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公開日 2010/01/09 22:52

【CES】いよいよはじまる3D画質競争時代 − 3Dのクオリティを左右するものは何か?

折原一也の3D最前線レポート
折原一也
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「2010 International CES」のラスベガスコンベンションセンターの会場は、事前の予想通り3D一色だった。6日に開催された各社プレスカンファレンスからもそのムードは伝わってきていたが、テレビやホームエンターテイメント全体へのメッセージを発信していたLG、サムスンら韓国勢に対して、パナソニック、ソニーら日本勢が3Dに対してテクノロジーリーダーとして、3Dテレビの発売のみにとどまらないリーダーシップを発揮する姿勢が強く見て取れた。

しかし3D全体への推進に対する「本気度」に違いこそあれ、パナソニックは春、ソニーは夏、東芝は北米版CELL TVで秋、さらにシャープや韓国勢までもが3D対応テレビを発売する事が決まった今、3Dに対応するのはもはや当たり前のこと。3Dに対応する次の段階としてクオリティでどう差が付くのか、というのがAVファンの注目すべきポイントだ。


6日のプレスカンファレンスで各社3Dテレビ発売を発表

サムスン、LGの韓国勢の発表も相次いだ


テレビと同時にBDプレーヤー、ホームシアターシステムの発売も発表された
CESの会場で感じた各社3D対応テレビデモのクオリティの差

実際CESの会場で各社3Dテレビのデモを見て回ってみると、3D表示にも画質の違いはある。ソースも視聴環境もバラバラであることを断った上で各社デモの感想を述べると、パナソニックのプラズマ3D VIERAは鮮明で違和感のない映像、サムスンのLED TV(これは彼らの呼び方で実際にはLEDバックライトの液晶)やシャープの3D液晶AQUOS、東芝CELL TVも上出来、やや映像に違和感のあったLGの3D液晶(PDPは比較的良好だった)、ソニーの24.5型の有機ELは良好だったが、液晶BRAVIAはフレームのブレが激しく画質はワースト…と、一口に3Dと言っても各社それぞれ画質、完成度に違いが見られた。


シャープはBD内蔵型3D対応テレビをデモ

サムスンは高画質な3D対応液晶を展示


ソニーは24.5型の有機ELでも3Dをデモ
各社の3Dテレビデモの善し悪しや違和感、トータルで見た3Dとしての画質差は、どういった要因から生まれてくるのだろうか。

3Dの“3Dとしてのクオリティ”が決まる要因とは?

まずは、3Dについての基本からおさらいしておこう。会場を賑わせている3Dデモは、パナソニックが3D規格として推進した1920×1080pのフルHD×2chの映像を左右別々に収録するフルHD 3D方式を前提としている。テレビ側の対応は、フレームシーケンシャル(左右交互)に切り替えて表示するため、液晶では240Hz駆動、PDPでは600Hz駆動の速度といった高速表示が求められる。視聴者は3Dテレビと同時に、映像のフレーム切り替えと同期して交互に片目を遮るアクティブシャッターメガネを掛けることで、テレビに表示された映像を3Dとして鑑賞する事ができる。

ちなみに、ビクターは偏光メガネによるパッシブ方式の業務用モニターを展示、既に発売もしているが、テレビ側に専用の設計が必要になる事もあり、他社の家庭用3Dテレビには採用されていない。


一部メーカーは3D対応メガネも別に展示

JVCはパッシブ方式の3Dテレビを唯一展示していた
3Dテレビの、3Dとしての画質はどこで決まるのか。一つの要因としてクロストーク(二重像低減技術)の存在が挙げられる。3Dにおけるクロストークとは、左右の映像の、他方への混入だ。ソースのレベルでは1920×1080p×2chと映像が分離しているが、実際にテレビの画面上に表示する上では、瞬間的に左右の映像が1画面上に存在する場合がある。液晶テレビでは画面上の映像を次のフレームとして順次書き換えているため、1コマ(1/120秒)のなかの、さらにある一瞬を見ると、例えば左コマから右コマを書き換えている最中で混在している映像が存在することになる。こうしたクロストーク発生の事情は、液晶テレビの残像発生のメカニズムに近い。

