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公開日 2011/09/01 18:45
<IFA>ソニー・ヨーロッパ西田プレジデントに聞く ー ネットワーク/3Dビジネスの今後の戦略
Androidや4K2Kの展開はどうなる?
ソニーは本年のIFA2011にて、「コネクテッド・ワールド」をテーマに掲げ、ハード/ソフト/コンテンツの全てを持っているソニーが「いまユーザーに提案できるエンターテインメントのすべて」を紹介している。
今回は日本メディアを対象とした記者会見で、ソニー・ヨーロッパ社プレジデントの西田不二夫氏に、ネットワークや3Dをはじめとしたソニーのビジネス戦略をうかがった。
■「3D」「インターネット高画質」でテレビの価値をさらに高める
ソニーは今年もIFA出展のメーカーブースでも、最大クラスとなる「6,000平米」の巨大な出展スペースを構え、同社初のAndroidタブレットやBRAVIA、ブルーレイなど多彩な製品群を一堂に展示している(関連ニュース)。
中でも昨日開催のプレスカンファレンスで最もハイライトされたのが、“Sony Tablet”「Sシリーズ」「Pシリーズ」だ(関連ニュース)。「全世界に先駆けてIFAで、ソニー初のタブレットを発表したことはメイン・トピックスだった」と西田氏は語る。
だが、一方で今回の発表が持つ意義は、タブレット単体としての商品力を訴求するだけのものにとどまらないのだという。
「ソニーが追求してきたネットワークエンターテインメントの世界を楽しむためのデバイスに、従来の“テレビ”、“PC“、”スマートフォン”に加わるかたちで、“第4のスクリーン”となるタブレットが加わったことで、インターネットや3Gコネクションを経由して、ユーザーにエンタテインメントコンテンツを届けるためのディスプレイ・デバイスが出そろった。私たちが“4つのスクリーン戦略”と呼んでいるビジネスモデルを完結させたことを、IFAで高らかに宣言できたことに最も大きな意味がある」のだという。
ソニーは昨2010年を「3D元年」に位置づけ、IFAにおいても同社の豊富な3Dソリューションと、製品・エンターテインメントの数々を披露した(関連ニュース)。今年のプレスカンファレンスでは、「3D」に関連する発表内容が裸眼3D対応の“VAIO”シリーズにとどまった(関連ニュース)。
このことについて西田氏は「3Dはネットワークと同等に重要な戦略テーマであることに変わりはない。一例としてあげるならば、“BRAVIA”では3Dに引き続き力をいれており、ヨーロッパでも“BRAVIA”のラインナップにおける3D対応モデルの比率を高めている。また、“VAIO”のLシリーズ/Sシリーズという2つのヨーロッパにおける新製品を出した。裸眼3D対応PCの製品についても発表を行った。確かに、ヨーロッパで3Dは思っていたよりも急速には立ち上がらなかったが、徐々に浸透しているという確かな手応えを感じている。3Dはファッションとして短期に終わることなく、今後もテレビの大きなフィーチャーとして続けていくべきテーマだ」と考えを述べた。
ソニーのテレビ“BRAVIA”を、他社製品との競合の中で差異化していくためのファクターには、「3D」のほかにももう一つ「インターネットコンテンツの画質強化」があると西田氏は語る。日本国内でも既にお馴染みの、“BRAIVA”シリーズの上位モデルに採用されている新高画質回路「X-Reality PRO」(関連レビュー)は重要な技術であるという。
「“X-Reality PRO”は、例えばYouTubeのコンテンツを視聴する際にもHD画質に近い、良質な映像が楽しめるようになる技術。ソニーらしさを代表する強みを持った技術であり、ヨーロッパでもインターネットテレビの価値を高めるものとして積極アピールしきたい」とした。
ネットワークサービスは、昨年に立ち上げた“Qriocity”の名称を変更し、新しいインフラとして「Sony Entertainment Network(以下:SEN)」をスタートさせる(関連ニュース)。
