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公開日 2013/01/31 12:04
提供遅れの「iTunes Match」、アップル「サービス開始に努力している」
12年内国内開始予定だったクラウドサービス
2012年後半に国内でサービス開始すると発表していた(関連ニュース)、アップルのクラウド音楽サービス「iTunes Match」。スタートを楽しみに待っていたユーザーも多いことだろうが、結局2012年中のサービス開始は行われず、この原稿を書いている1月31日段階でも、まだ提供は行われていない。
iTunes Matchは、PC/MacのiTunesライブラリを同社の「iCloud」にアップロードし、同じiCloudアカウントでひもづけられたiOSデバイスなどでダウンロードやストリーミングが行える有料サービス。米国では年間24.99ドルで提供されている。
iTunes Matchでは、iTunes Storeで購入した楽曲だけでなく、CDからリッピングした楽曲なども、すべてクラウド上に置いておくことが可能。好きなときに好きなデバイスからアクセスすることができるのが特徴だ。たとえば大量のiTunesライブラリーを自宅と職場、あるいは出先で共有したいといったニーズに応えることができる。このサービスを利用すれば、「あの曲が聴きたいけどiPhoneに同期し忘れたので聴けない」ということがなくなるのだ。
さらに同サービスは、手持ちの楽曲がiTunes Storeのライブラリと合致した場合、自動的に256kbpsのAACデータにアップグレードされることも特徴。MP3などでエンコードした音質の低い楽曲も自動的に高音質化される。
今回編集部は、同社にサービス開始が遅れている理由や背景を尋ねてみたところ、以下のような返答が得られた。
「ご指摘のように、昨年サービスを開始できなかったのは確かです。現在サービスを提供するための努力をしていますが、具体的な時期はまだ言える段階にありません。」(アップル広報部)
つまり、国内でのサービス提供そのものが立ち消えになったということではなく、ただ単に様々な手続きや作業が遅れていることが原因と考えられる。意外にサービス開始が近いのか、それともまだしばらく時間がかかるのかは不明だが、サービス開始を待っていたユーザーは一安心というところだろう。
■iTunes Matchの提供が遅れた理由とは
アップルは、いまや世界で1、2を争う時価総額を誇る巨大企業で、その影響力は甚大だが、その実、売上や利益に比して社員は極端に少ない。現在、全世界の社員は7万人ほどで、しかもそのうち4万人はアップルストアの従業員だ。残りの3万人で製品開発や製造管理、全世界におけるマーケティング、物流などをすべてまかなっていることになる。さらに言うと、日本法人であるApple Japan合同会社の従業員は1,000人ほど(2011年9月時点)だ。
事情にくわしい社外の関係者に周辺取材を行ったところ、iTunes Storeのサービスを拡充するため、ソフトメーカーなどと各種交渉を行ったり、その結果をもとに実際のサービス拡充を行っているメンバーはごく少数に限られているのだという。だから一つのことに集中すると、ほかのスケジュールに支障を来すことも十分考えられる。
これは同社の伝統でもあるが、アップルは一つのことに力を入れると、ほかのリソースもすべてそこに投入し、より重要でないプロジェクトは後回しにする傾向がある。かなり前のことだが、iPhone用のOSを開発する際、Mac OSのチームが組み入れられ、それによってMac OSリリースのスケジュールが遅れたというのは有名な話だ。最近ではアップルもスケジュールを守るようになり、このような遅れは稀になったが、いまだにベンチャー企業のようなスピード感やフレキシビリティーが、アップルの本質として残っているということなのだろう。
振り返ってみれば、昨年日本のiTunes Storeは様々なサービス増強を立て続けに行った。まず楽曲ラインナップを増やす施策では、2月にソニー・ミュージックの洋楽を提供開始した。関係者によると、2月に提供を始めたところ、iTunesにおけるソニー・ミュージック楽曲の売上は、ソニー側を驚かせるほど多かったらしい。この好結果をベースに交渉を続けたことが奏効したのだろう、11月にはソニー・ミュージックの邦楽楽曲も配信が開始され、大きな話題となった(関連ニュース)。2005年にアップルがiTunes Store(当時の名称はiTunes Music Store)を開始してから、実に7年越しの交渉を経て、ソニー・ミュージックの楽曲の取り扱いが実現したことになる。
さらに、配信楽曲の品質を上げる取り組みも行われた。2月にはiTunes Store全曲をAAC 256kbpsとし、さらにDRMも撤廃された。これもユーザーの利便性を大きく高めるものとして歓迎された。
