公開日 2010/09/28 09:58
ケンウッドの96/24録音対応リニアPCMレコーダー「MGR-E8」登場 − 岩井喬氏がハンドリングレポート
40kHz録音対応マイクを搭載
ケンウッドから最高96kHz/24bitのリニアPCM録音に対応したポータブルオーディオレコーダー“Media Keg”「MGR-E8」が発売される。本機の録音パフォーマンスを、レコーディングエンジニアとしての経歴を持つライターの岩井喬氏がレビューする。
■ポータブルレコーダーとしての使い勝手をさらに高めた「MGR-E8」の諸機能
携帯音楽プレーヤーの代名詞になっているiPodやソニーの“ウォークマン”に対して、高音質を打ち出して他社のプレーヤーと差別化を図ったケンウッドの“Media keg”シリーズであるが、2008年にシリーズで初めてとなるレコーダーモデル「MGR-A7」が登場した。ステレオコンデンサーマイクのほか、センターマイクも追加した3マイク構成で、記録媒体は本体内蔵の2GBフラッシュメモリーに加え、SDカードスロットも搭載。最大48kHz/16bitのPCM録音に対応したコンパクトなモデルだ。「MGR-A7」のメリットのひとつは録音機ながら、プレーヤーとしての機能性・操作性が高く、ライバル機とは違う魅力を持った製品であることだ。これは当初プレーヤーとして開発がスタートしたことに寄るところが大きいようだが、今ではそのコンセプトが大きなメリットに繋がっているように感じる。
そしてついに「MGR-A7」の上位機として「MGR-E8」が発売される。サイズはA7とほとんど変わらないが、デザインをよりスタイリッシュに刷新。最高96kHz/24bitのPCM録音も可能となり、大幅な性能アップが図られた。「MGR-A7」譲りの無指向性ステレオコンデンサーマイクと、40kHzまでの広帯域に対応する2ウェイ構成(可聴帯域用とそれ以上の高音域用に分割)の単一指向性センターマイクを搭載。無指向性ステレオマイクは指向角120度となっており、広がりのあるサウンドを収音できる。また、3つのマイクを使ったステレオ収音にも対応しているが、こちらはセンター定位の収音度を高めた録音が可能となる。さらに正面方向にフォーカスを絞ったモノラル収音も可能だ。
記録媒体には内蔵2GBフラッシュメモリー(96kHz/24bit収録ならば50分)のほか、microSDカードスロット(microSDHCカードは最大16GBまで対応。8GBで44.1kHz/16bit録音時、最大12時間20分収録可能)を装備し、録音先を柔軟に変更可能な上、ファイル移動も簡単に行える。こうした利便性も「MGR-A7」をベースにした親切な設計であるといえる。なお「MGR-E8」の発売後も「MGR-A7」は併売される。
「MGR-A7」から大きく変わった仕様としては、液晶ディスプレイが大型化され、バックライトもオレンジ色になった。本体背面には音声ファイルのモニタリングが行えるよう小型スピーカーが搭載され、アウトドアなどの幅広いシーンで活用できる三脚用ネジ穴やウインドスクリーンが用意された。電源はUSB接続でチャージできるリチウムイオン充電池を装備し、約2.5時間で充電完了、フル充電・96kHz/24bit収録時の連続録音時間は約16時間。なおACアダプターへの対応は省略されている。操作のキー配置はほぼ「MGR-A7」を踏襲しているが、マニュアル録音時用の録音レベル調整に使用するロータリーエンコーダーが側面に新設され、より直感的なオペレーションが可能になっている。また、ファイル管理、転送や録音ファイルの編集が可能なソフト「BeatJam」が付属する。基本的なアナログリミッターやローカットフィルター、外部マイク入力(プラグインパワー対応)、ライン入出力も装備し、多様で本格的な録音に対応できる。
■極めて解像感の高い録音が楽しめる
実際に録音した感触は、レゾリューションを上げていくごとに音像の質感の滑らかさが向上するとともに、空間の奥行きが広がり、個々の音の配置が見やすくなってくる印象。本機から標準アクセサリーとして同梱されることになったウインドスクリーンによって、屋外でも安心して収録ができるようになった点は大きな進化である。特に3マイクモードの録音は風などの“吹かれ”に弱いので、屋外の録音ではウインドスクリーンは必須である。
深夜、虫の鳴き声を96kHz/24bit収音してみたが、2マイク録音では自然な音の広がりと、正確な定位感を味わうことができる。解像度も極めて高い。対して3マイク録音ではセンターに音像が集まり、より粒立ちの良さが際立ってくる。ただし正確な定位感、音の移動に対しての表現が甘くなる傾向なので、正確な音場感を活かしたフィールドレコーディングでは2マイク、バンド録音やデモテープ作りなどには3マイクにメリットがあるように感じられた。
なお、±電源による高い変換効率とDCカットコンデンサを廃して、全帯域で優れた周波数特性を得られるClass-W方式ヘッドホンアンプを採用したことで、低消費電力と高音質を実現しており、付属カナル型ヘッドホンはもちろん、オーバーヘッド型モデルでも安定したドライブが可能だ。
