開発担当者に聞く新サービスのコンセプト
ソーシャルメディアのパワーを活かした新しいテレビ体験 − 「TVRoll.jp」を折原一也が試す
JVC・ケンウッド・ホールディングス(株)が2月15日、テレビ番組に関するコメントを閲覧・投稿して楽しめるソーシャル・ネットワークサービス「TVRoll.jp(http://tvroll.jp/)」のβ版をスタートさせた。同社の発表ではTwitterとの連携、独自の放送同定技術、ソフィアデジタル(株)のワンセグ6ch同時録画が可能なチューナーレコーダー「ARecX6」と連携できることなどが明らかにされているが、実際に「TVRoll.jp」にはどんな機能があって、どんな楽しみ方ができるのか、今ひとつイメージできない方も多くいるだろう。
今回はJVC・ケンウッド・ホールディングス(以下:JVC ケンウッド)にて「TVRoll.jp」の開発を担当されたキーパーソンにインタビューを行い、サービスの企画意図や、開発の経緯を訊ねた。なお、記事後編では実際に「ARecX6」の実機も用意して、「TVRoll.jp」のサービスに盛り込まれた機能を解説していく。
【取材協力】
■多チャンネル同時録画対応のレコーダーが登場し、変わりはじめたテレビの視聴体験
デジタルビデオレコーダーがDVDレコーダーからHDD内蔵レコーダー、BDレコーダーへと進化してきて、近年テレビの視聴スタイルは大きな変化を遂げてきた。そうした大きな流れの到達点のひとつとして、東芝の“CELLレグザ”を始めとした大容量記録媒体を備え「多チャンネル同時録画」を実現する製品が登場してきたことにより、テレビを楽しむライフスタイルが、いま再び大きく変わろうとしている。
これまでのテレビの楽しみ方は、リアルタイムの放送を観るか、生で観られない番組はレコーダーに録画予約を入れておいて、番組終了後に録画したものを観るかだった。しかし、いずれの楽しみ方も、観たい番組があらかじめ決まっていることが前提だった。しかし、多チャンネルを同時に録画できるレコーダーが登場し、これを実際に使ってみると、今までの録画スタイルが革新されるような感覚を得た。予め観たい番組を録画しておいて見るのではなく、「面白そうな番組を放送終了後にチェックして、あとから観る」のが当たり前になるのだ。
ソニーの“Xビデオステーション”、東芝の“CELLレグザ”と、いわゆる多チャンネル同時録画に対応する録画機能搭載機を使い続けている筆者としては、録画のライフスタイルが変革の時期に来ていることを、自己の体験からも非常に良く感じている。多チャンネル同時録画よって、テレビ録画・視聴のパラダイムシフトが起こるだろう。そして「TVRoll.jp」の開発思想の大元には、ひとつ多チャンネル同時録画によって、人々のライフスタイルを変えようとする発想がある。
「私たちがふだん、どんな時に“観たい”と思うテレビ番組に出会うのか考えてみると、例えば帰宅後に朝刊の番組表で知ったり、学校や職場で話題になったりということもきっかけになりますが、こうしたリアルの世界はもちろんのこと、最近ではインターネットのブログやTwitterなどの評判を見て知ったり、バーチャルの交友関係とも連携してきます。そして、面白そうな番組を放送前に知ることもあれば、放送された後に観たくなることも多々あります。そのためには手元に放送された番組を全て持っておいて、後からでも観られる環境が必要になります。」(石井氏)
最近ではインターネット経由で得られる情報がますます多様化してきて、これまで触れることの無かった情報が、ネットを見ていると不意に飛び込んでくることも増えている。面白そうなテレビ番組との出会うきっかけには、いつも他人とのコミュニケーションがあるが、優秀なコミュニケーションツールであるインターネットを使って、私たちは面白そうな番組に対して、より強力にアンテナを張ることができるようになった。一方で、どんなに評判の良かった番組でも、またあとで再放送される保証はどこにもない。「TVRoll.jp」のサービス多チャンネル同時録画ができる「ARecX6」との連携により、観たかったけれど、みのがしてしまったテレビ番組を放送後にも観ることができる環境を実現するものである。
