公開日 2013/11/28 09:51
【レビュー】SHURE密閉型ヘッドホン最上位機「SRH1540」を山之内正が聴く
一歩踏み込んだ力感と、柔軟な表現力を確保
■SHURE密閉型ヘッドホン最上位モデルを、山之内正がレビュー
SHUREの密閉型ヘッドホンのトップモデルとして「SRH1540」がまもなく登場する(関連ニュース)。吟味し尽くした素材を振動板やイヤーパッドに採用し、音質と使用感を高めたことが最大の注目ポイントで、従来機にはない新しさがある。
ダイヤフラムに新たに導入したAPTIVフィルムは、薄さと強度を両立させると同時に、温度や湿度など環境変化の影響を受けにくい性質を持つ。ネオジウムマグネットを積む磁気回路や40mmのダイヤフラム径は開放型のフラグシップ機「SRH1840」と共通だが、リニアリティの改善や歪みの低減など、基本性能の向上は著しいという。
イヤーパッドの素材も新たに見直し、今回はプレミアムカーのシートや内装材などに導入が進んでいるアルカンターラを採用した。肌触りのなめらかさと耐久性を兼ね備えており、遮音性も優れているとされる。パッド表面の孔は音響特性を改善するとともに通気性を高める効果もある。ハウジングのカーボンファイバーとともに、デザイン面で本機を特徴付ける注目のフィーチャーだ。密閉型ながらSRH1840に迫る軽量ボディに仕上げていることもあり、装着感は軽く、ストレスを感じにくい。
■Astell&Kern「AK120」と組み合わせ、SRH1540でハイレゾ音源を聴く
Astell&KernのAK120を用意し、ハイレゾ音源を中心に本機の再生音を確認した。エネルギー分布に偏りのないナチュラルな音調はSRH1840とも共通し、密閉型の最上位機種にふさわしいニュートラルなバランスにまずは感心する。
その自然なバランスを受け継ぎながら、本機は低音の音圧感と中高音の歯切れの良さを獲得しており、音量を抑えても密度や実在感を失わない良さがある。
上原ひろみの『MOVE』は稠密さとテンションの高さが聴きどころだ。どんなテンポでもベースとドラムが刻むリズムが緩まないのは、アタックのエネルギーを忠実に引き出すレスポンスの良さが貢献しているのだろう。分厚い低音が押し寄せてもピアノのリズムと音色が沈まず、音像がしっかり前に出てくる。
オーケストラは独奏楽器の音像に揺らぎがなく、鮮明なイメージが浮かぶ。細部まで積極的に音を拾い出す分解能をそなえる一方で、けっして神経質な描写にはならず、適度にウォームな質感と温度感をたたえている。
一歩踏み込んだ力感を獲得しつつ、SRH1840に通じる柔軟な表現力もしっかり受け継いだ印象を受ける。その対応力の広さが、本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。
◆山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。近著に『ネットオーディオ入門』(講談社ブルーバックス/2013年)がある。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、現在もアマチュアオーケストラに所属し、定期演奏会も開催する。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
SHUREの密閉型ヘッドホンのトップモデルとして「SRH1540」がまもなく登場する(関連ニュース)。吟味し尽くした素材を振動板やイヤーパッドに採用し、音質と使用感を高めたことが最大の注目ポイントで、従来機にはない新しさがある。
ダイヤフラムに新たに導入したAPTIVフィルムは、薄さと強度を両立させると同時に、温度や湿度など環境変化の影響を受けにくい性質を持つ。ネオジウムマグネットを積む磁気回路や40mmのダイヤフラム径は開放型のフラグシップ機「SRH1840」と共通だが、リニアリティの改善や歪みの低減など、基本性能の向上は著しいという。
イヤーパッドの素材も新たに見直し、今回はプレミアムカーのシートや内装材などに導入が進んでいるアルカンターラを採用した。肌触りのなめらかさと耐久性を兼ね備えており、遮音性も優れているとされる。パッド表面の孔は音響特性を改善するとともに通気性を高める効果もある。ハウジングのカーボンファイバーとともに、デザイン面で本機を特徴付ける注目のフィーチャーだ。密閉型ながらSRH1840に迫る軽量ボディに仕上げていることもあり、装着感は軽く、ストレスを感じにくい。
■Astell&Kern「AK120」と組み合わせ、SRH1540でハイレゾ音源を聴く
Astell&KernのAK120を用意し、ハイレゾ音源を中心に本機の再生音を確認した。エネルギー分布に偏りのないナチュラルな音調はSRH1840とも共通し、密閉型の最上位機種にふさわしいニュートラルなバランスにまずは感心する。
その自然なバランスを受け継ぎながら、本機は低音の音圧感と中高音の歯切れの良さを獲得しており、音量を抑えても密度や実在感を失わない良さがある。
上原ひろみの『MOVE』は稠密さとテンションの高さが聴きどころだ。どんなテンポでもベースとドラムが刻むリズムが緩まないのは、アタックのエネルギーを忠実に引き出すレスポンスの良さが貢献しているのだろう。分厚い低音が押し寄せてもピアノのリズムと音色が沈まず、音像がしっかり前に出てくる。
オーケストラは独奏楽器の音像に揺らぎがなく、鮮明なイメージが浮かぶ。細部まで積極的に音を拾い出す分解能をそなえる一方で、けっして神経質な描写にはならず、適度にウォームな質感と温度感をたたえている。
一歩踏み込んだ力感を獲得しつつ、SRH1840に通じる柔軟な表現力もしっかり受け継いだ印象を受ける。その対応力の広さが、本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。
◆山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。近著に『ネットオーディオ入門』(講談社ブルーバックス/2013年)がある。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、現在もアマチュアオーケストラに所属し、定期演奏会も開催する。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。