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公開日 2023/07/31 15:06

AKMの車載ソリューションを体験!スペック+感性で追い込む車内オーディオ環境への新たな提案

最新DSP「AK7709」&フラグシップDACも試聴
ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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旭化成エレクトロニクスは、2014年より音質にこだわる製品シリーズとして「VELVET SOUND」ブランドを展開、ホームオーディオ/ポータブルオーディオを問わず、スペックのみならず感性に訴える音を実現するオーディオIC製品の開発に力を入れてきた。そんなVELVET SOUNDから、今年5月に「車載用」に特化した「VELVET SOUND for Cars」を発表。その最新サウンドをいち早く試聴してきた。

「VELVET SOUND for Cars」の開発チーム。左から黒沢高史さん、中元聖子さん、成山航さん

ホームオーディオとカーオーディオの双方に携わっている同社の中元氏が、「VELVET SOUND for Cars」の狙いについて説明してくれた。近年、オートモーティブの世界はEVや自動運転といった新しいテクノロジーの普及に伴い、インフォテイメント環境を含めた車内体験が大きく変わりつつある。そこで、旭化成エレクトロニクスが長年に渡り培ってきた「まるで、そこにいるかのような」音の世界を車内でも実現することを目的に立ち上げたのだという。

VELVET SOUNDはこれまでオーディオICに関するブランドであったが、for Carsの立ち上げにあたり、ソフトウェアアルゴリズムやチューニングなどをふくむ一貫した総合ソリューションとして再定義。車内のサウンドデザインを、ハード/ソフトを横断して総合的に提案できることを目指す。

オーディオICだけではなくソフトウェアやチューニングも含めた総合的なソリューションとして展開を予定

以前から旭化成エレクトロニクスの技術は、車内での通話、つまりスマートフォンでかかってきた電話を車内で受けて応答する際の音声ソリューションにも活用されてきた。そのため、音が車内でどう反射しどう人の耳に届くのか、ハウリングを起こさないようにするにはどうすれば良いのか、ということに関する長年の研究成果を持っている。

だがやはり、中元氏は「オーディオは特性だけではわからない」と強調する。オーディオ的なスペックを追求したICに、長年の車内環境に関する研究成果が加わり、さらに「感性的な評価」を重視していることに、VELVET SOUND for Carsの強みがある。

先週、VELVET SOUND for CarsからDSPのトップモデルとなるICチップ「AK7709」が発表された。AK7709は、車載で要請される多チャンネルならびにハイレゾデータをリアルタイムで対応する強力な処理能力を搭載している。このAK7709を含む、旭化成エレクトロニクスの総合ソリューションを活用した車の音を、同社のガレージラボにて体験させてもらった。

マルチチャンネルやハイレゾもリアルタイムで処理する強力なDSP「AK7709」

デモカーにはトヨタのプリウスを使用。AK7709はオーディオICであると同時に、ソフトウェアを書き込むことでさまざまな音質的な追い込みが可能となっている。今回の試聴では、プリウスの純正スピーカーそのまま(ダッシュボード上と前後ドアの合計6箇所)を使用、DSP、DAC、そしてアンプについて、旭化成エレクトロニクスが用意した「サウンドデザインボード」が活用されている。

カーオーディオの試聴に活用しているサウンドデザインボード。DSP、DAC、アンプが組み込まれており3パターンの聴き比べが買可能

今回は、以下の3パターンを聴き比べを行なった。最初に既発売の8チャンネル対応DAC「AK4438」のみを使用した場合。その次にDSP「AK7709」を追加した場合。最後に「AK7709」に加えて同社のフラグシップDACである「AK4191+AK4499」を追加した場合となる。ちなみに、今回は運転席にてベストなチューニングがされているということで、運転席に座って試聴を行った。

運転席に座って3パターンを聴き比べ

なお、「AK4191+AK4499」の車載用への展開は現時点では未定ということで、あくまで「VELVET SOUND」のトップグレードの音を体験してほしい、という思いから用意されたものとのこと。

スピーカーはプリウス純正のダッシュボード上(左右2ヶ所)とドア(前後左右4ヶ所)の6スピーカーを使用

送り出しにはAstell&KernのDAPを使用、楽曲はイーグルス「ホテル・カリフォルニア」のライブバージョンとホリー・コールの「テネシー・ワルツ」の2曲で確認した。

Astell&KernのDAPを送り出しに使用、デジタル出力して聴き比べを行う

「AK4438」のみを使用した時の音に対して、「AK7709」を活用した場合は、特に拍手の広がり感がまったくの別物。「ホテルカリフォルニア」冒頭1分17秒周辺、有名なギターイントロが流れた瞬間に、拍手が盛り上がり楽曲への期待感が最高潮に高まる。最初はバラバラと疎らに散らばっていた印象だったのが、「AK7709」では文字通り拍手に全身を包まれる感覚で、まさに自分自身もライブ会場にいるかのような臨場感に誘われる。

この音源は、ステレオで聴いても会場にいるかのような立体感や臨場感を捉えた素晴らしい録音であるが、複数のスピーカーを活用した車内空間でもそのリアリティがきちんと引き出され、音楽への没入感を掻き立ててくれる。またドラムの立ち上がりやギターの爪弾きも一際鮮烈になる印象で、余計な付帯音が減少し全体に音楽がぐっと引き締まって聴こえてくる。

ここにさらに「AK4191+AK4499」を追加すると、こちらはより「弱音の再現性」に大きな違いが感じられた。ノイズフロアが下がりダイナミックレンジが広がったことで、特にホリー・コールのピアノは演者の微細なニュアンスまでも引き出されてくる。

この車のチューニングを担当した成山氏によると、「ダッシュボードの上にボーカルをちゃんと定位させる」ことを意識してDSPのチューニングを行なったという。DSPは単にICを載せるだけではなく、その後ソフトウェア的に追い込むことができる。車内環境はホームとは違ってガラスやシートの素材などさまざまな反射の影響を受けるため、それらをどうコントロールして高音質を実現するかというところに車載オーディオの難しさと面白さがある。

今後はICを提供するだけではなく、オーディオマイスターによるチューニングも含めてブランドとして展開をしていくという。なお、このサウンドデザインボードを搭載したデモカーは、日本のほかにデュッセルドルフ、上海、深セン、ソウル(計画中)でも試聴ができるとのこと。まずはカーオーディオメーカー並びにティア1サプライヤーに向けた試聴デモンストレーションを進めていくとのことだ。

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