公開日 2019/03/16 18:59
TechDAS、重量350kgの旗艦ターンテーブル「Air Force ZERO」。4,000万円程度を見込む
登場は2019年秋頃
(株)ステラは、同社が手がけるTechDASブランドより、ターンテーブル「Air Force」シリーズのフラグシップとして、本体重量が350kgの超弩級モデル「Air Force ZERO」を正式発表した。価格は現時点で未定だが、4,000万円程度を想定しているとのこと。後述の理由により、生産台数は50台以下となる。発売は2019年秋頃を目指す。
本日開催された発表会では、ステラの代表取締役会長でありAir Force ZEROの設計責任者でもある西川英章氏が、レコード再生を行いながらその詳細について説明を行った。
同社はTechDASブランドの超弩級ターンテーブル「Air Force One」を2012年に発売。以降、Air Forceシリーズとしてラインナップを拡充していった。これと平行して2015年にはこのAirForce ZEROが開発中であることをアナウンス(関連ニュース)。2017年5月にはHIgh End Munichにてモーター部とプラッター部を先行して発表していた(関連ニュース)。当初は2017年秋とも言われた正式発表は度々延び、今回の発表に至った。
Air Force ZEROはモーターを含むベルトドライブ方式ターンテーブル本体と、3筐体のエアー供給部/電源で構成される。ターンテーブル本体は総重量350kg(Air Force One Premiumは73kg)、プラッターだけで120kgという超重量級だ。本体の外形寸法は901W×335H×677Dmm。これまでのAir Forceシリーズと同じく、独自のエアーベアリング/エアーサスペンション、およびエアーバキュームによるディスク吸着を特徴とする。
同社独自のエアーベアリング方式により、エアーポンプから送り込まれた空気でプラッターをわずかに浮き上がらせて回転させる。これにより一般的な方式のように軸受けに荷重や負荷がかかることなく、極めて静粛な回転が可能となる。また、エアーサスペンションによりプラッターベースをフローティングさせることで外部からの振動を遮断し、静粛性をさらに向上させている。Air Force ZEROの場合、プラッターとプラッターベースを合わせてフローティング部分は合計250kgにもおよぶ。
さらにレコード吸着機構は、レコードをプラッターに吸着して盤面の反りの問題を解決。さらに、吸着によりレコードは重量級プラッターと一体になり共振も排除され、高精度な信号読み取りが実現できるとする。
■独Papst社製3相12極シンクロナスACモーターを使用
Air Force ZEROにおいては、これまでAir Forceシリーズで培った技術の蓄積に新しい発想を加えつつ「予算的にも技術的にも、何の制約も受けない製品」を目指して開発が進められたという。
本製品の開発における最初の核心となったのが、ターンテーブルを駆動するモーターだ。独Papst社製のテレコ用高級3相12極シンクロナスACモーターを用い、これを基礎としてフライホイール式エアーベアリング方式のドライブモーターを開発した。
なお、本機の生産台数が50台以下になるというのは、Papst社製の3相12極シンクロナスACモーターがすでに生産されておらず入手困難なもので、同社が確保できたのが50個だからだという(保守用にもモーターを確保する必要があり、実際の生産は50台を下回るとのことだ)。
このモーターは、高精度メタルベアリングとエアーベアリングにより面振れが数ミクロン以内という高精密回転を実現。そして、フライホイール効果による高イナーシャ、エアーベアリング効果による高S/Nなプラッター駆動を可能とした。
さらにモーターの駆動電子回路も新開発し、正確な回転精度かつ低振動なモーター駆動も実現したという。具体的な特徴として西川氏が挙げたのが、高度な制御を行うというトルク切り替え回路だ。起動時やプラッターの回転数を変えるときはモーターの回転トルクを上げ、定常回転になると回転トルクを下げて低振動化を図る。また、定常回転時はサーボを排除した完全にアナログでの駆動となり、滑らかな回転が可能になるとする(立ち上がり時や外部の力で回転が阻害された場合のみ、サーボが働いて回転数を制御する)。
なお、モーターは3相の各相ごとに150Wクラスのパワーアンプで駆動される(よって合計3台のパワーアンプが用いられる)。シンクロナスモーターは3相の周波数に同期して回転する。ここで3相の周波数を正確に生成するのも困難だが、本機では高精度な3相生成回路により、正確な回転制御を可能にするとのこと。
■120kgの5層プラッターと130kgのベースがエアーで浮遊
ターンテーブル本体については、名機「EMT927」のサイズを大幅に超えないこと、各部品を日本の表面処理業者が作業できるサイズにすること、プラッターを40cm径にすることなども念頭に設計したという(結果として外形寸法は901W×335H×677DmmとEMT927より大きくなった)。
総重量120kgのプラッターは5層から構成。第一層(最下層)は40cm/34kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第二層は31cm/20kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第三層は31cm/20kgの鋳造 砲金、第4層は31cm/20kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第五層は30cm/26kgの焼結タングステンという構成となる。
