公開日 2015/06/10 17:00
国内初”ハイレゾでデビュー”するシンガーソングライター丸本莉子の戦略とは?
■音源リリースの選択肢として定着しつつあるハイレゾ
CDよりも圧倒的に情報量が多く、スタジオで録音されたマスター音源により近い音で楽しめることが特徴であるハイレゾ音源。当初タイトル数や再生できるオーディオ機器も限られていたが、ここ数年で状況は一変した。国内外のメジャーアーティストたちがハイレゾでの配信をスタートしたほか、ミニコンポやポータブルプレーヤーでもハイレゾが再生できるモデルが増えた。スマートフォンなど身近な機器でも“ハイレゾ対応"を謳うものが多くなってきている。昨年頃よりも注目度は一気に上昇し、テレビや新聞、一般紙などでも「ハイレゾ」という言葉に触れる機会が増えてきた。
ハイレゾがアーティスト/リスナー双方にもたらす大きなメリットは、「スタジオで録音されたマスター音源に限りなく近い音が家庭でも楽しめる」ということだ。取材で様々なアーティストにお話しを伺うと、「まるでスタジオでプレイバックした音を聴いているようだ」というコメントをよく聞く。アーティストの意図をメディアに縛られることなく忠実に伝えられるハイレゾ配信は、新作をリリースするための新しい選択肢として確実に定着しつつある。
■史上初“ハイレゾでデビュー”を果たす新人アーティストが登場
そんななか、「ハイレゾでデビュー」という史上初の試みに挑戦するアーティストが登場した。彼女の名前は丸本莉子(まるもと りこ)。広島県出身。インディーズ時代にCMやキャンペーンソングなどを多数手掛け、高い評価を得ていたアーティストであり、耳に残るメロディと深みのある声質、確かな歌唱力が魅力だ。
丸本が所属するのは、ビクターエンタテインメントの新レーベル「AndRec」(関連ニュース)だ。AndRecは、ビクターエンタテインメントの配信向けデジタルコンテンツの営業・編成・プロモーションを行うデジタルビジネス部が独自に立ち上げた。デジタルビジネス部は通常、自社音源等の配信やSNS展開といった業務を担当する部門で、独自レーベルを立ち上げるというのは国内でも非常に珍しいケースだ。
AndRecが狙うのは、変化するライフスタイルに寄り添って、デジタルマーケットを中心に置きながらリスナーに支持される音楽を最適なかたちで提供すること。アーティストの契約・育成から音源制作、プロモーションまでトータルで行うことで、柔軟かつ創作的な音楽活動をフォローしていくという。
このAndRecが第一弾アーティストとして送り出す丸本莉子は、メジャーデビュー曲「ココロ予報」を本日6月10日からハイレゾ配信するのを皮切りに、通常配信(7月8日スタート)やCDミニアルバム発売などを行っていく予定だ。
▼ココロ予報 / 丸本莉子(ハイレゾ版 期間限定価格250円)
・HD-Music.:http://hd-music.info/album.cgi/VI/VE5HD-17771
■なぜ“ハイレゾでデビュー"なのか?
