公開日 2012/06/19 10:38
【レビュー】6万円台でDSDディスク再生も可能なSACDプレーヤー・パイオニア「PD-30」の実力を検証
ピュアオーディオもネットオーディオも楽しめる
63,000円(税込)という価格ながら、SACDやCD、USBメモリに加え、DVD-R/-RWに焼いたDSD音源(拡張子は.dsf)など多彩なコンテンツの再生に対応するSACDプレーヤー「PD-30」(7月中旬発売)。ネットオーディオを実践しつつピュアオーディオも始めたい、というニーズに応える本機の実力を、岩井 喬が検証した。
SACDプレーヤーながら
ネットオーディオを補完してくれる「PD-30」
ネットワークプレーヤー「N-50」「N-30」やリーズナブルなプリメインアンプ「A-30」「A-10」と揃った意匠を採用し、「PD-10」とともに久々の単品SACDプレーヤーとして登場したこの「PD-30」は上級機らしく、アルミ製フロントパネルやIECコネクター採用極太電源ケーブルを搭載。DSDディスク再生のほか、iPod/iPhone/iPadのデジタル接続やメモリーからのMP3、AAC、WMAファイル再生に対応するフロントUSB端子をはじめ、圧縮ファイルを補間する『アドバンスド・サウンドレトリバー』やアナログ出力の向上を図る『ピュアオーディオモード』も装備し、「PD-10」と比較してより一層機能性が充実している。
DACには先行する「N-50」と同じ192kHz/32bit対応AKM製チップAK4480を搭載。アナログ部とデジタル部、そしてCDサーボ部、USB系の電源を分離させ、音声信号を最短経路で伝送する『ダイレクトコンストラクション』やオーディオ回路用に専用巻き線を独立させた電源トランスも「PD-10」同様に採用。リモコンは上級機と同じデザインの高品位なものとしている。
「N-30」「N-50」はDSD音源再生に対応していなかったが、そのシステムへDSDディスクを再生できる本機を加えることにより、USB伝送によるDoP方式では難しいSACDと同等の操作感でダウンロード音源が楽しめるという利便性の高さを現実のものとしてくれるのだ。そうした意味で、「PD-30」や「PD-10」はSACDプレーヤーでありながらネットオーディオを補完してくれる役割を担っているとも言えるだろう。なお試聴には「PD-10」と同様、アンプに「アキュフェーズE-560」、スピーカーに「エラックFS247BE」を用いた。
10万円以下のモデルであるとは思えないほど
充実した空間表現力と完成度を持つ
「PD-10」と比べ、全体的に解像度、S/Nが向上し、音の純度や音場の奥行き、透明感も格段に改善している。特に甘めだった低域の制動感も大きく変化し、引き締め良く質感を描くようになった。
SACDの諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』では、オーケストラの分解能が増し、ローエンドにかけて解像度の高いハーモニーが楽しめる。ヴァイオリンのタッチはボディの厚みが程良く感じられ、弦のハリは瑞々しく、キレある輪郭の浮き立ちもリアルだ。
『Pure 〜AQUAPLUS Legend of Acoustics〜』(運命、POWDER SNOW)でも低域のナチュラルな厚みと制動感のバランスの良さを実感。付帯感のないストリングスのハーモニーは押し出し良く、涼やかなピアノのタッチと重みのある低域の伸び、ギターの艶良く滑らかな爪弾き感は鮮やかな空間を描き出す。ボーカルはウェットでくっきりとした口元の描写に加え、にじみのないドライな余韻感まできちんと再現している。
CDのオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー)ではピアノの厚みも心地よく、低域の密度や階調の細かい高域のタッチまでしっかりと感じ取れる。ウッドベースは胴鳴りを引き締め、弦のディティールをリアルに浮き立たせている。
ロックのデイブ・メニケッティ『MENIKETTI』(メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ)では力強く太いリズム隊のタイトさと倍音の伸びがリッチなエレキの厚い刻みがどっしりと重心の低いサウンドに繋がる。
DSDディスク再生では、自分で録音し作成したDSDディスク(『音展』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り)を聴いてみた。リアルな音像感、空間の存在感をしっかり再現し、ギターのボディ感やボーカルの肉付き、声の移動感、口元の鮮やかな描写と音離れの良さもこのクラスのモデルとしては申し分ないサウンドにまとめてくれている。DSD特有の素直な空間の広さ表現に加え、ナチュラルで付帯感のない質感を描き出す。
また、『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』DSDマスター音源(届かない恋、夢であるように)では、ホーンセクションのアタックの速さや余韻の広がり、アンビエントの浮き立ちが非常にリアル。ボーカルの定位もソリッドに決まり、輪郭は鮮度良く滑らかに描かれる。このDSDディスクの音を聴く限り、10万円以下のモデルであるとは思えないほど充実した空間表現力と完成度を持つハイCPモデルであるといえよう。
【PD-30 製品データ】
¥63,000(税込)、7月中旬発売
【SPEC】●再生可能ディスク:音楽CD/SACD/CD-R,-RW/DVD-R,RW ●フロントUSB:USBメモリ(MP3/AAC/WMA) ●周波数特性:2Hz〜20kHz ●SN比:117dB ●出力端子:アナログRCA(金メッキ)、光デジタル、同軸デジタル(RCA 金メッキ)、SR IN/OUT ●消費電力:38W ●外形寸法:435W×128H×329Dmm ●質量:5.6kg
