公開日 2012/12/10 11:55
ULTRASONEのハイエンドヘッドホン「edition 8 Romeo & Julia」で名盤を聴く
【特別企画】男性盤/女性盤レコメン作品も紹介
ヘッドホンファン垂涎のブランド、ULTRASONEのフラグシップ「edition 8」のラインナップに、最新モデルの「Romeo」と「Julia」が加わった。ハイクラスなヘッドホンを求める男性・女性の音楽ファンのために開発された各モデルの魅力を評論家の山之内正氏が探っていく。
なお、今回は「Romeo」と「Julia」で聴いてみたい推薦盤として、音質的・音楽的に、そして演奏するアーティスト的にも魅力あふれるタイトルを山之内氏がセレクトしてくれた。そして「Romeo」に注目する男性の音楽ファン、「Julia」に注目する女性の音楽ファンへ、それぞれの作品で新しい「edition 8」の高品位なサウンドを味わうための“聴き方”をナビゲートしていく。
もとより「Romeo」も「Julia」も、それぞれ性別を限定するヘッドホンではもちろんない。今回のレビューが、新しい「edition 8」シリーズの実力に注目する、すべてのヘッドホン・ファンにとって役に立てるものとなれば幸いだ。
ハイエンドヘッドホンの草分け「edition 8」に2つの新バージョン誕生
持ち運びできるハイエンドヘッドフォンの代表格、ULTRASONEの「edition 8」に魅力的なバリエーションが登場した。その名も「Romeo」と「Julia」。ロミオとジュリエットのドイツ語名が示す通り、男性向けと女性向けに2種類の仕上げを作り分けたこだわりのバージョンで、どちらもedition 8をベースにしながらブラックとフクシアレッドという対照的な外観を身にまとう。
Juliaはエチオピアンシープスキンのヘッドバンド/イヤーパッドにルテニウムコーティングのハウジングを組み合わせ、インレイには天然シェルを埋め込んでエレガントな雰囲気を演出する。一方のRomeoはブラックエチオピアンシープスキンのヘッドバンド/イヤーパッドに、ブラックパラディウムコーティングのハウジングを組み合わせ、精悍な美しさをアピールする。
今回は筆者宅のリファレンスから、LINNのネットワークオーディオプレーヤー「KLIMAX DS」に保存したハイレゾ音源を、Lehmann Audioのヘッドホンアンプ「Linear SE」に入力し、新しい「edition 8」シリーズのRomeoとJuliaの音を聴いた。
【edition 8 Romeo/フォトコレクション】
【edition 8 Julia/フォトコレクション】
女性のための「Juliaで聴きたい3つの推薦盤」
最初に聴いたブレハッチのドビュッシー『版画』は、音色のパレットの豊かさが聴きどころだ。繊細な弱音と力強いフォルテを自在に弾き分けるブレハッチの表情豊かな演奏は、ショパンコンクールに優勝した当時からさらに大きな飛躍を遂げ、すでに大家の域に達している。ピアノを愛するすべての女性にお薦めしたいアルバムであり、Juliaではその真価を余さず聴き取ることができる。
同じドビュッシーの作品でも、弦楽四重奏曲からはまったく別の世界を引き出して見せた。アルカント・カルテットがラヴェル、ディティユーの作品とともに収録した名アルバムから、美しさをきわめた音色を見事に再現。まるで一人の演奏家が4つの楽器を同時に弾いているような統一感のある響きに息を呑む。ケラスの雄弁なチェロの音を聴いていると、彼の音を好む女性ファンが多いことも頷ける。
女性ファンが多いという点では、最近デビューしたばかりのギタリスト、ミロシュも無視できない存在だ。デビューアルバムはクラシックギターの多彩な魅力を凝縮した選曲が秀逸。Juliaの忠実度の高い再生音の威力もあり、思いがけずダイナミックなサウンドを堪能することができた。大きめの音量で聴いても疲労感と縁がないのは、ULTRASONEの独自技術である「S-Logic Plus」の効用である。
男性のための「Romeoで聴きたい3つの推薦盤」
Romeoで最初に聴いたのは、ドナルド・フェイゲンが6年ぶりにリリースした新作『Sunken Condos』のハイレゾ音源だ。20年前に『ガウチョ』や『ナイトフライ』のサウンドに心酔したかつてのロック・ファンはもちろんのこと、このアルバムで初めて接する新しいリスナーまで、タイトで完成度の高いサウンドの虜になることを請け合う。Romeoで聴くとセパレーションの高さとリズムの切れの良さが際立ち、深く沈み込みながらも軽さを失わないベースの心地よさに魅了される。
