメーション。野球選手として活躍するサトウ・ケン(山田裕貴)には、「ウルトラマン」に変身して地球の平和を守るというもう一つの顔がある。
野球選手とヒーローの両立に苦労しながらも日々を過ごしていたある日、成り行きで怪獣の赤ちゃんを助けるケン。自分のことを親だと思っている赤ちゃん怪獣の世話も加わり、野球もウルトラマンとしての活動もままならず疲弊していくケンであったが……。
〜大学生以上のお子様とご一緒に。大人になってこそ理解が及ぶ親の苦労〜
大学生や社会人ともなれば、親元を離れ、一人暮らしをしたり自立していく子供が増えていく。親子関係も家庭によってさまざまなので、離れて暮らしていても頻繁に連絡を取り合う親子もいれば、年に数回顔を合わせるだけ、場合によっては疎遠になってしまっているという方もいるでしょう。ケンの場合はどうだろう。かつてウルトラマンとして地球の平和を守っていたケンの父親(小日向文世)は、その使命を果たすために家族と離れて暮らす道を選択した。結果、ケンとの親子関係が破綻してしまう。
「私と仕事、どっちが大切なの?」という決まり文句があるが、家族と共に過ごす時間とウルトラマンとしての使命、その二択を迫られた結果である。そして、大人になったケンもまた、野球選手とウルトラマンと育児の中で選択を迫られる。そう、大人になってみなければ、自分も同じ状況に陥らなければ、理解できないことや気がつけないことが人生には山ほどある。
そうして父親との雪解けのキッカケを得て、変化・成長していくケンの親子関係を描きつつ、「ウルトラマン」としてのアクション性やエンタメ性も両立させているのが本作の魅力的なところ。「一緒に観よう」と気軽に言える間柄であれば問題ないが、そうでなかった場合には、しれっと本作を流し、劇中で繰り広げられる人間ドラマを通して子供に対する思いを伝えるのも一つの手。子供向けのアニメーション作品だと油断していたら、大きなしっぺ返しを喰らう秀作です。
気になる作品はありましたか?定義はさまざまありますし、作品の出来不出来に大きく左右される部分もありますが、映画とは人生におけるエモーショナルな瞬間を切り取り凝縮させたものであると私は考えます。
その熱が目にする者の心に刺激を与え、実人生における活力や何かしらのキッカケをもたらしてくれる。こと今回ご紹介した4作品に関しては、子供の成長の上でも、より良き親子関係を模索する上でも、たくさんの刺激を与えてくれると思います。それでは、良き年末年始をご家族でお過ごしください♪
(C) 黒柳徹子/2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
(C) 2017 ルー製作委員会
(C) 2019 SORAAO PROJECT
(C) 2024 Netflix, Inc.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。 |