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公開日 2012/12/21 15:27
シャープ、IGZO技術説明会を開催 − 「今後も製造技術のアドバンテージを維持する」
「アイドリングストップ」実現の秘話も
シャープ(株)は本日、一部メディア向けにIGZO技術の説明会を開催した。
IGZOについては様々なメディアで報道されており、当サイトでも再三取り上げているので、ご存じの方が多いだろう。本日の説明会では、IGZOの優位性とそれを支えるパネル特性、そして今後の展開などがくわしく説明された。
IGZOは「Indium」(インジウム)「Gallium」(ガリウム)「Zinc」(亜鉛)「Oxygen」(酸素)の頭文字。これらを使った酸化物半導体をIGZOと称している。従来半導体にはアモルファス・シリコンが用いられていたが、これをアモルファスIGZOに置き換える事で、電子の移動度が約20〜50倍程度と非常に高くなることが2004年に発見された。
これを受けて、各社がIGZOを採用したディスプレイパネルの開発を開始。その中で2012年、シャープは他社に先駆けて実用化技術を半導体エネルギー研究所と共同開発し、世界初の量産化に成功した。
すでにIGZOを採用した製品として“AQUOS PHONE ZETA"、“AQUOS PAD"「SHT21」などが発表済み。また来年2月には32V型の4K2K液晶ディスプレイも発売される。
IGZOの特徴を活かすと、これまでにないパネル性能が得られる。IGZOは電子の移動度が高いため、トランジスターを小型化できる。このため画素を小型化することが可能になり、高精細なディスプレイが実現する。
また、低消費電力なパネルを実現できることも大きな特徴だ。トランジスターを小型化できれば、開口率の向上につながる。バックライトの光をより有効に活用できることから、消費電力を抑えられ、バッテリー持続時間が上がる。
さらにIGZOは、TFTに電機を流していない際のリーク電流が極めて小さいという利点もある。シャープではこれを「OFF性能が高い」と表現している。アモルファスシリコン比ではリーク電流が約100分の1、LTPS比では1,000分の1になるという。このため、コンデンサーに蓄えた電気で画面表示をしばらく保持し続けることができる。
同社ディスプレイデバイス開発本部 技術開発センター 技術企画室 室長の今井明氏は「開発をしているうちに、IGZOのOFF性能の高さに気がついた。なにせ、電源を切っても画が消えない。なぜなのか最初は分からず、測定ミスを疑ったりもしたが、1分、2分では無く数時間立っても画面表示が残っている。この発見がIGZO開発の原点だった」と説明。当初はON性能の高さ、つまり電子の移動度の高さに着目してIGZO開発を続けていたが、その後OFF性能の高さを偶然発見したことで、IGZOのもう一つの特徴である低消費電力が実現できたのだという。
シャープではこのOFF性能が高いという特徴に気づいた後、これを活かすためにディスプレイの駆動速度を可変にする技術を開発した。通常の液晶ディスプレイは60Hzであればその駆動速度で固定されるが、同社のスマートフォンやタブレットでは、画面にあわせて1Hz駆動と60Hz駆動を可変させるドライバーを開発し、使用している。シャープではこれを「アイドリングストップ」と呼んでいる。「特に静止画や電子書籍などを見る際は画面に動きがないので、このようなときに1Hz駆動に変える。これによって消費電力を大幅に抑えられる」(今井氏)。
同社では、駆動速度を可変させるということはこれまでの常識にはなかったとアピール。また、1Hz/60Hzの可変だけで無く、ほかの駆動速度を利用することも可能という。「たとえばYouTubeを見るときは30Hzにするなど、よりきめ細かい駆動速度の調整を行うこともできる」。
このアイドリングストップが可能になったことで、副次的な効果としてタッチパネルの高性能化も実現された。IGZO液晶が駆動を休止するあいだにタッチ検出を行うのでノイズの影響を受けにくく、より高精度な検出が可能になるのだ。
同社ディスプレイデバイス第二生産本部 第二プロセス開発室 室長の松尾拓哉氏は、「従来のタッチパネルに比べS/N比が5倍程度になる。従来、静電容量方式は微細な信号を捉えることが難しく、細いペン先の位置などの検出には不向きだったが、IGZOでは検出精度が高いため、ペン入力も可能になる」と説明する。