これらプラッターの各層はディスク吸着の空気を利用して“エアーチャッキング”される。これにより機械的ストレスが加わるネジでの固定を回避している。
プラッターはエアーベアリングによって10ミクロン浮上して回転する。また、プラッターベースの45cm円周上の加工精度は8ミクロン以下に抑えられているという。
プラッターベースは超超硬質ジュラルミン製で、重さは約35kg。ここにアッパーパネルなどが取り付けられ、その上にトーンアームベースが取り付けられる。プラッターベースを支えるエアーサスペンションは、各コーナーに合計4個設置。Air Force Oneと同様に、ドーナツ状の空気バネにより低周波数を吸収する。なお、このサスペンションモジュールはいずれも独自に設計されたものだ。
トーンアームベースは標準でチタン製のものが2個付属する。また、オプションでタングステン製も用意される。取付可能なアームは9インチ/10インチ/12インチとなる。
合計250kgのプラッター/プラッターベースを支えるベースフレームは、ステンレススティール製で重量は約100kg。表面はIP硬質コーティングが施され、表面硬度を上げて振動収束スピードを早めている。
オプションで専用ラックも2種類用意。会場では専用ラックに設置してデモを行った。スピーカーには同社が取り扱うWilson Audio「ALEXX」が用いられた。
■数々の名機を手がけた西川氏が「オーディオ人生最後の作品」と語る
かつて在籍したマイクロ精機の時代、そしてTechDASにおいて様々なアナログプレーヤーを手がけた西川氏だが、Air Force ZEROを「オーディオ人生最後の作品だと思っている」とコメント。その開発には約2年を要したという。また、ソフトウェア面では発売までさらに追い込みが行われるという。
価格については現時点で調整中とのことだが、「4,000万円程度」を想定しているとのこと。しかし、正式な価格も決まっていない状態ですでに受注が入っており、会場はすでに本機を成約したという海外のユーザーが2名来場していた。
同氏はAir Forceシリーズの大きな特徴であるエアーベアリング/エアーサスペンション/エアーバキュームについても改めて言及。「Air Force Oneを発表した際に、海外のメディアから“プラッターを浮かせつつ、ディスクを真空吸着するなんて不可能だ”と言われた。そのメディアの編集者は実際に製品を見て、音を聴いて非常に驚き、Air Force Oneに最高の評価を与えた」と語っていた。
また、エアーを供給するホースの材質でも音が変わるとのこと。様々な材質を試した結果、シリコン系の素材を採用したという。
西川氏はAir Force ZEROを構成する各パーツの切削や成形、表面加工が非常に難しいものであることについても説明の中で度々触れていた。発表会の最後には、これらの加工や処理を手がけた各加工業者にも謝辞を述べた。
本日開催された発表会では、ステラの代表取締役会長でありAir Force ZEROの設計責任者でもある西川英章氏が、レコード再生を行いながらその詳細について説明を行った。
同社はTechDASブランドの超弩級ターンテーブル「Air Force One」を2012年に発売。以降、Air Forceシリーズとしてラインナップを拡充していった。これと平行して2015年にはこのAirForce ZEROが開発中であることをアナウンス(関連ニュース)。2017年5月にはHIgh End Munichにてモーター部とプラッター部を先行して発表していた(関連ニュース)。当初は2017年秋とも言われた正式発表は度々延び、今回の発表に至った。
Air Force ZEROはモーターを含むベルトドライブ方式ターンテーブル本体と、3筐体のエアー供給部/電源で構成される。ターンテーブル本体は総重量350kg(Air Force One Premiumは73kg)、プラッターだけで120kgという超重量級だ。本体の外形寸法は901W×335H×677Dmm。これまでのAir Forceシリーズと同じく、独自のエアーベアリング/エアーサスペンション、およびエアーバキュームによるディスク吸着を特徴とする。
同社独自のエアーベアリング方式により、エアーポンプから送り込まれた空気でプラッターをわずかに浮き上がらせて回転させる。これにより一般的な方式のように軸受けに荷重や負荷がかかることなく、極めて静粛な回転が可能となる。また、エアーサスペンションによりプラッターベースをフローティングさせることで外部からの振動を遮断し、静粛性をさらに向上させている。Air Force ZEROの場合、プラッターとプラッターベースを合わせてフローティング部分は合計250kgにもおよぶ。
さらにレコード吸着機構は、レコードをプラッターに吸着して盤面の反りの問題を解決。さらに、吸着によりレコードは重量級プラッターと一体になり共振も排除され、高精度な信号読み取りが実現できるとする。
■独Papst社製3相12極シンクロナスACモーターを使用
Air Force ZEROにおいては、これまでAir Forceシリーズで培った技術の蓄積に新しい発想を加えつつ「予算的にも技術的にも、何の制約も受けない製品」を目指して開発が進められたという。