「これまでソニーの異なるデバイス向けのプラットフォームとして、個別に展開してきたビデオや音楽、ゲームコンテンツの配信サービスを“Sony Entertainment Network”という、新しい大きな括りの中で一元運営しながらより強化していく。ユーザーの方々には、よりシンプルで使いやすいネットワークサービスを提供していきたい」。
以下、記者会見で執り行われた質疑応答の一部を紹介する。
■「Sony Entertainment Network」の今後の展開
− 「SEN」を新たに立ち上げたが、ヨーロッパではソニーのネットワークサービスの利用状況は現状どうなっているのか。
西田氏:ヨーロッパでは昨年11月から“Qriocity”のビデオ配信が始まり、続いて今年の1月に音楽配信を主要国で開始した。今のところ全ヨーロッパをカバーするものではないが、「SEN」での再スタートも実現し、今後は徐々に利用できる地域を拡大していきたい。少なくとも西側のヨーロッパでは、全て共通のサービスを利用できるように環境を整えていくつもりだ。
また、元々「SEN」とは別で、テレビ向けに「BRAVIA Internet video channel」というサービスも展開してきた。これは各放送局が展開するインターネットテレビ向けのビデオ配信コンテンツを“BRAVIA”で視聴できるというものであったが、こちらも今回「SEN」の中に組み込む。これはヨーロッパ独自のサービスだ。
もちろんPCで見ることもできるコンテンツだが、これをテレビでも見られるというサービスを、各ローカルのコンテンツパートナーと協業しながら拡大していく。現在ヨーロッパ全体で80ぐらいのコンテンツがスタートしており、増え続けているところだ。
− 今回の発表時点で「SEN」に含まれていなかったタイプのコンテンツは今後どうなるのか。
西田氏:すべて「SEN」の中に組み込むかたちで一元管理しながら増やしていく考えだ。
■“Sony Tablet”を「iPad対抗」のデバイスに育てる
− “Walkman”にもAndroid OSを搭載したプロトタイプを出展しているが、今後タブレットやスマートフォンも含めて、ソニーではAndroid OSをどう位置づけて活用していくのか。
西田氏:オープンアーキテクチャなので、スマートフォンやタブレットなど、モバイルに関してはAndroidを積極的に活用していくつもりだ。今後、ソニーが独自にOSをつくるという考えは持っていない。“Walkman”のようなポータブルデバイスでは色んな可能性を探ることができると考えている。
− ヨーロッパでのタブレットのマーケットはいまどういう競争環境にあるのか。
西田氏:正直に言って、アップルの「iPad」以外に有力な製品がまだ見えていないのが現状だと思う。サムスンや他のメーカーも出してきてはいるが、これといって“すごい”という商品はない。ソニーは良い商品を練り上げて出すために、少し時間をいただいたが、商品を見ていただければわかるように、今回発表した製品はかなり良い出来だと自負している。“iPad対抗”の最初のAndroid商品として、強く打ち出せたと思う。ソニーの目標は、来年12月にAndroid系タブレットとして“グローバルNo.1シェア”を勝ち取って、iPadに対抗するポジションに立つことにある。
− “Sony Tablet”について、ヨーロッパでのキャリアはどうなるか。
西田氏:国ごとにお客様が自分でネットワークオペレーターを選んで利用してもらう、SIMロックフリーの利用形態をヨーロッパでは考えている。
■“裸眼3D”やコンシューマー向け“4K2K”についても積極的に取り組む
− 裸眼3Dについて、今年のCESではテレビのプロトタイプも紹介されていたが(関連ニュース)、今後も開発は続けていくのか。また4K2Kのコンシューマー向けディスプレイに対する取り組みについて聞かせて欲しい。
西田氏:3Dを裸眼にしていくという取り組みについては、どのメーカーも取り組んでいるだろうし、ソニーもプロトタイプをお披露目した。いずれ商品のかたちでご提案する時期が来ると考えているが、それが来年になるか、再来年になるかはまだわからない状況だ。ただ、必ずそれはやってくると思う。ただし、3Dが裸眼で見られるようになるには、それなりの高精細な映像再生技術が必要とも考えている。
