公開日 2017/07/05 10:21
ハイレゾ配信「KRIPTON HQM」なぜ終了? クリプトン濱田社長に理由を聞いた
オーディオ分野で次の挑戦へ
日本におけるハイレゾ配信サイトの先駆け的存在であり、DRMフリー配信を国内でいち早く実現したKRIPTON HQMが、7月31日をもってサービスを終了する。KRIPTON HQMを手がけるクリプトンは、サービス終了にあたりどのように決断を行ったのか。また、今後クリプトンはオーディオ事業をどのように展開していくのか。同社代表取締役社長の濱田正久氏のコメントを掲載したい。
ーー KRIPTON HQMのサービスを7月31日に終了すると発表しました。サービス終了の理由について、そして今後の御社のオーディオ事業の展望についてお話を伺えればと思います。
濱田氏 クリプトンは、DRMフリーのハイレゾ配信をはじめ、ハイレゾ対応アクティブスピーカー、BDオーディオ、エンコードも含めたMQA配信とMQAデコード対応機器の提供に至るまで、常に“初めてのこと”を実現してきました。
そのなかのひとつである「KRIPTON HQM STORE」が、国内初となる全タイトルDRMフリーによるハイレゾ配信を開始したのは2009年です。大手メーカーの参入などもありハイレゾが本格的に盛り上がったのはその約4年後で、以降のハイレゾの潮流はみなさんがご存じの通りです。
そもそもコンテンツホルダーではない私たちが、なぜハイレゾ配信を始めたのか。それは「誰かがこの日本でハイレゾ配信を始めないことには、素晴らしいその魅力を多くの方に伝えることはできない」という強い思いを持ったからです。
もちろん自ら音源を持っていないことは、ハイレゾ配信を始める上で1番の問題でした。そのときに賛同・協力していただいたのが、カメラータ・トウキョウの井阪社長です。同レーベルの協力があったからこそ、私たちはハイレゾが世間に認知されていくきっかけを作ることができました。改めてお礼を申し上げたいと思います。
クリプトンの社是は「唯一無二の面白いこと、それがクリプトン」です。先日たまたま何かを読んで知ったことですが、ソニーの井深さんは「愉快なる工場、規模は追わない」というのを社是としていたそうです。これを真似をしたわけではないのですが、私たちも規模を追いかけるのではなく、唯一無二の面白いことをやりたいと常に考えてきました。
そして、このようなまだ誰もやっていない面白いことを手がけることにおいて、重要なのは“初速”です。ですから、私たちは400m競走の最初の100mを全力で走り初速をつけることをモットーにしてきました。KRIPTON HQMはその活動において、ハイレゾ普及の初速をつけ、デビューさせるという役割を担うことができたと思います。大手の参入以降も、K2テクノロジーを用いたHQM GREENや、アナログテープからデジタルリマスタリングを行った「HQM STUDIO MASTER」などの取り組みを通して、各社と一緒にハイレゾ普及における次の“加速”をつけることができました。
こうした過程を経て、ハイレゾは2009年当時からは想像できないほどに普及しました。その一方で、大手音楽レーベルのハイレゾ参入もあり、各配信サイトが同じタイトルを配信するようになりました。まさに“規模を追う”段階になったと言えます。これまでハイレゾの初速、その次の加速のために全力を尽くした私たちのエネルギーを、何か別のものにかけ、もう一度スタートラインに戻る段階にきたと考えたのです。これがこのタイミングで、KRIPTON HQMのサービスを終了する理由です。
では、次にクリプトンがチャレンジするべきものは何なのか。それは、もう一度、新しい音楽の聴き方を提案していくことだと考えています。
今後はオーディオにおける音楽再生だけでなく、テレビからラジオまであらゆるメディアがハイレゾという方向に向かっていくでしょう。ますますハイレゾが普及していくなかで、私たちはハイレゾをオーディオ機器でいかに良い音で聴くかという舞台で、引き続き、唯一無二の素晴らしいことを実現していきたいと思っています。
ところでクリプトンは医療用機器も手がけていますが、世界で最初の硬性内視鏡手術用ハイビジョンカメラ(当時はアスペクト比4:3のハイビジョン)は日本ビクターとクリプトンが共同開発したものでした。今では、内視鏡手術は当然のように2Kカメラが使われています。私たちの役目はやはり、こういったものなのです。画質が良くなることで映像を見て手術することが可能になったのです。そのおかげで手術に2K(ハイビジョン)→4Kと、今や映像が主役になって使われています。初速をつけてデビューさせ、マーケットをつくっていくことこそ唯一無二のおもしろいことになるのです。
