公開日 2016/05/06 15:14
<HIGH END>プレイバックデザインズ、ワインの名前を持つ新製品群を披露。ADCを含む3機種
変化を見せ始めたアナログとデジタルの関係
2016年5月5日よりドイツ・ミュンヘンで開催されているMunich HIGH END 2016。欧州最大規模を誇る同ショウにて、今年特に目につくのがアナログ音源に対する関心の高さだ。
「アナログ」と聞くと多くの人はレコードプレーヤーを想像するかもしれないが、今回のMunich HIGH ENDでいうところの「アナログ」は、もっと広義のものだ。中でも意外なほど目にするのが、ADコンバーター関連製品である。これはアナログとデジタルの、かつては真逆だった両者の関係が、大きく変化を見せていると見ていいだろう。
DSDの第一人者として知られるアンドレアス・コッチ氏によるプレイバックデザインズも、そんな現代におけるデジタルとアナログの関係に着目した新製品「Pinot ADC」を発表。すでに発売がアナウンスされていた「Merlot DAC」「Syrah Music Server」と共に、プレイバックデザインズのブースは大きな注目を集めている。
世界的にも最先端を誇るデジタル再生技術を誇るとして評価を受ける同社のブースで行われていたのは、テレフンケンのオープンリールデッキを用いたデモンストレーション。このデッキから「Pinot ADC」へ入力し、「Merlot DAC」へ送り込んで再生するというものだ。アナログ信号を一度DSD 11.2MHzへデジタル化させて再生するということの意義について、一般的には理解しにくいかもしれないが、コッチ氏はその理由を次のように話す。
「アナログ音源のサウンドそのものは、どんなにデジタルが進化しようとも極めて優れたものとだと思っています。とにかく情報量が多いんです。しかし、アナログには伝送時における信号劣化などの問題があることも事実です。反面、デジタルは伝送における優位性を持っていますが、かつてのデジタルフォーマットではアナログ音源の情報量をカバーすることが困難でした」。
「極めてアナログ信号に近い特性を持つDSD 11.2MHzや膨大な情報量を持つDXDが登場したいまだからこそ、アナログ音源の情報量をキープした状態でデジタルの良さを最大限に活用できる時が来ていると思います」。
コッチ氏は、いまではスタンダードとなったDSDネイティブ再生のためのDoP伝送を確立させた人物でもある。そんなコッチ氏にとって、アナログフォーマットが持つサウンドと最先端のデジタル伝送の両立は大きなテーマとなっていたようだ。
今回、同社のブースで展示された3機種はいずれもワインの品種から採られた名前で、海外ではプレイバックデザインズのオリジナルラベルが添付されたワインと共に届けられる予定というのも非常にユニーク。なぜワインだったのかと、その理由を聴いてみた。
「再生や録音のための技術もありますが、それ以前に音楽はエモーショナルなものです。私達はそのエモーショナルという意味で非常にワインと近い感覚を感じていたので、今回の新しい提案に際して、このエモーショナルな要素をひと目で表す名前にしたかった、ということが理由です」。
実際に同社のブースは、ひっきりなしに世界各国のメディアやオーディオファイルが訪れ、そのサウンドに驚く様子を頻繁にみることができた。
もちろんプレイバックデザインズ以外にもADコンバーターを用いたアナログ再生を提案するブランドはあり、同社の提案が初というわけではない。しかし、同社が今後のアナログとデジタルの関係について、今回のMunich HIGH ENDで新しい可能性を示したことは確実だ。
今回、プレイバックデザインズのブースで展示された3機種の詳細は下記のとおり。
同社のラインアップとしては全く新しい価格レンジとなるモデルだが、いずれも今後のオーディオ市場の動向に大きく影響を与える製品となりそうだ。
●「Pinot ADC」(7,500ドル)
最大でDSD 11.2MHz、PCM 384kHz/32bitに対応したプレイバックデザインズとして初となるADコンバーター。
背面パネルにはUSB B端子による出力を持っており、PCと接続することでアナログ音源をデジタル化することも可能となっている。Windows OSを使用する場合は、DSD 11.2MHzでのデジタルデータ化を可能とする「PLAYBACK DESIGNS Sonoma Audio Recorder」というフリーソフトを用意。現時点では単一楽曲ごとのデジタルデータ化を想定した極めてシンプルな作りとなっているが、将来的には多機能化はもちろんのこと、Macへの対応も視野に入れているという。