その一つのソリューションが「4K」だと思っている。今はプロシューマー用に4Kの製品を展開しているが、コンシューマー向けのテレビに「本当に4Kは必要か?」ということも問いかけている。4Kは高精細な裸眼3Dを実現のための一環にある技術として取り組んでいる。
4Kは商品化する際の値段の問題もある。馬鹿らしいほど高価な製品をつくって出しても、売れなければ意味がない。技術的には今でもレベルに達しているが、これを手頃な価格で販売できる商品に落とし込むところまで、今のところまだ行っていないというのが現状だ。
− 4Kで裸眼3Dというスペックでは、まだエンターテインメントとして映像を楽しむには解像度が低いとも言われているが、ソニーとして4Kで十分と考えているのか。
西田氏:もちろん4Kを超える技術があることは認識しているが、商品化のための現実的な目処が必要だと思っている。高精細な裸眼3Dを実現するために4Kだけで良いかと言えば、そうではないと思う。その他のいろいろな技術を同時に検討・開発していく必要がある。4Kは独自に開発を進めているし、裸眼3Dにも活用できる技術として検証を進めているということだ。
■ヨーロッパの景気状況は非常に難しい状況にある
− ヨーロッパの景気の現状はどのように捉えているか。
西田氏:大変憂慮している。非常に頭の痛い問題だ。ユーロゾーンの問題はアイルランド、ギリシャにはじまり、スペイン、イタリア、フランスまで波及している。イギリスはユーロゾーンではないが、景気と財政負担という意味では同じ苦しい状況にある。西側ヨーロッパ全体を考えたときに、この状況がどのぐらい続くのか、見通しは立たない。少なくとも1・2年で回復するものだと私は思っていない。緊急的な財政縮小を実行しても、その結果として国民に負担がかかることになる。
通常であれば政治レベルで景気対策を執るべきところだが、あまりに財政負担が多い故に、対策を打つことも難しい。今は非常に苦しい状況だと思う。失業率に対してもペシミスティックに考えており、心配している。
もう一つ、日本のメーカーにとっては「円高」の問題がある。一般的には「米ドル対円」の状況がフォーカスされるが、ソニーに関して対ドルのインパクトは浅い。
というのも部材をドルで購入して、収益もドルで入ってくるため影響は少ない。むしろヨーロッパでのビジネスについては、「ユーロ対円」の動きに注目している。ユーロも非常に安くなっている。数年前のピークに比べると、数十パーセントも円高になってしまった。いくら売り上げても、円に換算すると利益が少なくなる。対ドルに対してもユーロが安くなってしまっていた時期もあり、これがコストの面で厳しい状況を生んでいたこともあった。
EUが今後どのような政策を執っていくか注視している。ギリシャについては救済措置が打たれたが、今後はスペイン、フランスの状況をどう立て直していくのか。「ユーロ国債」のようなものを実施しなければ、ユーロ安がいっこうに回復しないという予測もある。ギリシャの救済も非常に大きな問題だ。
ソニーはなるべく利幅の大きい商品を売るような方向に変えている。流通環境も変わりつつある。いま色々な販売店が倒産したり、倒産しかけているところがあるが、彼らも新しいビジネスの方法を模索している。
たとえばヨーロッパで最大の「Media Markt」というチェーン店があるが、ここもEコマースを拡大し、専門店を買収して傘下に入れている。マルチチャンネルリーテールと呼ばれるビジネス網を築き上げて、ユーザーが「インターネットで商品を選び、注文して、住まいの近くのショップでピックアップできるという形態を発展させていくだろう。
こうなると、インターネットとショップの値段がどこも同じになるので、ソニーとしてもこのような流通のビジネスモデルにあった商品を展開していく必要がでてくる。非常に戦略が難しいところではある。
■ネットワークサービスのセキュリティはさらに強化していく
− PSN/Qriocityで発生した情報流出の問題はヨーロッパではどのように受け止められたのか。