本製品の開発における最初の核心となったのが、ターンテーブルを駆動するモーターだ。独Papst社製のテレコ用高級3相12極シンクロナスACモーターを用い、これを基礎としてフライホイール式エアーベアリング方式のドライブモーターを開発した。
なお、本機の生産台数が50台以下になるというのは、Papst社製の3相12極シンクロナスACモーターがすでに生産されておらず入手困難なもので、同社が確保できたのが50個だからだという(保守用にもモーターを確保する必要があり、実際の生産は50台を下回るとのことだ)。
このモーターは、高精度メタルベアリングとエアーベアリングにより面振れが数ミクロン以内という高精密回転を実現。そして、フライホイール効果による高イナーシャ、エアーベアリング効果による高S/Nなプラッター駆動を可能とした。
さらにモーターの駆動電子回路も新開発し、正確な回転精度かつ低振動なモーター駆動も実現したという。具体的な特徴として西川氏が挙げたのが、高度な制御を行うというトルク切り替え回路だ。起動時やプラッターの回転数を変えるときはモーターの回転トルクを上げ、定常回転になると回転トルクを下げて低振動化を図る。また、定常回転時はサーボを排除した完全にアナログでの駆動となり、滑らかな回転が可能になるとする(立ち上がり時や外部の力で回転が阻害された場合のみ、サーボが働いて回転数を制御する)。
なお、モーターは3相の各相ごとに150Wクラスのパワーアンプで駆動される(よって合計3台のパワーアンプが用いられる)。シンクロナスモーターは3相の周波数に同期して回転する。ここで3相の周波数を正確に生成するのも困難だが、本機では高精度な3相生成回路により、正確な回転制御を可能にするとのこと。
■120kgの5層プラッターと130kgのベースがエアーで浮遊
ターンテーブル本体については、名機「EMT927」のサイズを大幅に超えないこと、各部品を日本の表面処理業者が作業できるサイズにすること、プラッターを40cm径にすることなども念頭に設計したという(結果として外形寸法は901W×335H×677DmmとEMT927より大きくなった)。
総重量120kgのプラッターは5層から構成。第一層(最下層)は40cm/34kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第二層は31cm/20kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第三層は31cm/20kgの鋳造 砲金、第4層は31cm/20kgの鍛造ステンレス(SUS 316L)、第五層は30cm/26kgの焼結タングステンという構成となる。
これらプラッターの各層はディスク吸着の空気を利用して“エアーチャッキング”される。これにより機械的ストレスが加わるネジでの固定を回避している。
プラッターはエアーベアリングによって10ミクロン浮上して回転する。また、プラッターベースの45cm円周上の加工精度は8ミクロン以下に抑えられているという。
プラッターベースは超超硬質ジュラルミン製で、重さは約35kg。ここにアッパーパネルなどが取り付けられ、その上にトーンアームベースが取り付けられる。プラッターベースを支えるエアーサスペンションは、各コーナーに合計4個設置。Air Force Oneと同様に、ドーナツ状の空気バネにより低周波数を吸収する。なお、このサスペンションモジュールはいずれも独自に設計されたものだ。
トーンアームベースは標準でチタン製のものが2個付属する。また、オプションでタングステン製も用意される。取付可能なアームは9インチ/10インチ/12インチとなる。
合計250kgのプラッター/プラッターベースを支えるベースフレームは、ステンレススティール製で重量は約100kg。表面はIP硬質コーティングが施され、表面硬度を上げて振動収束スピードを早めている。
オプションで専用ラックも2種類用意。会場では専用ラックに設置してデモを行った。スピーカーには同社が取り扱うWilson Audio「ALEXX」が用いられた。
■数々の名機を手がけた西川氏が「オーディオ人生最後の作品」と語る
かつて在籍したマイクロ精機の時代、そしてTechDASにおいて様々なアナログプレーヤーを手がけた西川氏だが、Air Force ZEROを「オーディオ人生最後の作品だと思っている」とコメント。その開発には約2年を要したという。また、ソフトウェア面では発売までさらに追い込みが行われるという。
価格については現時点で調整中とのことだが、「4,000万円程度」を想定しているとのこと。しかし、正式な価格も決まっていない状態ですでに受注が入っており、会場はすでに本機を成約したという海外のユーザーが2名来場していた。
同氏はAir Forceシリーズの大きな特徴であるエアーベアリング/エアーサスペンション/エアーバキュームについても改めて言及。「Air Force Oneを発表した際に、海外のメディアから“プラッターを浮かせつつ、ディスクを真空吸着するなんて不可能だ”と言われた。そのメディアの編集者は実際に製品を見て、音を聴いて非常に驚き、Air Force Oneに最高の評価を与えた」と語っていた。
また、エアーを供給するホースの材質でも音が変わるとのこと。様々な材質を試した結果、シリコン系の素材を採用したという。
西川氏はAir Force ZEROを構成する各パーツの切削や成形、表面加工が非常に難しいものであることについても説明の中で度々触れていた。発表会の最後には、これらの加工や処理を手がけた各加工業者にも謝辞を述べた。