生産性もこれまでの液晶ディスプレイに比べて見劣りしない。今井氏は「アモルファスシリコン同等の製造プロセス。また大型マザーガラスにも対応できる」と説明する。
さて、IGZOには2種類ある。非晶質(アモルファス)を用いたアモルファスIGZOと、酸化物半導体に結晶構造「CAAC(C-Axis Aligned Crystal)」を持たせたCAAC-IGZOだ。CAAC-IGZOではさらに精細度を高められ、500ppi以上の高精細化も可能となる。「2013年はフルHD解像度のスマートフォンが数多く出てくると予想している。これらにも対応できるのがTFTの素子をCGシリコンよりも小さく出来るCAAC-IGZOだ」(今井氏)。
従来、同社では年内にもアモルファスIGZOからCAAC-IGZOへの転換を進めると説明していた。実際にいま生産しているパネルも、機種ごとにアモルファスIGZOとCAAC-IGZOが混在しているという。素子特性はCAAC-IGZOの方が有利なため、今後、全数をCAAC-IGZOにする移行する方向で調整しているという。
IGZOはシャープだけの技術ではない。台湾のAUOもIGZOを採用したパネルを開発している。この点については「我々はCAAC-IGZOへの意向も進めつつあり、生産技術が先行しているのがアドバンテージだ。今後も製造技術のアドバンテージを維持していきたいと考えている」(今井氏)。
IGZOは液晶ディスプレイだけでなく、有機ELなどにも応用が可能。昨年6月に試作品もデモしていた。この進捗状況について尋ねると、「開発は着実に進んでいる。有機ELディスプレイの高精細化を可能にするには半導体の高性能化が必要になるが、これにIGZOが向いている。あとは事業化が可能という判断があれば、いつでも市場に投入できる。ただし現時点ではコストが見合わないため、すぐに商品化されることはない」(松尾氏)という。
IGZO技術のテレビへの応用も気になるポイントだ。これについては「大型化ができないということではないが、テレビ用パネルでは画素密度が低く、IGZOのメリットが活かせない。たとえば60V型の4K2Kモデルなどでは、わざわざIGZOにしなくても対応できる。本当に差が出てくるのはPPIが高いディスプレイ。60V型で8Kディスプレイを作れという要請があればIGZOを使うことで実現できると思う」(今井氏)。
IGZOについては様々なメディアで報道されており、当サイトでも再三取り上げているので、ご存じの方が多いだろう。本日の説明会では、IGZOの優位性とそれを支えるパネル特性、そして今後の展開などがくわしく説明された。
IGZOは「Indium」(インジウム)「Gallium」(ガリウム)「Zinc」(亜鉛)「Oxygen」(酸素)の頭文字。これらを使った酸化物半導体をIGZOと称している。従来半導体にはアモルファス・シリコンが用いられていたが、これをアモルファスIGZOに置き換える事で、電子の移動度が約20〜50倍程度と非常に高くなることが2004年に発見された。
これを受けて、各社がIGZOを採用したディスプレイパネルの開発を開始。その中で2012年、シャープは他社に先駆けて実用化技術を半導体エネルギー研究所と共同開発し、世界初の量産化に成功した。
すでにIGZOを採用した製品として“AQUOS PHONE ZETA"、“AQUOS PAD"「SHT21」などが発表済み。また来年2月には32V型の4K2K液晶ディスプレイも発売される。
IGZOの特徴を活かすと、これまでにないパネル性能が得られる。IGZOは電子の移動度が高いため、トランジスターを小型化できる。このため画素を小型化することが可能になり、高精細なディスプレイが実現する。
また、低消費電力なパネルを実現できることも大きな特徴だ。トランジスターを小型化できれば、開口率の向上につながる。バックライトの光をより有効に活用できることから、消費電力を抑えられ、バッテリー持続時間が上がる。
さらにIGZOは、TFTに電機を流していない際のリーク電流が極めて小さいという利点もある。シャープではこれを「OFF性能が高い」と表現している。アモルファスシリコン比ではリーク電流が約100分の1、LTPS比では1,000分の1になるという。このため、コンデンサーに蓄えた電気で画面表示をしばらく保持し続けることができる。