西田氏:今は落ち着いている。ヨーロッパというよりも、世界的に一つのプラットフォームでやっていたため、当時はヨーロッパでも同じような状況になったが、今はセキュリティを強化して、問題は回避された。ユーザーも、ゲームに関しては9割ぐらい戻ってきていただいた。今回、個人情報の流出が発生してしまったことは確かだが、流出した情報が悪用され、被害が出たという報告はない。ただ、もちろんこれからセキュリティ強化の取り組みはますます強化していく。
− GoogleのMotorola Mobility買収(関連ニュース)に関連して、今後モバイル周りの環境はどうなると見ているか。
西田氏:Googleもビジネスなので、ハードウェアに関して今後モトローラだけエクスクルーシブでやっていくという選択はしないだろう。最新OSのアップデートについて、優先的にパートナーに供給していくことはあるかもしれないが、あくまでこれまで通りのパートナーシップになるだろうと思っている。
− 今後タブレットやスマートフォンを戦略の中で強化していく一方で、家庭内でテレビというデバイスをどのように位置づけていくのか。
西田氏:タブレットやスマートフォンと、楽しむコンテンツは近づいていくかもしれないが、テレビならではの楽しみ方や、テレビだからより良いというコンテンツもあるだろう。「インターネット」「3D」「大画面」の3つが、テレビの存在意義を高めるファクターだと考えているし、今後もさらに強調していきたいと考えている。
− ヨーロッパでは、テレビでインターネットコンテンツを楽しむユーザーはどの程度いると考えているか。
西田氏:ソニーのテレビ商品のラインナップを見ると、既に70%がインターネットにつながる機能を備えている。ブルーレイは100%だ。元々「Qriocity」や、「BRAVIA Internet video channel」などネットワークサービスを付加価値として提案するために強化してきた機能だが、つながるという機能については幅が広がっている。
ヨーロッパでは、放送局がインターネットを活用して、独自のコンテンツをネット経由で見せていくという風土が存在している。ユーザーの側にも、PCを使って放送局のネットコンテンツを視聴するというスタイルが根付いている。このような楽しみ方の延長線上として、テレビでインターネットを楽しむというスタイルは、ヨーロッパでは早く普及していくと見ている。
今回は日本メディアを対象とした記者会見で、ソニー・ヨーロッパ社プレジデントの西田不二夫氏に、ネットワークや3Dをはじめとしたソニーのビジネス戦略をうかがった。
■「3D」「インターネット高画質」でテレビの価値をさらに高める
ソニーは今年もIFA出展のメーカーブースでも、最大クラスとなる「6,000平米」の巨大な出展スペースを構え、同社初のAndroidタブレットやBRAVIA、ブルーレイなど多彩な製品群を一堂に展示している(関連ニュース)。
中でも昨日開催のプレスカンファレンスで最もハイライトされたのが、“Sony Tablet”「Sシリーズ」「Pシリーズ」だ(関連ニュース)。「全世界に先駆けてIFAで、ソニー初のタブレットを発表したことはメイン・トピックスだった」と西田氏は語る。
だが、一方で今回の発表が持つ意義は、タブレット単体としての商品力を訴求するだけのものにとどまらないのだという。
「ソニーが追求してきたネットワークエンターテインメントの世界を楽しむためのデバイスに、従来の“テレビ”、“PC“、”スマートフォン”に加わるかたちで、“第4のスクリーン”となるタブレットが加わったことで、インターネットや3Gコネクションを経由して、ユーザーにエンタテインメントコンテンツを届けるためのディスプレイ・デバイスが出そろった。私たちが“4つのスクリーン戦略”と呼んでいるビジネスモデルを完結させたことを、IFAで高らかに宣言できたことに最も大きな意味がある」のだという。
ソニーは昨2010年を「3D元年」に位置づけ、IFAにおいても同社の豊富な3Dソリューションと、製品・エンターテインメントの数々を披露した(関連ニュース)。今年のプレスカンファレンスでは、「3D」に関連する発表内容が裸眼3D対応の“VAIO”シリーズにとどまった(関連ニュース)。