出力端子はデジタル端子のみで、COAXIAL×1とAES/EBU×1に加え、後述のMerlot DACと接続が可能となるSTリンク出力を用意。入力端子はXLR×1としたシンプルなもので、この他AUX入力も用意される予定となっている。
なお、本機で想定するアナログ音源のデジタルデータ化は、ソース系機器のみというわけではなく、音源制作現場でのマルチch録音での使用も想定した使い方が行える設計となっているのも特徴といえそうだ。本国での発売時期は2016年夏頃を予定しているとのこと。
●「Merlot DAC」(6,500ドル)
プレイバックデザインズのお家芸ともいえる、FPGAによるディスクリートDACを採用したDAコンバーター/ヘッドフォンアンプ。なによりも注目したいのが、同社の製品として初めてDSD 11.2MHzの再生に対応した最新世代のDACモジュールを搭載している点。今後、このモジュールはすでに発売済みの同社製品にもアップグレードプログラムとして供給を行うとアナウンスされている(日本国内での展開は未定)。
入力はAES/EBU、COAXIAL、USB Bタイプのほか、Pinot ADCとの接続が可能となるSTリンクによる入出力を装備。また出力はRCA、XLRそれぞれ1系統のアナログ出力の他、φ6.3mmステレオ標準プラグによるヘッドフォン出力を搭載する。ヘッドフォンアンプ部もディスクリートで構成するなど、コンパクトな筐体の中にプレイバックデザインズの技術を注ぎ込んだ内容となっている。
●「Syrah Music Server」(6,500ドル)
プレイバックデザインズとして初となるミュージックサーバー。端子類はETHERNETと、2つのUSB A端子という極めてシンプルなものとなっている。
内部はWindows Serverがインストールされており、内蔵のストレージは2TBのHDDもしくは1TBのSSDから選択が可能。背面のUSB A端子の片方から出力されるデジタルオーディオ信号をMerlot DACを始めとしたUSB DACへ入力して使用することが可能となっており、もうひとつのUSB A端子は、CDリッピングに使用する外付けドライブや、容量を拡張するためのUSBメモリーやHDDを接続するために使用する。
コントロールのためのアプリケーションは、iOS/Android向けに専用で用意された「PLAYBACK DESIGNS」。音源の再生操作はもちろんのことメタデータの管理等々に至るまで、基本的な操作はすべてこのアプリで行う。
CDリッピングは、ドライブにディスクを入れると一枚丸々FLACでコピーされ、オンライン上からメタデータ等は自動的に付加される仕組みを採用していることも大きな特徴といえそうだ。
「アナログ」と聞くと多くの人はレコードプレーヤーを想像するかもしれないが、今回のMunich HIGH ENDでいうところの「アナログ」は、もっと広義のものだ。中でも意外なほど目にするのが、ADコンバーター関連製品である。これはアナログとデジタルの、かつては真逆だった両者の関係が、大きく変化を見せていると見ていいだろう。
DSDの第一人者として知られるアンドレアス・コッチ氏によるプレイバックデザインズも、そんな現代におけるデジタルとアナログの関係に着目した新製品「Pinot ADC」を発表。すでに発売がアナウンスされていた「Merlot DAC」「Syrah Music Server」と共に、プレイバックデザインズのブースは大きな注目を集めている。
世界的にも最先端を誇るデジタル再生技術を誇るとして評価を受ける同社のブースで行われていたのは、テレフンケンのオープンリールデッキを用いたデモンストレーション。このデッキから「Pinot ADC」へ入力し、「Merlot DAC」へ送り込んで再生するというものだ。アナログ信号を一度DSD 11.2MHzへデジタル化させて再生するということの意義について、一般的には理解しにくいかもしれないが、コッチ氏はその理由を次のように話す。
「アナログ音源のサウンドそのものは、どんなにデジタルが進化しようとも極めて優れたものとだと思っています。とにかく情報量が多いんです。しかし、アナログには伝送時における信号劣化などの問題があることも事実です。反面、デジタルは伝送における優位性を持っていますが、かつてのデジタルフォーマットではアナログ音源の情報量をカバーすることが困難でした」。
「極めてアナログ信号に近い特性を持つDSD 11.2MHzや膨大な情報量を持つDXDが登場したいまだからこそ、アナログ音源の情報量をキープした状態でデジタルの良さを最大限に活用できる時が来ていると思います」。
コッチ氏は、いまではスタンダードとなったDSDネイティブ再生のためのDoP伝送を確立させた人物でもある。そんなコッチ氏にとって、アナログフォーマットが持つサウンドと最先端のデジタル伝送の両立は大きなテーマとなっていたようだ。