「TVRoll.jp」のサービスは、今から約2年前に企画が誕生したという。はじめはサービスの骨組みを固めながら、PCベースの多チャンネル同時録画機を試作して、「TVRoll.jp」のソフトウェアが開発・検証されてきた。JVC、ケンウッドとも、周知の通りオーディオ・ビジュアルのハード機器メーカーなので、多番組同時録画対応のレコーダーを自社で開発することも視野に入れられてきたが、昨年にソフィアデジタルからチューナーレコーダー「ARecX6」が発売されたことを契機に、自社開発によるレコーダーの開発を並行して進めながらも、JVC ケンウッドではソフィアデジタルとの協力により、開発中の「TVRoll.jp」の「β版」サービスを2月にスタートさせた。「とにかく早く、世に私たちの提案を投げかけることが大事だと考えた」と、開発を指揮する河野氏は語る。同社では「β版」をリリースしたのち、約6ヶ月間に渡り「TVRoll.jp」、ならびに「ARecX6」のユーザーニーズを調査し、ポテンシャルを測っていく考えだ。
■ソーシャルメディアのパワーを活かした新しいテレビ体験
「TVRoll.jp」サービスの特徴は、Twitterなどのソーシャルメディアと連動したテレビ視聴を実現したことだ。
近頃は“テレビが面白くない”という言説を良く見聞きすることがある。しかし、本当にすべてのテレビ番組が面白くないのかと言えば、筆者は決してそうではないと思う。ただ、何となくテレビを付けているだけでは、なかなか面白い番組に巡り合えなくなったと実感することが多い、というところだろうか。
一方で、ネットのソーシャルサービスのサイトにアップされている投稿やコメントの中には、日々テレビで放送されたコンテンツについて盛り上がっているものも多く、テレビ関連の話題が人気を集めている。このようなコメントを見てみると、テレビ番組そのものが面白くないのではなく、毎日24時間、放送され続けているテレビ番組の中から、面白いものを見つけられる便利なツールがあればもっとテレビが楽しくなるのではないか?と感じる。この点に「TVRoll.jp」も注目し、Twitterなどで公開された「テレビ番組に関連したツィート」をサイト内に取り込み、利用者自身もテレビ番組に関するコメントをサイトから投稿できる機能を実現したのだ。
「はじめは多チャンネル録画されたコンテンツの中から、キーワード検索やシーン検索を便利にする技術を磨いて行こうという考え方もあったのですが、例えばキーワードで探す場合、大抵はユーザーが見たい・知りたいキーワードが先にあって検索をかけるので、意外な番組との出会いや、面白い番組を発見するきっかけは制限されてしまいます。そこで、Twitterのコメントとの連携機能を検討した時に、テレビ番組に関連したツィートのコメントをフックにすることで、サービスの利用者に新たな発見を提供できるのではと考えました。」(河野氏)
“テレビとインターネットの融合”をイメージしたとき、まずはオンデマンドの映像配信に目が向きがちだが、「TVRoll.jp」の目指したものは、「テレビからWeb」の流れではなく、「Webからテレビ」へつないだときに生まれる、新しいテレビの楽しみ方だったのだ。
続くページでは、実際に「TVRoll.jp」のサービスを「ARecX6」で使ってみたハンドリングレポートとともに紹介していきたい。
今回はJVC・ケンウッド・ホールディングス(以下:JVC ケンウッド)にて「TVRoll.jp」の開発を担当されたキーパーソンにインタビューを行い、サービスの企画意図や、開発の経緯を訊ねた。なお、記事後編では実際に「ARecX6」の実機も用意して、「TVRoll.jp」のサービスに盛り込まれた機能を解説していく。
■多チャンネル同時録画対応のレコーダーが登場し、変わりはじめたテレビの視聴体験
デジタルビデオレコーダーがDVDレコーダーからHDD内蔵レコーダー、BDレコーダーへと進化してきて、近年テレビの視聴スタイルは大きな変化を遂げてきた。そうした大きな流れの到達点のひとつとして、東芝の“CELLレグザ”を始めとした大容量記録媒体を備え「多チャンネル同時録画」を実現する製品が登場してきたことにより、テレビを楽しむライフスタイルが、いま再び大きく変わろうとしている。
これまでのテレビの楽しみ方は、リアルタイムの放送を観るか、生で観られない番組はレコーダーに録画予約を入れておいて、番組終了後に録画したものを観るかだった。しかし、いずれの楽しみ方も、観たい番組があらかじめ決まっていることが前提だった。しかし、多チャンネルを同時に録画できるレコーダーが登場し、これを実際に使ってみると、今までの録画スタイルが革新されるような感覚を得た。予め観たい番組を録画しておいて見るのではなく、「面白そうな番組を放送終了後にチェックして、あとから観る」のが当たり前になるのだ。
ソニーの“Xビデオステーション”、東芝の“CELLレグザ”と、いわゆる多チャンネル同時録画に対応する録画機能搭載機を使い続けている筆者としては、録画のライフスタイルが変革の時期に来ていることを、自己の体験からも非常に良く感じている。多チャンネル同時録画よって、テレビ録画・視聴のパラダイムシフトが起こるだろう。そして「TVRoll.jp」の開発思想の大元には、ひとつ多チャンネル同時録画によって、人々のライフスタイルを変えようとする発想がある。