このことについて西田氏は「3Dはネットワークと同等に重要な戦略テーマであることに変わりはない。一例としてあげるならば、“BRAVIA”では3Dに引き続き力をいれており、ヨーロッパでも“BRAVIA”のラインナップにおける3D対応モデルの比率を高めている。また、“VAIO”のLシリーズ/Sシリーズという2つのヨーロッパにおける新製品を出した。裸眼3D対応PCの製品についても発表を行った。確かに、ヨーロッパで3Dは思っていたよりも急速には立ち上がらなかったが、徐々に浸透しているという確かな手応えを感じている。3Dはファッションとして短期に終わることなく、今後もテレビの大きなフィーチャーとして続けていくべきテーマだ」と考えを述べた。
ソニーのテレビ“BRAVIA”を、他社製品との競合の中で差異化していくためのファクターには、「3D」のほかにももう一つ「インターネットコンテンツの画質強化」があると西田氏は語る。日本国内でも既にお馴染みの、“BRAIVA”シリーズの上位モデルに採用されている新高画質回路「X-Reality PRO」(関連レビュー)は重要な技術であるという。
「“X-Reality PRO”は、例えばYouTubeのコンテンツを視聴する際にもHD画質に近い、良質な映像が楽しめるようになる技術。ソニーらしさを代表する強みを持った技術であり、ヨーロッパでもインターネットテレビの価値を高めるものとして積極アピールしきたい」とした。
ネットワークサービスは、昨年に立ち上げた“Qriocity”の名称を変更し、新しいインフラとして「Sony Entertainment Network(以下:SEN)」をスタートさせる(関連ニュース)。
「これまでソニーの異なるデバイス向けのプラットフォームとして、個別に展開してきたビデオや音楽、ゲームコンテンツの配信サービスを“Sony Entertainment Network”という、新しい大きな括りの中で一元運営しながらより強化していく。ユーザーの方々には、よりシンプルで使いやすいネットワークサービスを提供していきたい」。
以下、記者会見で執り行われた質疑応答の一部を紹介する。
■「Sony Entertainment Network」の今後の展開
− 「SEN」を新たに立ち上げたが、ヨーロッパではソニーのネットワークサービスの利用状況は現状どうなっているのか。
西田氏:ヨーロッパでは昨年11月から“Qriocity”のビデオ配信が始まり、続いて今年の1月に音楽配信を主要国で開始した。今のところ全ヨーロッパをカバーするものではないが、「SEN」での再スタートも実現し、今後は徐々に利用できる地域を拡大していきたい。少なくとも西側のヨーロッパでは、全て共通のサービスを利用できるように環境を整えていくつもりだ。
また、元々「SEN」とは別で、テレビ向けに「BRAVIA Internet video channel」というサービスも展開してきた。これは各放送局が展開するインターネットテレビ向けのビデオ配信コンテンツを“BRAVIA”で視聴できるというものであったが、こちらも今回「SEN」の中に組み込む。これはヨーロッパ独自のサービスだ。
もちろんPCで見ることもできるコンテンツだが、これをテレビでも見られるというサービスを、各ローカルのコンテンツパートナーと協業しながら拡大していく。現在ヨーロッパ全体で80ぐらいのコンテンツがスタートしており、増え続けているところだ。
− 今回の発表時点で「SEN」に含まれていなかったタイプのコンテンツは今後どうなるのか。
西田氏:すべて「SEN」の中に組み込むかたちで一元管理しながら増やしていく考えだ。
■“Sony Tablet”を「iPad対抗」のデバイスに育てる
− “Walkman”にもAndroid OSを搭載したプロトタイプを出展しているが、今後タブレットやスマートフォンも含めて、ソニーではAndroid OSをどう位置づけて活用していくのか。
西田氏:オープンアーキテクチャなので、スマートフォンやタブレットなど、モバイルに関してはAndroidを積極的に活用していくつもりだ。今後、ソニーが独自にOSをつくるという考えは持っていない。“Walkman”のようなポータブルデバイスでは色んな可能性を探ることができると考えている。