【執筆者紹介】
岩井 喬 IWAI,Takashi
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
SACDプレーヤーながら
ネットオーディオを補完してくれる「PD-30」
ネットワークプレーヤー「N-50」「N-30」やリーズナブルなプリメインアンプ「A-30」「A-10」と揃った意匠を採用し、「PD-10」とともに久々の単品SACDプレーヤーとして登場したこの「PD-30」は上級機らしく、アルミ製フロントパネルやIECコネクター採用極太電源ケーブルを搭載。DSDディスク再生のほか、iPod/iPhone/iPadのデジタル接続やメモリーからのMP3、AAC、WMAファイル再生に対応するフロントUSB端子をはじめ、圧縮ファイルを補間する『アドバンスド・サウンドレトリバー』やアナログ出力の向上を図る『ピュアオーディオモード』も装備し、「PD-10」と比較してより一層機能性が充実している。
DACには先行する「N-50」と同じ192kHz/32bit対応AKM製チップAK4480を搭載。アナログ部とデジタル部、そしてCDサーボ部、USB系の電源を分離させ、音声信号を最短経路で伝送する『ダイレクトコンストラクション』やオーディオ回路用に専用巻き線を独立させた電源トランスも「PD-10」同様に採用。リモコンは上級機と同じデザインの高品位なものとしている。
「N-30」「N-50」はDSD音源再生に対応していなかったが、そのシステムへDSDディスクを再生できる本機を加えることにより、USB伝送によるDoP方式では難しいSACDと同等の操作感でダウンロード音源が楽しめるという利便性の高さを現実のものとしてくれるのだ。そうした意味で、「PD-30」や「PD-10」はSACDプレーヤーでありながらネットオーディオを補完してくれる役割を担っているとも言えるだろう。なお試聴には「PD-10」と同様、アンプに「アキュフェーズE-560」、スピーカーに「エラックFS247BE」を用いた。
10万円以下のモデルであるとは思えないほど
充実した空間表現力と完成度を持つ
「PD-10」と比べ、全体的に解像度、S/Nが向上し、音の純度や音場の奥行き、透明感も格段に改善している。特に甘めだった低域の制動感も大きく変化し、引き締め良く質感を描くようになった。
SACDの諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』では、オーケストラの分解能が増し、ローエンドにかけて解像度の高いハーモニーが楽しめる。ヴァイオリンのタッチはボディの厚みが程良く感じられ、弦のハリは瑞々しく、キレある輪郭の浮き立ちもリアルだ。
『Pure 〜AQUAPLUS Legend of Acoustics〜』(運命、POWDER SNOW)でも低域のナチュラルな厚みと制動感のバランスの良さを実感。付帯感のないストリングスのハーモニーは押し出し良く、涼やかなピアノのタッチと重みのある低域の伸び、ギターの艶良く滑らかな爪弾き感は鮮やかな空間を描き出す。ボーカルはウェットでくっきりとした口元の描写に加え、にじみのないドライな余韻感まできちんと再現している。
CDのオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー)ではピアノの厚みも心地よく、低域の密度や階調の細かい高域のタッチまでしっかりと感じ取れる。ウッドベースは胴鳴りを引き締め、弦のディティールをリアルに浮き立たせている。
ロックのデイブ・メニケッティ『MENIKETTI』(メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ)では力強く太いリズム隊のタイトさと倍音の伸びがリッチなエレキの厚い刻みがどっしりと重心の低いサウンドに繋がる。
DSDディスク再生では、自分で録音し作成したDSDディスク(『音展』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り)を聴いてみた。リアルな音像感、空間の存在感をしっかり再現し、ギターのボディ感やボーカルの肉付き、声の移動感、口元の鮮やかな描写と音離れの良さもこのクラスのモデルとしては申し分ないサウンドにまとめてくれている。DSD特有の素直な空間の広さ表現に加え、ナチュラルで付帯感のない質感を描き出す。
また、『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』DSDマスター音源(届かない恋、夢であるように)では、ホーンセクションのアタックの速さや余韻の広がり、アンビエントの浮き立ちが非常にリアル。ボーカルの定位もソリッドに決まり、輪郭は鮮度良く滑らかに描かれる。このDSDディスクの音を聴く限り、10万円以下のモデルであるとは思えないほど充実した空間表現力と完成度を持つハイCPモデルであるといえよう。
【PD-30 製品データ】
¥63,000(税込)、7月中旬発売
【SPEC】●再生可能ディスク:音楽CD/SACD/CD-R,-RW/DVD-R,RW ●フロントUSB:USBメモリ(MP3/AAC/WMA) ●周波数特性:2Hz〜20kHz ●SN比:117dB ●出力端子:アナログRCA(金メッキ)、光デジタル、同軸デジタル(RCA 金メッキ)、SR IN/OUT ●消費電力:38W ●外形寸法:435W×128H×329Dmm ●質量:5.6kg
【執筆者紹介】
岩井 喬 IWAI,Takashi
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。