これに対して、PDP、有機ELといった自発光デバイスは画面全体を瞬時に書き換えるため、このような問題はない。つまり、3Dを前提として考えると、基本的な表示デバイスの特性としてPDP、有機ELといった自発光デバイスは有利、液晶は不利になる。これは、あるメーカーの説明員に質問した際にも認めていたことだ。

なお、液晶の順次書き換えによるクロストークの発生は、アクティブシャッターメガネが開いている時間を調整して、混在している瞬間を隠す事で軽減できる(イメージとしては液晶の残像軽減におけるバックライトブリンキングに近い)。ただし、シャッターの開く時間が短くなれば輝度が落ち、フレーム切り替えの違和感が大きくなるためメーカー各社による作り込みが必要になる。

メガネの完成度も画質を決める要因に


パナソニックのアクティブシャッター式3Dメガネ
もう一つの3Dの基本的な要因として、3Dはメガネを通して画面を見るため、基本的に映像が暗く見える。これは家庭用の3Dテレビの登場を待つまでもなく、劇場の3D上映を見て実感したことがある型も多いことだろう。

画面の暗さに対処し、3Dの画質を向上させるため、アクティブシャッターメガネの光透過率の向上が求められる。先に述べたテレビと対応するシャッター切り替え時間も含めて、3Dテレビでは各社が自社用に最適化して設計したメガネの完成度も、画質を決める要因として問われることになる。

なお、3D映像の表示には、この他にも2Dと同じ色再現性や黒の沈み、コントラスト比といった要素も、2Dと同じかそれ以上に画質を作用する要因となるが、今回はあくまでも3Dならではの要因として割愛している。

パナソニック担当者に聞くPDPにおける3D高画質への取り組み

メーカーはどのような形で3Dの高画質に取り組んでいるのか。今回はCESの会場で、パナソニック高画質高音質開発センター画質担当参事の末次圭介氏に、同社PDPにおける取り組みを聞く事ができた。


パナソニック高画質高音質開発センター画質担当参事の末次圭介氏
パナソニックの3D表示の高画質化への取り組みは、2010年モデルとして登場する同社のPDPモデルの表示特性を基礎にしている。

PDPの基本的な特性をおさらいすると、画素の発光は一瞬で全画面が点灯してるわけではなく、時間的に発光に盛り上がりが存在し、消えた後には残光と呼ばれる光が残る。同社のPDPの2010年モデルでは、「新短残光蛍光体」によって赤、緑の発光時間を1/3として、かつ「発光重心位置制御」によりパネル発光のピークを前半に置くことで、さらに残光を減らしている。

アクティブシャッターメガネも、パナソニックでは画質を決定する重要な要因として、当初から自社で素材、設計、開発までを手がけており、ベンダーからからそのまま購入するという選択肢はなかったという。同社のアクティブシャッターメガネは、高遮断特性を持つものとして、漏れ光を消光比1,000対1以下に抑えている。さらに、同社独自のカスタマイズとして、先に述べたプラズマの発光特性に最適化した形でシャッターの切り替えタイミングを制御している。

シャッター切り替えタイミングに関する詳細は、現在各社が高画質化を競っている段階だけに詳細は非公開とのことだが、プラズマの表示特性、アクティブシャッターメガネの作り込みによってクロストークを低減させることに成功し、映像の鮮明さと高い質感に繋がっているのだ。


パナソニックはブース内のシアターは152インチ3Dプラズマでデモ

2010年モデルの3D対応Gシリーズも展示
今回はPDPを推進するパナソニックのみの取材となったが、もちろん、液晶で3Dテレビを発売するメーカーは、液晶のデバイス特性に応じた高画質化の方法を考えているだろう。CES会場では液晶メーカーの3D担当者への取材を行えなかったため、また別の機会に3Dにおける高画質化の技術を聞く予定だ。

以上のように3Dの画質を決める要因を見ていくと、もはや「3D対応だからテレビはどれも同じ」とは言えない事が分かってくるだろう。かつてフルHDのモニターが登場した際に、あるいはブルーレイが登場した際にも、飛躍的なスペックの向上によって「どれでも同じになるのではないか」という声が聞かれた。

しかし、実際に製品が登場してみると、製品ごとの画質、完成度の違いが存在し、次なるステップとして同じフィールドの上でクオリティを競う事になる。新たなAVのフィールドとして3Dが加わる2010年は、オーディオビジュアルの新たな節目となる一年となりそうだ。

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