− ヨーロッパでのタブレットのマーケットはいまどういう競争環境にあるのか。
西田氏:正直に言って、アップルの「iPad」以外に有力な製品がまだ見えていないのが現状だと思う。サムスンや他のメーカーも出してきてはいるが、これといって“すごい”という商品はない。ソニーは良い商品を練り上げて出すために、少し時間をいただいたが、商品を見ていただければわかるように、今回発表した製品はかなり良い出来だと自負している。“iPad対抗”の最初のAndroid商品として、強く打ち出せたと思う。ソニーの目標は、来年12月にAndroid系タブレットとして“グローバルNo.1シェア”を勝ち取って、iPadに対抗するポジションに立つことにある。
− “Sony Tablet”について、ヨーロッパでのキャリアはどうなるか。
西田氏:国ごとにお客様が自分でネットワークオペレーターを選んで利用してもらう、SIMロックフリーの利用形態をヨーロッパでは考えている。
■“裸眼3D”やコンシューマー向け“4K2K”についても積極的に取り組む
− 裸眼3Dについて、今年のCESではテレビのプロトタイプも紹介されていたが(関連ニュース)、今後も開発は続けていくのか。また4K2Kのコンシューマー向けディスプレイに対する取り組みについて聞かせて欲しい。
西田氏:3Dを裸眼にしていくという取り組みについては、どのメーカーも取り組んでいるだろうし、ソニーもプロトタイプをお披露目した。いずれ商品のかたちでご提案する時期が来ると考えているが、それが来年になるか、再来年になるかはまだわからない状況だ。ただ、必ずそれはやってくると思う。ただし、3Dが裸眼で見られるようになるには、それなりの高精細な映像再生技術が必要とも考えている。
その一つのソリューションが「4K」だと思っている。今はプロシューマー用に4Kの製品を展開しているが、コンシューマー向けのテレビに「本当に4Kは必要か?」ということも問いかけている。4Kは高精細な裸眼3Dを実現のための一環にある技術として取り組んでいる。
4Kは商品化する際の値段の問題もある。馬鹿らしいほど高価な製品をつくって出しても、売れなければ意味がない。技術的には今でもレベルに達しているが、これを手頃な価格で販売できる商品に落とし込むところまで、今のところまだ行っていないというのが現状だ。
− 4Kで裸眼3Dというスペックでは、まだエンターテインメントとして映像を楽しむには解像度が低いとも言われているが、ソニーとして4Kで十分と考えているのか。
西田氏:もちろん4Kを超える技術があることは認識しているが、商品化のための現実的な目処が必要だと思っている。高精細な裸眼3Dを実現するために4Kだけで良いかと言えば、そうではないと思う。その他のいろいろな技術を同時に検討・開発していく必要がある。4Kは独自に開発を進めているし、裸眼3Dにも活用できる技術として検証を進めているということだ。
■ヨーロッパの景気状況は非常に難しい状況にある
− ヨーロッパの景気の現状はどのように捉えているか。
西田氏:大変憂慮している。非常に頭の痛い問題だ。ユーロゾーンの問題はアイルランド、ギリシャにはじまり、スペイン、イタリア、フランスまで波及している。イギリスはユーロゾーンではないが、景気と財政負担という意味では同じ苦しい状況にある。西側ヨーロッパ全体を考えたときに、この状況がどのぐらい続くのか、見通しは立たない。少なくとも1・2年で回復するものだと私は思っていない。緊急的な財政縮小を実行しても、その結果として国民に負担がかかることになる。
通常であれば政治レベルで景気対策を執るべきところだが、あまりに財政負担が多い故に、対策を打つことも難しい。今は非常に苦しい状況だと思う。失業率に対してもペシミスティックに考えており、心配している。
もう一つ、日本のメーカーにとっては「円高」の問題がある。一般的には「米ドル対円」の状況がフォーカスされるが、ソニーに関して対ドルのインパクトは浅い。