しかし、ハイレゾの注目度が上がっているとは言え、CDと比べればまだまだ試聴環境を持っているリスナーは少ないのが現実だ。せっかくのメジャーデビューであれば、より多くの方にリーチする戦略をとるのが一般的であろう。AndRecはなぜ、今回の「ハイレゾレビュー」という試みを行うのだろうか。レーベル長を務める今井一成氏は、現在の音楽市場におけるハイレゾの位置づけについて以下のように分析する。
「iTunesやレコチョク、mora等での音楽配信に比べると、ハイレゾ配信はまだまだ規模が小さいのは事実です。しかし、今年の3月に小泉今日子のシングルが一挙にハイレゾ化された時には、各サイトの週間チャートをキョンキョンのハイレゾシングルが占拠しました。ハイレゾは当初、ジャズやクラシックのような、音にこだわる一部の音楽ファン向けというイメージがありましたが、現在はより幅広い音楽ジャンルのファンに支持され始めています。今後は、利便性重視でいつでもどこでも音楽を手軽に楽しみたい音楽ファン向けの<サブスクリプションサービス>と、高音質で音楽をコレクションしたいという音楽ファン向け<ハイレゾ配信>の二極化が進むと考えられます」
その上で、今井氏はハイレゾデビューを実際に行うアーティストとして丸本莉子を選んだ理由をこう語る。
「初めて彼女の曲を聴いた時、特徴的な声質や生々しく感情的なブレスに惹き付けられました。そして独特の雰囲気と共に、新鮮さも感じたのです。レーベル設立時から、歌をしっかりとリスナーに届けられるアーティストをまずはデビューさせたいという想いがあり、まさに丸本莉子がそれに当てはまると思ったのです。息継ぎや呼吸、緊張感など彼女の魅力である細かいディテール全てを出せるのはハイレゾしかないと考え、ハイレゾデビューさせることを決めました」
ハイレゾでメジャーデビューという前例のないリリースも、契約から録音、プロモーションまで一気通貫で行うAndRecにおいては、非常にスピーディーに決断が行われたのだという。
■ハイレゾだといっそう味わい深さが増す、丸本莉子の歌声
「ココロ予報」は、インディーズ時代からファンの間で人気の高い曲。広島ホームテレビのショート・ドキュメンタリー番組「雨のち晴れ」の主題歌にも使用された。ピアノやストリングスを中心としたシンプルでアコースティックな楽器編成に、透明感のある外見からは想像もつかない、独特の深みを持った丸本莉子の歌声が乗る。年代を問わず、どんな人の心にも安らぎや幸福感といった感覚をもたらしてくれる音楽だと感じる。
なお、今回のハイレゾでのデビューにあたっては、演奏・歌ともに新たにレコーディングが行われた。当初はメジャーデビューの緊張のため、なかなか思いどおりに歌えなかったという丸本。数日空けて再度録り直しが実施された際には、日付が変わるまでスタジオにこもり、時間ギリギリまで試行錯誤を繰り返して楽曲を作り上げたのだという。その結果できあがった今回の音源は、今井レーベル長も「自信を持ってハイレゾで届けられる、彼女らしい『ココロ予報』に仕上げることができました」と太鼓判を押す。
「高校2年生から音楽活動を始めて、ずっとメジャーデビューに憧れていました。でもまさかあの頃は本当にできるなんて思っていなくて…デビューが決まった時も都合の良い夢を見ているんじゃないか?! というくらい、素直に信じられませんでした。」とメジャーデビューを喜ぶ丸本莉子。これまでハイレゾを聴いたことはなかったが、ビクタースタジオでハイレゾ/CD/MP3を聴き比べてみて、ハイレゾの可能性を実感したのだという。「ハイレゾの自然な音の広がりに、スタジオで録音したときの感覚が蘇りました」と素直な驚きと喜びを語っていた。
「ストリングスを生でレコーディングするのは初めての経験だったのですが、スタジオに広がるストリングスのサウンドには本当に感動しました。ハイレゾでは、私がレコーディングのときに感じたストリングスサウンドの広がりや質感がそのままに表現されています。皆さんにもゾクゾクするような生音の緊張感を味わって欲しいです!」
最後に、今回のハイレゾデビューにかける想いを丸本莉子に聞いた。
「ここまで来られたのはもちろん私一人の力ではなく、沢山の人が応援してくれて、支えてくださったからです。そのことを忘れずに、ようやくスタートラインに立ったという気持ちでこれからも歌っていきたいと思います! 今回のハイレゾデビューもそうですが、インパクトのあること、おもしろいことを楽しく追及して、『丸本やるね〜、そう来たか!!』って良い意味で裏切っていきたいです!! (笑)」
◇ ◇ ◇