今回、同社のブースで展示された3機種はいずれもワインの品種から採られた名前で、海外ではプレイバックデザインズのオリジナルラベルが添付されたワインと共に届けられる予定というのも非常にユニーク。なぜワインだったのかと、その理由を聴いてみた。
「再生や録音のための技術もありますが、それ以前に音楽はエモーショナルなものです。私達はそのエモーショナルという意味で非常にワインと近い感覚を感じていたので、今回の新しい提案に際して、このエモーショナルな要素をひと目で表す名前にしたかった、ということが理由です」。
実際に同社のブースは、ひっきりなしに世界各国のメディアやオーディオファイルが訪れ、そのサウンドに驚く様子を頻繁にみることができた。
もちろんプレイバックデザインズ以外にもADコンバーターを用いたアナログ再生を提案するブランドはあり、同社の提案が初というわけではない。しかし、同社が今後のアナログとデジタルの関係について、今回のMunich HIGH ENDで新しい可能性を示したことは確実だ。
今回、プレイバックデザインズのブースで展示された3機種の詳細は下記のとおり。
同社のラインアップとしては全く新しい価格レンジとなるモデルだが、いずれも今後のオーディオ市場の動向に大きく影響を与える製品となりそうだ。
●「Pinot ADC」(7,500ドル)
最大でDSD 11.2MHz、PCM 384kHz/32bitに対応したプレイバックデザインズとして初となるADコンバーター。
背面パネルにはUSB B端子による出力を持っており、PCと接続することでアナログ音源をデジタル化することも可能となっている。Windows OSを使用する場合は、DSD 11.2MHzでのデジタルデータ化を可能とする「PLAYBACK DESIGNS Sonoma Audio Recorder」というフリーソフトを用意。現時点では単一楽曲ごとのデジタルデータ化を想定した極めてシンプルな作りとなっているが、将来的には多機能化はもちろんのこと、Macへの対応も視野に入れているという。
出力端子はデジタル端子のみで、COAXIAL×1とAES/EBU×1に加え、後述のMerlot DACと接続が可能となるSTリンク出力を用意。入力端子はXLR×1としたシンプルなもので、この他AUX入力も用意される予定となっている。
なお、本機で想定するアナログ音源のデジタルデータ化は、ソース系機器のみというわけではなく、音源制作現場でのマルチch録音での使用も想定した使い方が行える設計となっているのも特徴といえそうだ。本国での発売時期は2016年夏頃を予定しているとのこと。
●「Merlot DAC」(6,500ドル)
プレイバックデザインズのお家芸ともいえる、FPGAによるディスクリートDACを採用したDAコンバーター/ヘッドフォンアンプ。なによりも注目したいのが、同社の製品として初めてDSD 11.2MHzの再生に対応した最新世代のDACモジュールを搭載している点。今後、このモジュールはすでに発売済みの同社製品にもアップグレードプログラムとして供給を行うとアナウンスされている(日本国内での展開は未定)。
入力はAES/EBU、COAXIAL、USB Bタイプのほか、Pinot ADCとの接続が可能となるSTリンクによる入出力を装備。また出力はRCA、XLRそれぞれ1系統のアナログ出力の他、φ6.3mmステレオ標準プラグによるヘッドフォン出力を搭載する。ヘッドフォンアンプ部もディスクリートで構成するなど、コンパクトな筐体の中にプレイバックデザインズの技術を注ぎ込んだ内容となっている。
●「Syrah Music Server」(6,500ドル)
プレイバックデザインズとして初となるミュージックサーバー。端子類はETHERNETと、2つのUSB A端子という極めてシンプルなものとなっている。
内部はWindows Serverがインストールされており、内蔵のストレージは2TBのHDDもしくは1TBのSSDから選択が可能。背面のUSB A端子の片方から出力されるデジタルオーディオ信号をMerlot DACを始めとしたUSB DACへ入力して使用することが可能となっており、もうひとつのUSB A端子は、CDリッピングに使用する外付けドライブや、容量を拡張するためのUSBメモリーやHDDを接続するために使用する。
コントロールのためのアプリケーションは、iOS/Android向けに専用で用意された「PLAYBACK DESIGNS」。音源の再生操作はもちろんのことメタデータの管理等々に至るまで、基本的な操作はすべてこのアプリで行う。
CDリッピングは、ドライブにディスクを入れると一枚丸々FLACでコピーされ、オンライン上からメタデータ等は自動的に付加される仕組みを採用していることも大きな特徴といえそうだ。