エレーヌ・グリモーがソロを弾くモーツァルトのピアノ協奏曲は、一つひとつの音に生命力をたたえたピアノの音色に心を奪われると同時に、ステージの広がりをリアルに伝える臨場感豊かなアコースティックにが聴き手を包み込む。レスポンスの良い大口径ドライバーや入念に共振を抑えたハウジングは、既発売の「edition 8」シリーズのモデルからそのまま受け継いでいるので、密閉型とは思えない開放的な響きはもちろん健在だ。
男性ならジャズファンでなくとも気になる存在のシャンティ。彼女のボーカルの澄んだ質感はRomeoの純度の高いサウンドと見事に調和した。どの音域にも誇張がなく、耳元で囁くような弱音から力強い高音まで、ニュアンスの豊かさに驚かされる。アコースティックギターの透明感の高いサウンドも聴きどころだ。
最後にRomeoをiPhone 5と組み合わせてチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いた。アリス・紗良・オットの躍動感のある演奏がオーケストラの分厚い響きと拮抗し、一歩も譲らない。モバイル環境でこれだけ完成度の高いサウンドを聴けるようになることを誰が予想できただろうか。今いる場所が一瞬で極上の空間に生まれ変わる感覚をぜひ味わっていただきたい。
新しい「Romeo」と「Julia」は、オリジナルの「edition 8」の仕様にはなかった着脱式ケーブルを導入している。このため、ケーブル交換による音の変化を楽しめるようになったことも注目に値する。付属ケーブルはマイク付きなのでiPhoneとの組み合わせにもお薦めだ。
そのサウンドのみならず、エクステリア、使い勝手ともに洗練を極めた「edition 8 Romeo & Julia」の魅力をぜひ多くの方々に堪能して欲しい。
【edition 8 Romeo/Julia SPEC】
●形式:密閉ダイナミック型 ●ドライバー:40mmトリプルバスチューブ・チタンプレイテッド・マイラードライバー ●再生周波数帯域:6Hz〜42kHz ●インピーダンス:30Ω ●出力音圧レベル:96dB ●質量:260g(コード含まず)
◆山之内正
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
なお、今回は「Romeo」と「Julia」で聴いてみたい推薦盤として、音質的・音楽的に、そして演奏するアーティスト的にも魅力あふれるタイトルを山之内氏がセレクトしてくれた。そして「Romeo」に注目する男性の音楽ファン、「Julia」に注目する女性の音楽ファンへ、それぞれの作品で新しい「edition 8」の高品位なサウンドを味わうための“聴き方”をナビゲートしていく。
もとより「Romeo」も「Julia」も、それぞれ性別を限定するヘッドホンではもちろんない。今回のレビューが、新しい「edition 8」シリーズの実力に注目する、すべてのヘッドホン・ファンにとって役に立てるものとなれば幸いだ。
ハイエンドヘッドホンの草分け「edition 8」に2つの新バージョン誕生
持ち運びできるハイエンドヘッドフォンの代表格、ULTRASONEの「edition 8」に魅力的なバリエーションが登場した。その名も「Romeo」と「Julia」。ロミオとジュリエットのドイツ語名が示す通り、男性向けと女性向けに2種類の仕上げを作り分けたこだわりのバージョンで、どちらもedition 8をベースにしながらブラックとフクシアレッドという対照的な外観を身にまとう。
Juliaはエチオピアンシープスキンのヘッドバンド/イヤーパッドにルテニウムコーティングのハウジングを組み合わせ、インレイには天然シェルを埋め込んでエレガントな雰囲気を演出する。一方のRomeoはブラックエチオピアンシープスキンのヘッドバンド/イヤーパッドに、ブラックパラディウムコーティングのハウジングを組み合わせ、精悍な美しさをアピールする。
今回は筆者宅のリファレンスから、LINNのネットワークオーディオプレーヤー「KLIMAX DS」に保存したハイレゾ音源を、Lehmann Audioのヘッドホンアンプ「Linear SE」に入力し、新しい「edition 8」シリーズのRomeoとJuliaの音を聴いた。