今回のハイレゾ先行配信シングルは250円(税抜・期間限定価格)。これはiTunes Storeで配信されているAAC音源とほぼ同じだ。まずハイレゾ音源を手頃な価格でリリースし、声の魅力・音楽の魅力をより深く体験してもらうことは、ほんとうに実力のあるアーティストにとっては、有効な戦略のひとつになり得るかもしれない。ハイレゾ時代に突入し、録音やマスタリングなどの部分で「音楽の作り方が変わった」という声を聞くが、「音楽の売り方」も、これから変わっていくのかも知れない。
CDよりも圧倒的に情報量が多く、スタジオで録音されたマスター音源により近い音で楽しめることが特徴であるハイレゾ音源。当初タイトル数や再生できるオーディオ機器も限られていたが、ここ数年で状況は一変した。国内外のメジャーアーティストたちがハイレゾでの配信をスタートしたほか、ミニコンポやポータブルプレーヤーでもハイレゾが再生できるモデルが増えた。スマートフォンなど身近な機器でも“ハイレゾ対応"を謳うものが多くなってきている。昨年頃よりも注目度は一気に上昇し、テレビや新聞、一般紙などでも「ハイレゾ」という言葉に触れる機会が増えてきた。
ハイレゾがアーティスト/リスナー双方にもたらす大きなメリットは、「スタジオで録音されたマスター音源に限りなく近い音が家庭でも楽しめる」ということだ。取材で様々なアーティストにお話しを伺うと、「まるでスタジオでプレイバックした音を聴いているようだ」というコメントをよく聞く。アーティストの意図をメディアに縛られることなく忠実に伝えられるハイレゾ配信は、新作をリリースするための新しい選択肢として確実に定着しつつある。
■史上初“ハイレゾでデビュー”を果たす新人アーティストが登場
そんななか、「ハイレゾでデビュー」という史上初の試みに挑戦するアーティストが登場した。彼女の名前は丸本莉子(まるもと りこ)。広島県出身。インディーズ時代にCMやキャンペーンソングなどを多数手掛け、高い評価を得ていたアーティストであり、耳に残るメロディと深みのある声質、確かな歌唱力が魅力だ。
丸本が所属するのは、ビクターエンタテインメントの新レーベル「AndRec」(関連ニュース)だ。AndRecは、ビクターエンタテインメントの配信向けデジタルコンテンツの営業・編成・プロモーションを行うデジタルビジネス部が独自に立ち上げた。デジタルビジネス部は通常、自社音源等の配信やSNS展開といった業務を担当する部門で、独自レーベルを立ち上げるというのは国内でも非常に珍しいケースだ。
AndRecが狙うのは、変化するライフスタイルに寄り添って、デジタルマーケットを中心に置きながらリスナーに支持される音楽を最適なかたちで提供すること。アーティストの契約・育成から音源制作、プロモーションまでトータルで行うことで、柔軟かつ創作的な音楽活動をフォローしていくという。
このAndRecが第一弾アーティストとして送り出す丸本莉子は、メジャーデビュー曲「ココロ予報」を本日6月10日からハイレゾ配信するのを皮切りに、通常配信(7月8日スタート)やCDミニアルバム発売などを行っていく予定だ。
▼ココロ予報 / 丸本莉子(ハイレゾ版 期間限定価格250円)
・HD-Music.:http://hd-music.info/album.cgi/VI/VE5HD-17771
■なぜ“ハイレゾでデビュー"なのか?
しかし、ハイレゾの注目度が上がっているとは言え、CDと比べればまだまだ試聴環境を持っているリスナーは少ないのが現実だ。せっかくのメジャーデビューであれば、より多くの方にリーチする戦略をとるのが一般的であろう。AndRecはなぜ、今回の「ハイレゾレビュー」という試みを行うのだろうか。レーベル長を務める今井一成氏は、現在の音楽市場におけるハイレゾの位置づけについて以下のように分析する。
「iTunesやレコチョク、mora等での音楽配信に比べると、ハイレゾ配信はまだまだ規模が小さいのは事実です。しかし、今年の3月に小泉今日子のシングルが一挙にハイレゾ化された時には、各サイトの週間チャートをキョンキョンのハイレゾシングルが占拠しました。ハイレゾは当初、ジャズやクラシックのような、音にこだわる一部の音楽ファン向けというイメージがありましたが、現在はより幅広い音楽ジャンルのファンに支持され始めています。今後は、利便性重視でいつでもどこでも音楽を手軽に楽しみたい音楽ファン向けの<サブスクリプションサービス>と、高音質で音楽をコレクションしたいという音楽ファン向け<ハイレゾ配信>の二極化が進むと考えられます」
その上で、今井氏はハイレゾデビューを実際に行うアーティストとして丸本莉子を選んだ理由をこう語る。