ハイレゾがここまで普及するためには、私たちも大変な努力をしましたが、結果的には良いかたちで巣立ち、マーケットの創造に役立てたと思います。今回のサービス終了は消極的なものではありません。このエネルギーを、クリプトンにしかできないことを実現するという積極的なものへ向けていきたいと思います。
長い間、ハイレゾ配信サイト「KRIPTON HQM」をご愛顧いただきましてありがとうございました。
ーー 本日はありがとうございました。
ーー KRIPTON HQMのサービスを7月31日に終了すると発表しました。サービス終了の理由について、そして今後の御社のオーディオ事業の展望についてお話を伺えればと思います。
濱田氏 クリプトンは、DRMフリーのハイレゾ配信をはじめ、ハイレゾ対応アクティブスピーカー、BDオーディオ、エンコードも含めたMQA配信とMQAデコード対応機器の提供に至るまで、常に“初めてのこと”を実現してきました。
そのなかのひとつである「KRIPTON HQM STORE」が、国内初となる全タイトルDRMフリーによるハイレゾ配信を開始したのは2009年です。大手メーカーの参入などもありハイレゾが本格的に盛り上がったのはその約4年後で、以降のハイレゾの潮流はみなさんがご存じの通りです。
そもそもコンテンツホルダーではない私たちが、なぜハイレゾ配信を始めたのか。それは「誰かがこの日本でハイレゾ配信を始めないことには、素晴らしいその魅力を多くの方に伝えることはできない」という強い思いを持ったからです。
もちろん自ら音源を持っていないことは、ハイレゾ配信を始める上で1番の問題でした。そのときに賛同・協力していただいたのが、カメラータ・トウキョウの井阪社長です。同レーベルの協力があったからこそ、私たちはハイレゾが世間に認知されていくきっかけを作ることができました。改めてお礼を申し上げたいと思います。
クリプトンの社是は「唯一無二の面白いこと、それがクリプトン」です。先日たまたま何かを読んで知ったことですが、ソニーの井深さんは「愉快なる工場、規模は追わない」というのを社是としていたそうです。これを真似をしたわけではないのですが、私たちも規模を追いかけるのではなく、唯一無二の面白いことをやりたいと常に考えてきました。
そして、このようなまだ誰もやっていない面白いことを手がけることにおいて、重要なのは“初速”です。ですから、私たちは400m競走の最初の100mを全力で走り初速をつけることをモットーにしてきました。KRIPTON HQMはその活動において、ハイレゾ普及の初速をつけ、デビューさせるという役割を担うことができたと思います。大手の参入以降も、K2テクノロジーを用いたHQM GREENや、アナログテープからデジタルリマスタリングを行った「HQM STUDIO MASTER」などの取り組みを通して、各社と一緒にハイレゾ普及における次の“加速”をつけることができました。
こうした過程を経て、ハイレゾは2009年当時からは想像できないほどに普及しました。その一方で、大手音楽レーベルのハイレゾ参入もあり、各配信サイトが同じタイトルを配信するようになりました。まさに“規模を追う”段階になったと言えます。これまでハイレゾの初速、その次の加速のために全力を尽くした私たちのエネルギーを、何か別のものにかけ、もう一度スタートラインに戻る段階にきたと考えたのです。これがこのタイミングで、KRIPTON HQMのサービスを終了する理由です。
では、次にクリプトンがチャレンジするべきものは何なのか。それは、もう一度、新しい音楽の聴き方を提案していくことだと考えています。
今後はオーディオにおける音楽再生だけでなく、テレビからラジオまであらゆるメディアがハイレゾという方向に向かっていくでしょう。ますますハイレゾが普及していくなかで、私たちはハイレゾをオーディオ機器でいかに良い音で聴くかという舞台で、引き続き、唯一無二の素晴らしいことを実現していきたいと思っています。
ところでクリプトンは医療用機器も手がけていますが、世界で最初の硬性内視鏡手術用ハイビジョンカメラ(当時はアスペクト比4:3のハイビジョン)は日本ビクターとクリプトンが共同開発したものでした。今では、内視鏡手術は当然のように2Kカメラが使われています。私たちの役目はやはり、こういったものなのです。画質が良くなることで映像を見て手術することが可能になったのです。そのおかげで手術に2K(ハイビジョン)→4Kと、今や映像が主役になって使われています。初速をつけてデビューさせ、マーケットをつくっていくことこそ唯一無二のおもしろいことになるのです。
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長い間、ハイレゾ配信サイト「KRIPTON HQM」をご愛顧いただきましてありがとうございました。
ーー 本日はありがとうございました。
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