【edition 8 Romeo/フォトコレクション】
【edition 8 Julia/フォトコレクション】
女性のための「Juliaで聴きたい3つの推薦盤」
最初に聴いたブレハッチのドビュッシー『版画』は、音色のパレットの豊かさが聴きどころだ。繊細な弱音と力強いフォルテを自在に弾き分けるブレハッチの表情豊かな演奏は、ショパンコンクールに優勝した当時からさらに大きな飛躍を遂げ、すでに大家の域に達している。ピアノを愛するすべての女性にお薦めしたいアルバムであり、Juliaではその真価を余さず聴き取ることができる。
同じドビュッシーの作品でも、弦楽四重奏曲からはまったく別の世界を引き出して見せた。アルカント・カルテットがラヴェル、ディティユーの作品とともに収録した名アルバムから、美しさをきわめた音色を見事に再現。まるで一人の演奏家が4つの楽器を同時に弾いているような統一感のある響きに息を呑む。ケラスの雄弁なチェロの音を聴いていると、彼の音を好む女性ファンが多いことも頷ける。
女性ファンが多いという点では、最近デビューしたばかりのギタリスト、ミロシュも無視できない存在だ。デビューアルバムはクラシックギターの多彩な魅力を凝縮した選曲が秀逸。Juliaの忠実度の高い再生音の威力もあり、思いがけずダイナミックなサウンドを堪能することができた。大きめの音量で聴いても疲労感と縁がないのは、ULTRASONEの独自技術である「S-Logic Plus」の効用である。
男性のための「Romeoで聴きたい3つの推薦盤」
Romeoで最初に聴いたのは、ドナルド・フェイゲンが6年ぶりにリリースした新作『Sunken Condos』のハイレゾ音源だ。20年前に『ガウチョ』や『ナイトフライ』のサウンドに心酔したかつてのロック・ファンはもちろんのこと、このアルバムで初めて接する新しいリスナーまで、タイトで完成度の高いサウンドの虜になることを請け合う。Romeoで聴くとセパレーションの高さとリズムの切れの良さが際立ち、深く沈み込みながらも軽さを失わないベースの心地よさに魅了される。
エレーヌ・グリモーがソロを弾くモーツァルトのピアノ協奏曲は、一つひとつの音に生命力をたたえたピアノの音色に心を奪われると同時に、ステージの広がりをリアルに伝える臨場感豊かなアコースティックにが聴き手を包み込む。レスポンスの良い大口径ドライバーや入念に共振を抑えたハウジングは、既発売の「edition 8」シリーズのモデルからそのまま受け継いでいるので、密閉型とは思えない開放的な響きはもちろん健在だ。
男性ならジャズファンでなくとも気になる存在のシャンティ。彼女のボーカルの澄んだ質感はRomeoの純度の高いサウンドと見事に調和した。どの音域にも誇張がなく、耳元で囁くような弱音から力強い高音まで、ニュアンスの豊かさに驚かされる。アコースティックギターの透明感の高いサウンドも聴きどころだ。
最後にRomeoをiPhone 5と組み合わせてチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いた。アリス・紗良・オットの躍動感のある演奏がオーケストラの分厚い響きと拮抗し、一歩も譲らない。モバイル環境でこれだけ完成度の高いサウンドを聴けるようになることを誰が予想できただろうか。今いる場所が一瞬で極上の空間に生まれ変わる感覚をぜひ味わっていただきたい。
新しい「Romeo」と「Julia」は、オリジナルの「edition 8」の仕様にはなかった着脱式ケーブルを導入している。このため、ケーブル交換による音の変化を楽しめるようになったことも注目に値する。付属ケーブルはマイク付きなのでiPhoneとの組み合わせにもお薦めだ。
そのサウンドのみならず、エクステリア、使い勝手ともに洗練を極めた「edition 8 Romeo & Julia」の魅力をぜひ多くの方々に堪能して欲しい。
【edition 8 Romeo/Julia SPEC】
●形式:密閉ダイナミック型 ●ドライバー:40mmトリプルバスチューブ・チタンプレイテッド・マイラードライバー ●再生周波数帯域:6Hz〜42kHz ●インピーダンス:30Ω ●出力音圧レベル:96dB ●質量:260g(コード含まず)
◆山之内正
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。