というのも部材をドルで購入して、収益もドルで入ってくるため影響は少ない。むしろヨーロッパでのビジネスについては、「ユーロ対円」の動きに注目している。ユーロも非常に安くなっている。数年前のピークに比べると、数十パーセントも円高になってしまった。いくら売り上げても、円に換算すると利益が少なくなる。対ドルに対してもユーロが安くなってしまっていた時期もあり、これがコストの面で厳しい状況を生んでいたこともあった。
EUが今後どのような政策を執っていくか注視している。ギリシャについては救済措置が打たれたが、今後はスペイン、フランスの状況をどう立て直していくのか。「ユーロ国債」のようなものを実施しなければ、ユーロ安がいっこうに回復しないという予測もある。ギリシャの救済も非常に大きな問題だ。
ソニーはなるべく利幅の大きい商品を売るような方向に変えている。流通環境も変わりつつある。いま色々な販売店が倒産したり、倒産しかけているところがあるが、彼らも新しいビジネスの方法を模索している。
たとえばヨーロッパで最大の「Media Markt」というチェーン店があるが、ここもEコマースを拡大し、専門店を買収して傘下に入れている。マルチチャンネルリーテールと呼ばれるビジネス網を築き上げて、ユーザーが「インターネットで商品を選び、注文して、住まいの近くのショップでピックアップできるという形態を発展させていくだろう。
こうなると、インターネットとショップの値段がどこも同じになるので、ソニーとしてもこのような流通のビジネスモデルにあった商品を展開していく必要がでてくる。非常に戦略が難しいところではある。
■ネットワークサービスのセキュリティはさらに強化していく
− PSN/Qriocityで発生した情報流出の問題はヨーロッパではどのように受け止められたのか。
西田氏:今は落ち着いている。ヨーロッパというよりも、世界的に一つのプラットフォームでやっていたため、当時はヨーロッパでも同じような状況になったが、今はセキュリティを強化して、問題は回避された。ユーザーも、ゲームに関しては9割ぐらい戻ってきていただいた。今回、個人情報の流出が発生してしまったことは確かだが、流出した情報が悪用され、被害が出たという報告はない。ただ、もちろんこれからセキュリティ強化の取り組みはますます強化していく。
− GoogleのMotorola Mobility買収(関連ニュース)に関連して、今後モバイル周りの環境はどうなると見ているか。
西田氏:Googleもビジネスなので、ハードウェアに関して今後モトローラだけエクスクルーシブでやっていくという選択はしないだろう。最新OSのアップデートについて、優先的にパートナーに供給していくことはあるかもしれないが、あくまでこれまで通りのパートナーシップになるだろうと思っている。
− 今後タブレットやスマートフォンを戦略の中で強化していく一方で、家庭内でテレビというデバイスをどのように位置づけていくのか。
西田氏:タブレットやスマートフォンと、楽しむコンテンツは近づいていくかもしれないが、テレビならではの楽しみ方や、テレビだからより良いというコンテンツもあるだろう。「インターネット」「3D」「大画面」の3つが、テレビの存在意義を高めるファクターだと考えているし、今後もさらに強調していきたいと考えている。
− ヨーロッパでは、テレビでインターネットコンテンツを楽しむユーザーはどの程度いると考えているか。
西田氏:ソニーのテレビ商品のラインナップを見ると、既に70%がインターネットにつながる機能を備えている。ブルーレイは100%だ。元々「Qriocity」や、「BRAVIA Internet video channel」などネットワークサービスを付加価値として提案するために強化してきた機能だが、つながるという機能については幅が広がっている。
ヨーロッパでは、放送局がインターネットを活用して、独自のコンテンツをネット経由で見せていくという風土が存在している。ユーザーの側にも、PCを使って放送局のネットコンテンツを視聴するというスタイルが根付いている。このような楽しみ方の延長線上として、テレビでインターネットを楽しむというスタイルは、ヨーロッパでは早く普及していくと見ている。