【筆者紹介】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
■ポータブルレコーダーとしての使い勝手をさらに高めた「MGR-E8」の諸機能
携帯音楽プレーヤーの代名詞になっているiPodやソニーの“ウォークマン”に対して、高音質を打ち出して他社のプレーヤーと差別化を図ったケンウッドの“Media keg”シリーズであるが、2008年にシリーズで初めてとなるレコーダーモデル「MGR-A7」が登場した。ステレオコンデンサーマイクのほか、センターマイクも追加した3マイク構成で、記録媒体は本体内蔵の2GBフラッシュメモリーに加え、SDカードスロットも搭載。最大48kHz/16bitのPCM録音に対応したコンパクトなモデルだ。「MGR-A7」のメリットのひとつは録音機ながら、プレーヤーとしての機能性・操作性が高く、ライバル機とは違う魅力を持った製品であることだ。これは当初プレーヤーとして開発がスタートしたことに寄るところが大きいようだが、今ではそのコンセプトが大きなメリットに繋がっているように感じる。
そしてついに「MGR-A7」の上位機として「MGR-E8」が発売される。サイズはA7とほとんど変わらないが、デザインをよりスタイリッシュに刷新。最高96kHz/24bitのPCM録音も可能となり、大幅な性能アップが図られた。「MGR-A7」譲りの無指向性ステレオコンデンサーマイクと、40kHzまでの広帯域に対応する2ウェイ構成(可聴帯域用とそれ以上の高音域用に分割)の単一指向性センターマイクを搭載。無指向性ステレオマイクは指向角120度となっており、広がりのあるサウンドを収音できる。また、3つのマイクを使ったステレオ収音にも対応しているが、こちらはセンター定位の収音度を高めた録音が可能となる。さらに正面方向にフォーカスを絞ったモノラル収音も可能だ。
記録媒体には内蔵2GBフラッシュメモリー(96kHz/24bit収録ならば50分)のほか、microSDカードスロット(microSDHCカードは最大16GBまで対応。8GBで44.1kHz/16bit録音時、最大12時間20分収録可能)を装備し、録音先を柔軟に変更可能な上、ファイル移動も簡単に行える。こうした利便性も「MGR-A7」をベースにした親切な設計であるといえる。なお「MGR-E8」の発売後も「MGR-A7」は併売される。
「MGR-A7」から大きく変わった仕様としては、液晶ディスプレイが大型化され、バックライトもオレンジ色になった。本体背面には音声ファイルのモニタリングが行えるよう小型スピーカーが搭載され、アウトドアなどの幅広いシーンで活用できる三脚用ネジ穴やウインドスクリーンが用意された。電源はUSB接続でチャージできるリチウムイオン充電池を装備し、約2.5時間で充電完了、フル充電・96kHz/24bit収録時の連続録音時間は約16時間。なおACアダプターへの対応は省略されている。操作のキー配置はほぼ「MGR-A7」を踏襲しているが、マニュアル録音時用の録音レベル調整に使用するロータリーエンコーダーが側面に新設され、より直感的なオペレーションが可能になっている。また、ファイル管理、転送や録音ファイルの編集が可能なソフト「BeatJam」が付属する。基本的なアナログリミッターやローカットフィルター、外部マイク入力(プラグインパワー対応)、ライン入出力も装備し、多様で本格的な録音に対応できる。
■極めて解像感の高い録音が楽しめる
実際に録音した感触は、レゾリューションを上げていくごとに音像の質感の滑らかさが向上するとともに、空間の奥行きが広がり、個々の音の配置が見やすくなってくる印象。本機から標準アクセサリーとして同梱されることになったウインドスクリーンによって、屋外でも安心して収録ができるようになった点は大きな進化である。特に3マイクモードの録音は風などの“吹かれ”に弱いので、屋外の録音ではウインドスクリーンは必須である。
深夜、虫の鳴き声を96kHz/24bit収音してみたが、2マイク録音では自然な音の広がりと、正確な定位感を味わうことができる。解像度も極めて高い。対して3マイク録音ではセンターに音像が集まり、より粒立ちの良さが際立ってくる。ただし正確な定位感、音の移動に対しての表現が甘くなる傾向なので、正確な音場感を活かしたフィールドレコーディングでは2マイク、バンド録音やデモテープ作りなどには3マイクにメリットがあるように感じられた。
なお、±電源による高い変換効率とDCカットコンデンサを廃して、全帯域で優れた周波数特性を得られるClass-W方式ヘッドホンアンプを採用したことで、低消費電力と高音質を実現しており、付属カナル型ヘッドホンはもちろん、オーバーヘッド型モデルでも安定したドライブが可能だ。
【筆者紹介】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。