「私たちがふだん、どんな時に“観たい”と思うテレビ番組に出会うのか考えてみると、例えば帰宅後に朝刊の番組表で知ったり、学校や職場で話題になったりということもきっかけになりますが、こうしたリアルの世界はもちろんのこと、最近ではインターネットのブログやTwitterなどの評判を見て知ったり、バーチャルの交友関係とも連携してきます。そして、面白そうな番組を放送前に知ることもあれば、放送された後に観たくなることも多々あります。そのためには手元に放送された番組を全て持っておいて、後からでも観られる環境が必要になります。」(石井氏)
最近ではインターネット経由で得られる情報がますます多様化してきて、これまで触れることの無かった情報が、ネットを見ていると不意に飛び込んでくることも増えている。面白そうなテレビ番組との出会うきっかけには、いつも他人とのコミュニケーションがあるが、優秀なコミュニケーションツールであるインターネットを使って、私たちは面白そうな番組に対して、より強力にアンテナを張ることができるようになった。一方で、どんなに評判の良かった番組でも、またあとで再放送される保証はどこにもない。「TVRoll.jp」のサービス多チャンネル同時録画ができる「ARecX6」との連携により、観たかったけれど、みのがしてしまったテレビ番組を放送後にも観ることができる環境を実現するものである。
「TVRoll.jp」のサービスは、今から約2年前に企画が誕生したという。はじめはサービスの骨組みを固めながら、PCベースの多チャンネル同時録画機を試作して、「TVRoll.jp」のソフトウェアが開発・検証されてきた。JVC、ケンウッドとも、周知の通りオーディオ・ビジュアルのハード機器メーカーなので、多番組同時録画対応のレコーダーを自社で開発することも視野に入れられてきたが、昨年にソフィアデジタルからチューナーレコーダー「ARecX6」が発売されたことを契機に、自社開発によるレコーダーの開発を並行して進めながらも、JVC ケンウッドではソフィアデジタルとの協力により、開発中の「TVRoll.jp」の「β版」サービスを2月にスタートさせた。「とにかく早く、世に私たちの提案を投げかけることが大事だと考えた」と、開発を指揮する河野氏は語る。同社では「β版」をリリースしたのち、約6ヶ月間に渡り「TVRoll.jp」、ならびに「ARecX6」のユーザーニーズを調査し、ポテンシャルを測っていく考えだ。
■ソーシャルメディアのパワーを活かした新しいテレビ体験
近頃は“テレビが面白くない”という言説を良く見聞きすることがある。しかし、本当にすべてのテレビ番組が面白くないのかと言えば、筆者は決してそうではないと思う。ただ、何となくテレビを付けているだけでは、なかなか面白い番組に巡り合えなくなったと実感することが多い、というところだろうか。
一方で、ネットのソーシャルサービスのサイトにアップされている投稿やコメントの中には、日々テレビで放送されたコンテンツについて盛り上がっているものも多く、テレビ関連の話題が人気を集めている。このようなコメントを見てみると、テレビ番組そのものが面白くないのではなく、毎日24時間、放送され続けているテレビ番組の中から、面白いものを見つけられる便利なツールがあればもっとテレビが楽しくなるのではないか?と感じる。この点に「TVRoll.jp」も注目し、Twitterなどで公開された「テレビ番組に関連したツィート」をサイト内に取り込み、利用者自身もテレビ番組に関するコメントをサイトから投稿できる機能を実現したのだ。
「はじめは多チャンネル録画されたコンテンツの中から、キーワード検索やシーン検索を便利にする技術を磨いて行こうという考え方もあったのですが、例えばキーワードで探す場合、大抵はユーザーが見たい・知りたいキーワードが先にあって検索をかけるので、意外な番組との出会いや、面白い番組を発見するきっかけは制限されてしまいます。そこで、Twitterのコメントとの連携機能を検討した時に、テレビ番組に関連したツィートのコメントをフックにすることで、サービスの利用者に新たな発見を提供できるのではと考えました。」(河野氏)
“テレビとインターネットの融合”をイメージしたとき、まずはオンデマンドの映像配信に目が向きがちだが、「TVRoll.jp」の目指したものは、「テレビからWeb」の流れではなく、「Webからテレビ」へつないだときに生まれる、新しいテレビの楽しみ方だったのだ。
続くページでは、実際に「TVRoll.jp」のサービスを「ARecX6」で使ってみたハンドリングレポートとともに紹介していきたい。