同社ディスプレイデバイス開発本部 技術開発センター 技術企画室 室長の今井明氏は「開発をしているうちに、IGZOのOFF性能の高さに気がついた。なにせ、電源を切っても画が消えない。なぜなのか最初は分からず、測定ミスを疑ったりもしたが、1分、2分では無く数時間立っても画面表示が残っている。この発見がIGZO開発の原点だった」と説明。当初はON性能の高さ、つまり電子の移動度の高さに着目してIGZO開発を続けていたが、その後OFF性能の高さを偶然発見したことで、IGZOのもう一つの特徴である低消費電力が実現できたのだという。
シャープではこのOFF性能が高いという特徴に気づいた後、これを活かすためにディスプレイの駆動速度を可変にする技術を開発した。通常の液晶ディスプレイは60Hzであればその駆動速度で固定されるが、同社のスマートフォンやタブレットでは、画面にあわせて1Hz駆動と60Hz駆動を可変させるドライバーを開発し、使用している。シャープではこれを「アイドリングストップ」と呼んでいる。「特に静止画や電子書籍などを見る際は画面に動きがないので、このようなときに1Hz駆動に変える。これによって消費電力を大幅に抑えられる」(今井氏)。
同社では、駆動速度を可変させるということはこれまでの常識にはなかったとアピール。また、1Hz/60Hzの可変だけで無く、ほかの駆動速度を利用することも可能という。「たとえばYouTubeを見るときは30Hzにするなど、よりきめ細かい駆動速度の調整を行うこともできる」。
このアイドリングストップが可能になったことで、副次的な効果としてタッチパネルの高性能化も実現された。IGZO液晶が駆動を休止するあいだにタッチ検出を行うのでノイズの影響を受けにくく、より高精度な検出が可能になるのだ。
同社ディスプレイデバイス第二生産本部 第二プロセス開発室 室長の松尾拓哉氏は、「従来のタッチパネルに比べS/N比が5倍程度になる。従来、静電容量方式は微細な信号を捉えることが難しく、細いペン先の位置などの検出には不向きだったが、IGZOでは検出精度が高いため、ペン入力も可能になる」と説明する。
生産性もこれまでの液晶ディスプレイに比べて見劣りしない。今井氏は「アモルファスシリコン同等の製造プロセス。また大型マザーガラスにも対応できる」と説明する。
さて、IGZOには2種類ある。非晶質(アモルファス)を用いたアモルファスIGZOと、酸化物半導体に結晶構造「CAAC(C-Axis Aligned Crystal)」を持たせたCAAC-IGZOだ。CAAC-IGZOではさらに精細度を高められ、500ppi以上の高精細化も可能となる。「2013年はフルHD解像度のスマートフォンが数多く出てくると予想している。これらにも対応できるのがTFTの素子をCGシリコンよりも小さく出来るCAAC-IGZOだ」(今井氏)。
従来、同社では年内にもアモルファスIGZOからCAAC-IGZOへの転換を進めると説明していた。実際にいま生産しているパネルも、機種ごとにアモルファスIGZOとCAAC-IGZOが混在しているという。素子特性はCAAC-IGZOの方が有利なため、今後、全数をCAAC-IGZOにする移行する方向で調整しているという。
IGZOはシャープだけの技術ではない。台湾のAUOもIGZOを採用したパネルを開発している。この点については「我々はCAAC-IGZOへの意向も進めつつあり、生産技術が先行しているのがアドバンテージだ。今後も製造技術のアドバンテージを維持していきたいと考えている」(今井氏)。
IGZOは液晶ディスプレイだけでなく、有機ELなどにも応用が可能。昨年6月に試作品もデモしていた。この進捗状況について尋ねると、「開発は着実に進んでいる。有機ELディスプレイの高精細化を可能にするには半導体の高性能化が必要になるが、これにIGZOが向いている。あとは事業化が可能という判断があれば、いつでも市場に投入できる。ただし現時点ではコストが見合わないため、すぐに商品化されることはない」(松尾氏)という。
IGZO技術のテレビへの応用も気になるポイントだ。これについては「大型化ができないということではないが、テレビ用パネルでは画素密度が低く、IGZOのメリットが活かせない。たとえば60V型の4K2Kモデルなどでは、わざわざIGZOにしなくても対応できる。本当に差が出てくるのはPPIが高いディスプレイ。60V型で8Kディスプレイを作れという要請があればIGZOを使うことで実現できると思う」(今井氏)。