公開日 2017/07/03 16:59
【製品批評】SPEC「RSA-G1」&「RPA-P5/RPA-W5ST」― 音楽性溢れるプリメイン、エネルギーに満ちたセパレート
いつまでも安心して愛用できる高品位アンプ群
プリメインアンプ
SPEC
RSA-G1
¥380,000(税抜)
プリアンプ + パワーアンプ
RPA-P5 + RPA-W5ST
RPA-P5:¥450,000(税抜)/RPA-W5ST:¥350,000(税抜)
RSA-G1とRPA-W5STは先に発売された小型のプリメインアンプ、RSA-888から派生したモデルである。従来のSPEC社のプリメインアンプは、増幅回路こそスイッチングのPWM方式であるものの、電源回路はトランスを使用する伝統的な構成になっていた。ところがRSA-888は電源部もスイッチング化されたのである。
当初私はコストダウンのためにスイッチングにしたのだろう、と思っていた。ところが同社の技術部長である坂野勉氏にお話を伺うと、スイッチング技術のメリットである、瞬時に電力をスピーカーに供給する「ドライブ能力」の優秀さを高めるためなのだそうだ。
RPA-W5STは、RSA-888のパワーアンプ部をグレードアップしたうえで単体化したものだ。ニチコンの「響一」という電解コンデンサーが使用されているほか、BTL接続やバイアンプ用にするための切り替えスイッチがある。当初はゲインコントローラーで音量調整をしていたが、このたびプリアンプのRPA-P5が加わってシステムが組みやすくなった。
RSA-G1は、RPA-W5STをフルサイズのプリメインアンプ化させたもので、サイドパネルとボトムパネルに、それぞれカエデとスプルースというウッドを使用している。SPEC独特の楽器的なアンプチューニングである。
まずはRSA-G1から聴いた。温かい音である。倍音のよく乗った音ともいえる。一聴、真空管アンプのように思えなくもないが、出力トランスを通った信号にありがちな音像の輪郭線がなく、音像と音場がシームレスにつながっている。しかし音の切れ味は鋭く、いわゆるスピード感は上々。音の消えぎわが非常に美しく、楽曲の結末を耳で追いかけるのが快感だ。
低音はよく出る方だが、膨満することは決してない。また、演奏に応じてさまざまな表現を聴かせてくれる。この種のモダンなモデルとしては楽曲・演奏に積極的に介入しているように感じられる。おそらくは、このあたりがウッドによるチューニングの効能なのだろう。ただし余計なお節介感はなく、痒いところに手の届くような鳴り方をしてくれる。
次いでRPA-P5とRPA-W5ST×2(モノラルとして使用)を聴いた。RSA-G1とは世界観が全く異なる音である。BTL接続の音は格別で、音の生命力が非常に強い。スピーカーから発せられた音に推進力があって、リスニングポジションにエネルギーとして飛んでくる。オーディオ的にはあらゆる項目で申し分ない。音楽的にはRSA-G1とは真逆で、楽曲・演奏に対して素っ気ないほど不介入だ。
(石原俊)
Specifications
【RSA-G1】●最大出力:100W×2(4Ω)●周波数特性:10Hz〜30kHz±1dB(6Ω、1W)●高調波歪率:0.02%(1kHz、80%出力時)●入力感度・利得:300mVrms、37.3dB(Volume MAX時、6Ω、1kHz)●消費電力:無信号時9W、最大出力時150W(8Ω、100Hz)●入力端子:XLR×2、RCA×3●スピーカー端子:1系統●サイズ:480W×110H×37.5Dmm ●質量:9kg
【RPA-P5】●入力端子:XLR×2、RCA×3●出力端子:XLR×1、RCA×3(同時出力)●入力レベル:2.6Vrms●入力アッテネーター:-6dB(入力3RCA、入力5XLR)●リモコン付属●ボリュームコントロール出力:3(同時出力)●消費電力:10W●サイズ:350W×95H×375Dmm ●質量:8kg
【RPA-W5ST】●最大出力:100W×2(4Ω)●周波数特性:10Hz〜30kHz±1dB(6Ω、1W)●高調波歪率:0.02%(1kHz、80%出力時)●入力感度・利得:300mVrms、37.3dB( Volume MAX時、6Ω、1kHz)●消費電力:無信号時9W、最大出力時 150W(8Ω、100Hz)●ライン入力:XLR×1、 RCA×1(リアパネルで切り替え)●スピーカー端子:1系統 ●モード切り替え:ステレオ/モノラル/BTL ●ゲイン切り替え:MAX/-6db/EXVOL●サイズ:350W×95H×375Dmm●質量:6.2kg
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」163号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから