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公開日 2019/05/28 19:38
<NHK技研公開>8K/120Hzの「フルスペック8K」アピール。「地デジ8K放送」実現も目指す
ワイヤレス8Kカメラなど制作機材も進化
ラインアレイスピーカーは、テレビ画面上下に取り付けた各25ch/合計50chのスピーカーと、サブウーファー2基を内蔵するテレビラック、そしてそれらを司るプロセッサーとでシステムを構成。壁での音の反射などを利用しないトランスオーラル再生で、22.2ch音響を再現するデモを体験できる。
サウンドバーはシャープがすでに22.2chバーチャル再生対応の“AQUOS オーディオ”「8A-C31AX1」(関連ニュース)を市場投入しているが、今回、これとは別に欧州の研究機関フラウンホーファーと共同研究しているものを展示。上向き配置のユニットも含めた14chサウンドバーとサブウーファー2基によるデモを行っている。
また放送業界向けには、22.2ch音響の特徴を保持したまま5.1chとステレオ音声を自動で制作できるダウンミックス装置も開発。例えば、従来の技術では複数のチャンネルが加算されることで周波数成分ごとの音の強弱が22.2ch音響から変化し、音色の劣化につながっていた。これに対し、22.2ch音響の周波数成分ごとの音の強弱にあわせてダウンミックスすることで音色の劣化を抑制する、コヒーレンスコントロール技術を開発したという。
あわせて、ラウドネスチェイス技術も開発。番組制作において管理している平均ラウドネス値はダウンミックスすることによって変化するが、5.1chとステレオの平均ラウドネス値を22.2ch音響の番組全体の平均ラウドネス値にあわせてダウンミックスできるようにしたという。
そのほか音声関連では、。オブジェクトベース音響による次世代音声サービスのデモも展開。例えばアイドルグループが歌っている音楽番組で、自分の推しメンだけの歌声を大きくするなど、視聴者が自分の好みや視聴環境にあわせて番組音声をカスタマイズできるサービスのデモを体験できる。
同技術においては、国際標準の音響メタデータに対応したMPEG-H 3D Audio用のインターフェースを開発。MPEG-H 3D Audio準拠のメタデータで音の素材の構成や再生位置などを記述し、その音響メタデータを音声信号に同期させて既存のデジタル音声信号の入出力装置を介して伝送する方式と、MPEG-H 3D Audioのリアルタイム符号化装置に入力するインターフェースを開発した。また、好みにあわせてダイアログを差し替えたりダイアログの音量を調整したりできるダイアログ制御と、ステレオから22.2ch音響まで様々なスピーカー配置に適用可能なレンダラーをMPEG-H 3D Audioリアルタイム複合装置に実装したのだという。
■8Kカメラのワイヤレス化に成功
カメラなど番組制作側の機器や8K技術もさらに進化。スポーツ中継などでの活用を想定した8K/4Kワイヤレスカメラなどが登場した。
ワイヤレスカメラは、42GHzのミリ波帯の電波を使用し、8K映像を約200Mbpsで伝送。カメラマンと、エンコーダーやTS多重装置などを組み込んだ小型送信機を背負うスタッフという2人組で運用するスタイルで、可搬型の低遅延コーデックと組み合わせることで高画質低遅延な映像をワイヤレス伝送できるとしているほか、SC-FDE技術によって移動しながらでも安定して無線伝送できるという。
8Kカメラについては、将来的なさらなる性能改善をめざした次世代撮像デバイス技術も紹介。カメラの高感度化を目指した増倍膜積層型撮像デバイスと、小型で高精細な単板カメラの実現を目指した、有機膜積層型カラー撮像デバイスの要素技術紹介を行っている。
そして、現在はBS放送波を使って行っている4K8K放送を、地デジで行えるようにする技術も研究。現在の新4K8K衛星放送で使われているHEVCよりも高効率かつ高圧縮な次世代映像符号化技術「VVC(Versatile Video Coding)」の動向紹介や、NHKの提案技術を含むVVCの新技術を紹介している。VVCはHEVCに比べて30〜50%の符号化効率改善を目標とし、2020年7月の国際標準化を目指している。
また、地上放送での1つのチャンネル帯域(6MHz)で、固定受信用の8K放送と移動受信用の2K放送の同時提供を目指した実験などを行っていることも紹介している。
加えて、データ量が膨大になる8Kコンテンツの保存のために、テラバイト単位のデータを1枚のディスクに保存できる「ホログラムメモリー」の研究もデモ。これまでは黒と白のみを用いた振幅2値データでの記録方法だったところから、2種類の灰色も用いる4値での記録に増やすことで、容量と転送速度の双方を向上させた。2値では1枚で2TBだったところ、4値では倍の4TB記録が可能で、将来的には振幅データだけでなく位相データも使うことで、さらなる大容量化も可能という。
技研公開2019は前述のように5月30日から6月2日までの開催。会場は世田谷区砧のNHK技研で、入場は無料。一般視聴者も入場可能で、子供向けのワークショップなども行われる。