特にソニー・ミュージックの楽曲提供開始は、国内のiTunes StoreにとってはiTunes Matchサービスの開始よりもはるかにインパクトの大きい、画期的なできごとだった。この交渉に担当者が全力を注いだ結果、iTunes Matchサービス提供のための準備が遅れたというのが、今回の真相と考えられる。ともあれ今回の取材で、遅かれ早かれサービスが開始されることは確認された。あとはそれがなるべく早期であることを期待して待ちたい。
iTunes Matchは、PC/MacのiTunesライブラリを同社の「iCloud」にアップロードし、同じiCloudアカウントでひもづけられたiOSデバイスなどでダウンロードやストリーミングが行える有料サービス。米国では年間24.99ドルで提供されている。
iTunes Matchでは、iTunes Storeで購入した楽曲だけでなく、CDからリッピングした楽曲なども、すべてクラウド上に置いておくことが可能。好きなときに好きなデバイスからアクセスすることができるのが特徴だ。たとえば大量のiTunesライブラリーを自宅と職場、あるいは出先で共有したいといったニーズに応えることができる。このサービスを利用すれば、「あの曲が聴きたいけどiPhoneに同期し忘れたので聴けない」ということがなくなるのだ。
さらに同サービスは、手持ちの楽曲がiTunes Storeのライブラリと合致した場合、自動的に256kbpsのAACデータにアップグレードされることも特徴。MP3などでエンコードした音質の低い楽曲も自動的に高音質化される。
今回編集部は、同社にサービス開始が遅れている理由や背景を尋ねてみたところ、以下のような返答が得られた。
「ご指摘のように、昨年サービスを開始できなかったのは確かです。現在サービスを提供するための努力をしていますが、具体的な時期はまだ言える段階にありません。」(アップル広報部)
つまり、国内でのサービス提供そのものが立ち消えになったということではなく、ただ単に様々な手続きや作業が遅れていることが原因と考えられる。意外にサービス開始が近いのか、それともまだしばらく時間がかかるのかは不明だが、サービス開始を待っていたユーザーは一安心というところだろう。
■iTunes Matchの提供が遅れた理由とは
アップルは、いまや世界で1、2を争う時価総額を誇る巨大企業で、その影響力は甚大だが、その実、売上や利益に比して社員は極端に少ない。現在、全世界の社員は7万人ほどで、しかもそのうち4万人はアップルストアの従業員だ。残りの3万人で製品開発や製造管理、全世界におけるマーケティング、物流などをすべてまかなっていることになる。さらに言うと、日本法人であるApple Japan合同会社の従業員は1,000人ほど(2011年9月時点)だ。
事情にくわしい社外の関係者に周辺取材を行ったところ、iTunes Storeのサービスを拡充するため、ソフトメーカーなどと各種交渉を行ったり、その結果をもとに実際のサービス拡充を行っているメンバーはごく少数に限られているのだという。だから一つのことに集中すると、ほかのスケジュールに支障を来すことも十分考えられる。
これは同社の伝統でもあるが、アップルは一つのことに力を入れると、ほかのリソースもすべてそこに投入し、より重要でないプロジェクトは後回しにする傾向がある。かなり前のことだが、iPhone用のOSを開発する際、Mac OSのチームが組み入れられ、それによってMac OSリリースのスケジュールが遅れたというのは有名な話だ。最近ではアップルもスケジュールを守るようになり、このような遅れは稀になったが、いまだにベンチャー企業のようなスピード感やフレキシビリティーが、アップルの本質として残っているということなのだろう。
振り返ってみれば、昨年日本のiTunes Storeは様々なサービス増強を立て続けに行った。まず楽曲ラインナップを増やす施策では、2月にソニー・ミュージックの洋楽を提供開始した。関係者によると、2月に提供を始めたところ、iTunesにおけるソニー・ミュージック楽曲の売上は、ソニー側を驚かせるほど多かったらしい。この好結果をベースに交渉を続けたことが奏効したのだろう、11月にはソニー・ミュージックの邦楽楽曲も配信が開始され、大きな話題となった(関連ニュース)。2005年にアップルがiTunes Store(当時の名称はiTunes Music Store)を開始してから、実に7年越しの交渉を経て、ソニー・ミュージックの楽曲の取り扱いが実現したことになる。
さらに、配信楽曲の品質を上げる取り組みも行われた。2月にはiTunes Store全曲をAAC 256kbpsとし、さらにDRMも撤廃された。これもユーザーの利便性を大きく高めるものとして歓迎された。
特にソニー・ミュージックの楽曲提供開始は、国内のiTunes StoreにとってはiTunes Matchサービスの開始よりもはるかにインパクトの大きい、画期的なできごとだった。この交渉に担当者が全力を注いだ結果、iTunes Matchサービス提供のための準備が遅れたというのが、今回の真相と考えられる。ともあれ今回の取材で、遅かれ早かれサービスが開始されることは確認された。あとはそれがなるべく早期であることを期待して待ちたい。