「初めて彼女の曲を聴いた時、特徴的な声質や生々しく感情的なブレスに惹き付けられました。そして独特の雰囲気と共に、新鮮さも感じたのです。レーベル設立時から、歌をしっかりとリスナーに届けられるアーティストをまずはデビューさせたいという想いがあり、まさに丸本莉子がそれに当てはまると思ったのです。息継ぎや呼吸、緊張感など彼女の魅力である細かいディテール全てを出せるのはハイレゾしかないと考え、ハイレゾデビューさせることを決めました」
ハイレゾでメジャーデビューという前例のないリリースも、契約から録音、プロモーションまで一気通貫で行うAndRecにおいては、非常にスピーディーに決断が行われたのだという。
■ハイレゾだといっそう味わい深さが増す、丸本莉子の歌声
「ココロ予報」は、インディーズ時代からファンの間で人気の高い曲。広島ホームテレビのショート・ドキュメンタリー番組「雨のち晴れ」の主題歌にも使用された。ピアノやストリングスを中心としたシンプルでアコースティックな楽器編成に、透明感のある外見からは想像もつかない、独特の深みを持った丸本莉子の歌声が乗る。年代を問わず、どんな人の心にも安らぎや幸福感といった感覚をもたらしてくれる音楽だと感じる。
なお、今回のハイレゾでのデビューにあたっては、演奏・歌ともに新たにレコーディングが行われた。当初はメジャーデビューの緊張のため、なかなか思いどおりに歌えなかったという丸本。数日空けて再度録り直しが実施された際には、日付が変わるまでスタジオにこもり、時間ギリギリまで試行錯誤を繰り返して楽曲を作り上げたのだという。その結果できあがった今回の音源は、今井レーベル長も「自信を持ってハイレゾで届けられる、彼女らしい『ココロ予報』に仕上げることができました」と太鼓判を押す。
「高校2年生から音楽活動を始めて、ずっとメジャーデビューに憧れていました。でもまさかあの頃は本当にできるなんて思っていなくて…デビューが決まった時も都合の良い夢を見ているんじゃないか?! というくらい、素直に信じられませんでした。」とメジャーデビューを喜ぶ丸本莉子。これまでハイレゾを聴いたことはなかったが、ビクタースタジオでハイレゾ/CD/MP3を聴き比べてみて、ハイレゾの可能性を実感したのだという。「ハイレゾの自然な音の広がりに、スタジオで録音したときの感覚が蘇りました」と素直な驚きと喜びを語っていた。
「ストリングスを生でレコーディングするのは初めての経験だったのですが、スタジオに広がるストリングスのサウンドには本当に感動しました。ハイレゾでは、私がレコーディングのときに感じたストリングスサウンドの広がりや質感がそのままに表現されています。皆さんにもゾクゾクするような生音の緊張感を味わって欲しいです!」
最後に、今回のハイレゾデビューにかける想いを丸本莉子に聞いた。
「ここまで来られたのはもちろん私一人の力ではなく、沢山の人が応援してくれて、支えてくださったからです。そのことを忘れずに、ようやくスタートラインに立ったという気持ちでこれからも歌っていきたいと思います! 今回のハイレゾデビューもそうですが、インパクトのあること、おもしろいことを楽しく追及して、『丸本やるね〜、そう来たか!!』って良い意味で裏切っていきたいです!! (笑)」
今回のハイレゾ先行配信シングルは250円(税抜・期間限定価格)。これはiTunes Storeで配信されているAAC音源とほぼ同じだ。まずハイレゾ音源を手頃な価格でリリースし、声の魅力・音楽の魅力をより深く体験してもらうことは、ほんとうに実力のあるアーティストにとっては、有効な戦略のひとつになり得るかもしれない。ハイレゾ時代に突入し、録音やマスタリングなどの部分で「音楽の作り方が変わった」という声を聞くが、「音楽の売り方」も、これから変わっていくのかも知れない。
関連リンク
トピック
クローズアップCLOSEUP
-
【読者限定クーポンあり】多彩なコーデックと強力なANCで快適リスニング!「EarFun Air Pro 4」レビュー
-
ソニーの新ながら聴きイヤホン「LinkBuds Fit」徹底レビュー!スピーカーとも連携
-
JMGOの中核機が正統進化!4Kプロジェクター「N1S Pro 4K」は映画ファンの期待に応える完成度
-
好きな映像への没入感がトップクラス!大画面・4K有機ELテレビの最高峰、LG「OLED G4」徹底レビュー
-
オープンイヤー型に特化した音響設計。AVIOTの“ながら聴き”完全ワイヤレス「TE-H1」レビュー
-
ソニー「BRAVIA Theatre Quad」“本格”シアターを“手軽に”実現
-
ソニー「BRAVIA Theatre Bar 9/Bar 8」は「リビングシアターの理想形」
アクセスランキング
RANKING
11/1 9:27 更新