ユニット、素材、製造技術にこだわりを見せるコンパクト・スピーカー誕生
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入力端子はバナナプラグ対応。バスレフポートは背面上部に配置されている |
10cmフルレンジユニットを搭載したキューブ型のAP5001と同じユニットを使用し、ムラタ製のスーパートゥイーターを加えた構成である。キャビネットはフジゲン製で、バイオリン響体設計の概念と、弦楽器の製作技術が活用されている。
フロントバッフルは無垢のメイプル材からラウンド状に加工。側板その他の部材は全てマホガニーの単板で、やはり厚板から削り出した作りだ。この側板も奥へ向かって微妙にラウンドしている。これらの板材は三方留めで一体化される。
ユニットの取り付けには、もちろん特許マイクロピュア・テクノロジーが採用されている。キャビネットとの間にごくわずかな隙間を空け、振動板の過剰な負荷を軽減して低域を伸張させる独自の技術である。
仕上げはマホガニー。直接木の質感が感じられるクリア塗装である。楽器を思わせるナチュラルで丁寧な仕上がりといっていい。
サイズは極めて小さい。ユニット自体が10cmのフルレンジである。トゥイーターは高域を補うためで、音としてはフルレンジが基本になっていると考えていい。
大口径ウーファーでも難しい低域の質感を無理なく再現
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バック工芸社製の専用スタンドも用意された
「Basic302」
84,000円(ペア・税込) |
このようなサイズだが、見かけからは分からない豊かな鳴り方が印象的である。特に低域の再現性は見事で、ウッドベースやバスドラムのどっしりとした手応えを確実に描き出す。大口径ウーファーでも難しい質感の再現を無理なく実現していることに驚かされるのだ。ピアノのタッチもソリッドに引き締まり、広いレンジにわたって立ち上がりの速いエネルギーが行き渡っているように思える。ラスベガスのCESで好評を博したということだが、それもうなずける再現力である。
ボーイソプラノも音数が豊富でニュアンスに満ち、奥行きの深い空間性を得ている。存在感の高い再現と言ってよく、ハーモニーの緻密な重なり方にも基本性能の高さが窺える。
オーケストラは陰影の深い表現であり、楽器それぞれの表情が色濃く描かれる。アンプの選択など鳴らし方によって音場の広がりはさらに得られるはずだ。
ボーカルはたっぷりとした鳴り方で、声の表情もきめ細かく捉えている。ドラムやベースの存在感も高い。緻密で音離れがよく、誰が聴いても驚くはずである。
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